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 米国で8月16日、ジョー・バイデン大統領が署名し、Inflation Reduction Act of 2022、『インフレ削減法案』が成立しました。2021年にバイデン大統領が発表したビルド・バック・ベター(BBB)法案は事実上頓挫しましたが、その後BBBの規模を縮小させて、今回の『インフレ削減法案』の合意に至りました。『インフレ削減法案』では、気候変動対策として、再生可能エネルギーやエコカーへの税額控除などが注目されています。

【ポイント1】インフレ圧力の緩和を図る『インフレ削減法案』が成立

 今回成立した『インフレ削減法案』は修正前の原案で、気候変動対策などの財政支出が約4,370億ドル、大企業への法人税の最低税率導入などの歳入増加が約7,370億ドルと見込まれています。

 この法案により、向こう10年で3,000億ドル規模の財政赤字削減が見込まれることで、歴史的な高インフレが続く中でインフレ圧力が緩和すると期待されており、「インフレ抑制法案」とも言われています。

【ポイント2】法案の目玉は気候変動対策!

 今回注目されているのは、財政支出の柱とされるエネルギー安全保障と気候変動対策で、約3,690億ドルが盛り込まれました。例えば、太陽光や風力、蓄電池などのカーボンニュートラルに必要な製品に対する税額控除が導入されます。従来の政策では2030年の温室効果ガスの排出が2005年比で20~30%減にとどまっていましたが、本法案によって40%程度の削減に拡大するとの試算もあります。

 法案により、再生可能エネルギーへの移行を加速させるだけでなく、現状で中国や東南アジアへの依存度が高い製品の生産について、米国回帰を進めていく狙いがあると見られます。

 このほか、中低所得者が電気自動車などのエコカーを購入する際に、中古車で4,000ドル、新車では7,500ドルの税額控除を実施することも盛り込まれています。

【今後の展開】再生可能エネルギーやエコカー関連の普及が期待される

 今月上旬に『インフレ削減法案』が米上下院で可決した後の米国株式市場では、再生可能エネルギー関連や電気自動車関連の銘柄で株価の上昇が見られるなど、これらの今後の普及促進が期待されています。

 ただし、バイデン政権が狙うインフレ抑制の効果については、実際のところは2023~2024年の歳出額と歳入額はほぼ拮抗(きっこう)すると見られており、いまだ高水準のインフレが続く中で、急速なインフレ抑制は難しいと考えられます。