はじめに

ついに民主党が圧倒的な多数をもって衆院を制し、与党になり、念願の政権交代を果たしました。この圧倒的な獲得議席数が意味することは、民主党新政権への期待とも、自民党政治に対する不信任票とも言われていますが、日本もいよいよ2大政党がマニフェストで戦う新時代に入ったということだと思います。この歴史的なイベントの直後に今回のアンケートを行わせて頂きました。

個人投資家の皆さんの受け取り方は、この選挙結果が示す政権交代への熱狂とは裏腹に、意外に冷ややかなもののように思われます。3月以降のリバウンドに少しずつ違う風が吹き込み始めたのかもしれません。こうした微妙な投資家センチメントの変化をこの楽天DIでこれからも皆様にお伝えできたらと思います。これからもよろしくお願い申し上げます。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「短期的には弱気に転換、中期見通しはまだプラス評価ながらもこの半年間では過去最低水準」

  • Q1:8月31日と1ヵ月後の日経平均の見通し DI= △8.59
    (7月27日と1ヵ月後の日経平均の見通し DI= +5.69)
  • Q2:8月31日と3ヵ月後の日経平均の見通し DI= +2.86
    (7月27日と3ヵ月後の日経平均の見通し DI= +12.97)

今回の基準日となった2009年8月31日の日経平均株価の終値は10,492.53円です。8月30日に行われた歴史的な結果を残した選挙の翌日こそ、寄付き直後に10,800円をトライしそうな局面がありましたが、この1カ月間を振り返ってみると、日経平均株価は上下に約400円程度(上値10,600円レベルから下値10,200円レベル)の狭い範囲でしか動いていないことがわかります。また、月の後半は「鯨幕相場」と呼ばれる日替わりで上昇と下落を繰り返す(陽線と陰線が交互に出る)日々が続いていました。

内容的には、国内要因で市場が動いているというよりは、月初から始まった中国・上海株式市場の調整に日本市場も振り回され、また米国市場の動向に一喜一憂するという、国政選挙前なのに外的要因で株価が変化するというおかしな状態が続いたと言えます。そのおかしさのもうひとつが「株と債券とどっちが嘘つき?」と言いたくなるような、株高と債券高(金利低下)の同時進行です。本来、この局面で株価が上がるということならば、景気回復見通しなどを背景にするわけですから、この低位にある長期金利は上昇(債券安)となって普通なのですが、貸出しが伸び悩む銀行を中心に機関投資家が安心して債券を買い債券市場も堅調というおかしな状態となっています。

しかし、やはりそのおかしさの答えは、今回のアンケート結果に如実に表れており、個人投資家の皆さんの目線も、まず短期見通しが△8.59と前月比で14.28ptsも低下し弱気転換しています。3カ月先を考える中期見通しについても、DIの数値自体はまだプラス評価ながらも2.86という今回のレベルは、この半年間では過去最低のものとなります。つまり中期的な見通しは今年2月末の水準をやや上回る程度という水準まで後戻りしたことになります。

詳細は毎週のメルマガの方でご説明しようかと思いますが、前述の「株と債券とどっちが嘘つき?」の答えは“たぶん株式”だろうという結果です。株式市場よりは債券市場の方がマクロ経済など理論的な思考を好む傾向にあり、両市場の動きが論理的でない時は、債券市場に軍配が上がることの方が多いというのが私の経験則でもあります。でもそうした流れのおかしさをすでにこのDIは予測しているのかもしれません。

いずれにしても、今までの流れとは少し変わった感じも今回のアンケート結果に基づくDIからは読み取れ、今後の動向を注意して見守っていきたいと思います。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
8月31日 DI=△23.88 DI=△8.39 DI=-2.02
7月27日 DI=△0.50 DI=5.02 DI=12.38

調査時点の円/ドルは92.76円、円/ユーロは132.48円です。今回のDIの結果は全通貨に対して円高見通しとなりました。全通貨に対して見通しが円高になったことは4月末以来のこととなります。今回のアンケート実施時点においては、為替の水準はすでに月中の推移の中でも円高にありますが、それでもさらに円高を予測しているのは選挙結果から円の先々に安心感を抱いている投資家が多いということなのかもしれません。これはある意味では前述の株式見通しとは矛盾しますが、景気見通しという側面よりは、財政面への見通しに市場が注目していることの表れとも読めます。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 24.92% 23.93% 0.99%
EU諸国 9.63% 7.78% 1.85%
ブラジル 27.07% 25.61% 1.46%
ロシア 9.76% 12.13% △2.37%
インド 49.64% 50.88% △1.24%
中国 52.18% 59.50% ↓ △7.32%
中東・北アフリカ 7.22% 6.86% 0.36%
東南アジア 18.87% 19.16% 1.15%
中南米 6.70% 6.28% 0.43%
東欧 3.45% 2.68% 0.77%

今回、大きく数値が動いたのがやはり中国です。8月4日に上海株式総合指数は3,478.010という高値を付けた後、20%を超える調整を示し、一旦は振り戻すかに見えたものの、再度調整するという荒っぽい動きを見せていますので、その中で投資家が敬遠姿勢を取ることは至極当然な結果だと思います。そうした結果につられるかのように、ロシア、インドといった新興国も人気が離散、BRIC’sでポイントを伸ばしたのは唯一ブラジルだけという結果になりました。地道ではありますが、米国市場の人気もやや回復傾向にあります。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 76.45% 76.74% △0.29%
外国株式 26.74% 26.61% 0.13%
投資信託 22.97% 19.83% ↑ 3.13%
ETF 19.91% 17.91% ↑ 2.00%
FX(外国為替証拠金取引) 18.67% 20.67% △2.00%
国内債券 5.66% 5.02% 0.64%
海外債券 8.72% 7.87% 0.85%
15.88% 19.08% ↓ △3.20%
原油 9.04% 9.62% △0.58%
商品 4.88% 5.19% △0.31%
REIT 9.82% 9.12% 0.70%
CFD 4.49% 4.35% 0.14%

注目する金融商品ということでは、今月はあまり目立った変化はないという印象を受けます。投資信託が+3.13%、ETFが+2.00%、そして金が△3.20%というのが目立ったところですが、絶対値としてはあまり大きな結果とは言えません。

3月初めからおおよそ半年間続いた底値からの反転動向が、やや変化の兆しを見せ始め、そうした流れを敏感に汲みとったからこそ、注目する投資対象に大きな変化が現時点では現れなかったということなのかもしれません。

こうした“空白の時”みたいな状態はそう長く続くものではありませんので、恐らく次回のアンケートの段階では何か新しい流れが見えてくる、もしくはその流れを反映した結果になっているのかもしれず、次回に注目したいと思います。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。

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