※この記事は2021年9月1日に掲載されたものです。

 日本一有名な優待投資家である桐谷広人さん。トウシル読者にもテレビ番組を見てファンになった、ユニークなお人柄が大好きといった人が多いはずです。

 そこで、ここでは読者から届いた10の質問に答えていただきました! 投資に関係あることもないこともランダムに質問し、桐谷さんはサクサクとほぼ即答してくださいました。桐谷ファン必読です!

*各株式の銘柄の詳細情報やチャートはPCサイトでご確認ください。

 将棋と投資、共通点ってありますか? 棋士だからこそ、投資に成功した考え方とかあるのかな?

  将棋は、相手がどんな手を打ってくるか、先を読むことが何より重要です。投資も株価がどう動くのか、上がるのか下がるのかを予想することが大事なので、そこは共通しています。

 ただし、株価の動きを予測するのは簡単ではありません。将棋より難しいかもしれない(笑)。だから私は、買った後、株価が上がらなくても損をしないような買い方をします。

 具体的にいうと、高配当銘柄や優待銘柄を狙うということです。配当や優待があれば、株価が上がらなくても一定の利益を得られますから。

 もちろん、配当や優待をもらっても株価が大きく下落したら損をします。でも、それも割安なときに買うことで、ある程度は回避できます。割安なときに買えば、その後、株価が下がっても、いずれ買値近辺に戻ることが多いからです。

 というわけで将棋と投資、共通点はありますが、将棋で培った「先を読む力」を投資で生かせているかといったら、それはあまりないかもしれません(笑)。

 TV番組で、株主優待をジムや外食などで使っておられましたが、コロナ自粛で株主優待は、使い切れていますか? 期限の管理はどうしてますか?

 ぜんぜん使い切れていません(笑)。なにしろ1,000銘柄保有していますから。 

 3月権利確定の優待品が届く6月なんかは、毎日、食品や雑貨、カタログギフト、買い物券、お食事券、QUOカードなどが山ほど届きます。私は1人暮らしですから、とても全部は使い切れません。

 もちろん、いろいろ工夫はしています。例えば買い物券や食事券を入れるケースを2つに分けているんです。1つは使用期限が近いもの。もう1つは期限がないもの。こうしておくと、おのずと期限が迫っているものから使うようになります。

使い切れないものは気前よく知人や友人、仲良しの優待仲間にプレゼント。

 ただ、これだと期限のないものはほとんど使わないので、どんどん貯まっていきます。

(無期限ケースから1枚手に取って)ほら、これなんて、20年前にもらったものですから。10年、20年使ってないものもかなりあります(笑)。

 だから最近は、私には期限があるほうが好都合なのかなと思うようになりました。

 普通、優待品は無期限のものが喜ばれますが、期限があれば無理にでも使おうとするし、どの道、使わないと思えるものは人にあげたりしますから。

 ちなみに人にあげるのはしょっちゅうです。親戚や知人や投資仲間にもらってもらいます。「こんな優待が届いたのですが、私は使わないので、もらっていただけませんか」などとLINEで連絡を取って、郵送したりします。

 そういう意味では、私にとって優待品は他人とのコミュニケーションを深めるツールにもなっています。だから、たとえ使い切れなくても優待をやっていてよかったと思います。

 保有株のうち、1番保有額が多いのは何ですか?                                           

 保有株数が多いのは、ADワークスグループかな。1万数千株持っています。ただ、今現在、株価は150円台なので、金額的にはたいしたことがありません。

 金額でいうと船井電機になりますかね。私はリーマンショックで1億円以上失ったのですが、そのとき最も痛い目にあったのが船井電機なんです。ナンピン買いを続けた揚げ句、大金をもっていかれました。

 で、その後も売るに売れず、今も4千数百株保有しています。株価は900円くらいですから、400万円くらいになります(ただし、船井電機は8月末にTOBで、918円で全株手放すことになりました)。

  保有株のうち、一番保有期間が多いのは何ですか? その理由は?        

 バブル期に買い、その後、株価が暴落したけど、いずれ戻るだろうと売らずに保有し続けている銘柄がけっこうあります。

 野村ホールディングス大和証券グループ本社NTTKDD(現KDDI)東京電力ホールディングス日立製作所富士通王子ホールディングスなど。

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 どれが一番保有期間が長いのかはちょっとわからないんですが、いずれにしても30年以上になるでしょう。

 そのなかで日立製作所富士通は株価が戻っているので、たいして損はしてないと思いますが、ほかはひどいもんです(笑)。

 野村ホールディングスは最悪時、20分の1か30分の1になりました。大和証券グループ本社は、株価は買い値の10分の1くらいになった、けど、今は5分の1くらいですね。

 極め付きは東京電力です。東京電力ホールディングスは、1987年に9,420円という高値をつけ、しばらくして7,000円台まで下がったので、そろそろ買いかなと思い、買ってみたんです。ところが、そこからさらに下がり続けましてね。

 そうこうしているうちに東日本大震災に見舞われ、大暴落しました。ナンピン買いもしていたので、大量に保有していたのですが、それが紙切れ同然になり、泣くに泣けない状態です(笑)。

 でも、長く持っていると、たまにはいいこともあるんですよ。

 十何年か前、大和証券グループ本社が株主優待を新設したのですが、昨年今度は王子ホールディングスが優待を新設したんです。さっそくティッシュとかトイレットペーパーとかもらいましたが、長年持ち続けていたことが報われた気がして、ちょっとうれしかったですね。

 桐谷さん、いつも元気をもらっています! テレビで桐谷さんが株主優待を使うため、自転車で走っている姿を拝見しましたが、やはり、それは体力づくりを兼ねているのですか?

 私がなぜ自転車であちこち行くようになったかというと、交通費がもったいなかったからです。

 バブル期に1億円余り稼いだけれど、その後、信用取引に手を出したこともあって、リーマンショックですべて吐き出しましてね。

 それどころか、もともと持っていた資産もどんどん目減りしていきました。その減り方が尋常じゃなかったので、200円、300円の電車賃を使うのも惜しくなったんです。

愛用の自転車で新小岩まで!桐谷さんの御自宅から約18km。電車でも30分以上かかる距離をぐいぐいこげる体力はスゴイ!

 ただ、結果的には健康にもよかったかもしれません。

 一時糖尿病が悪化してひどい目にあったのですが、それも自転車で走り回ったおかげで、ずいぶんよくなりましたし。

 それに昨年だったかな、テレビ番組の企画で、東京の小岩にあるスポーツジムまで自転車をこいでいって、体力テストをやらされたんですよ。

 そこで反復横跳びをやったら、30秒内に58回できました! 

 トレーナーの先生に「これはスゴイ、20歳代の数字です!」と褒められ、(サバを読んで褒めてくれたのかな)と思ったのですが、家に帰ってネットで調べたら、ほんとに20代男性の平均と同じで、これはやっぱり自転車の効果だろうなと思いました。

 桐谷さん、夜ふかしで1番楽しみにしてるのが桐谷さんです。人生で、1番株でもうかったときの年収はいくらですか。

 うーん、どうだろう、やっぱりバブルのときだと思いますよ。1989年末に日経平均株価が4万円に近づいたのですが、その頃は何を買ってももうかるという状態でした。

 年収でいくらかはいちがいにいえませんが、数千万円あったと思います。

 桐谷さんをテレビで見て、私も優待株を探して買い始めました。優待生活を送る桐谷さんが株を売る時はどんな時ですか?

 優待投資家の多くは、優待が改悪されたり、廃止されたら売却すると思うのですが、私はそんな時でも、売るとは限りません。

 例えば、そのとき株価が買値を上回っていたら、プラスで手じまいできるので、売却することが多い。しかし、買値を下回っていたら、損することになるので、すぐには売らず、株価が上昇するのを待ちます。

 これは優待株に限ったことではありませんが、基本的に損切りはしません。なぜなら割安なときにしか買わないからです。安いときに買っているので、そこからさらに下がっても、待っていればいずれ上がる、少なくとも買値に戻るはずだという思いがあるわけです。

 ただし、大きく値が下がったときなど例外はあります。例えば10万円で買ったら7万円まで下がったのでナンピン買いしたとします。

 そしたら7万5,000円に上がった。ここで売ったら10万円で買った分はマイナスになりますが、7,000円でナンピン買いした分は5,000円プラスじゃないですか。

 つまり、トータルでは負けているけれど、一矢報いたというか、ちょっとだけ敵討ちができた気分になれるんです。日々穏やかに過ごすため、こういうことはよくします(笑)。

 大変尊敬しています。難しい株のことも、桐谷さんのお話だとスッと入ってきます。これからのご活躍も楽しみにしています。子育て世帯におすすめの優待株はどんなものがありますか?

 真っ先に思い浮かぶのは学研ベネッセホールディングスなど教育系の銘柄かなあ。

 学研は子供向けの本や教材などから好きなものを選べます。ベネッセホールディングスはオリジナルのカタログギフトで、やはり教材などから選ぶことができます。

廊下は送られてきた優待品が山積み!お宝が眠っていそう。

 あと、バンダイナムコホールディングスもいいかもしれません。

 同社が運営するアミューズメントパークで使えるチケットやこども商品券のなかから選択できます。ただ、ここは株価が7,000円台とかなり高い。

 そういう意味では、同社のグループ企業であるハピネットがオススメです。

 こちらは1,400円程度で、優待カタログのなかから玩具やゲームがもらえます。私もラジコンカーをもらったことがあります(笑)。

 ほかにもこども商品券や図書カードがもらえる銘柄がけっこうあるので、探してみてはどうでしょうか。

*各株式の銘柄の詳細情報やチャートはPCサイトでご確認ください。

 桐谷さん、米国株始めたんですか?!
  

 いやー。あれは雑誌の付録で、初心者向けの米国株購入を体験したのを、編集の方が本にしてくれただけなんです。私は今後も日本株&優待投資メインでいくつもりです。

 でも本自体は面白くできてるので、ぜひ読んでみてください。
 

 株を始めたばかりで、色々な情報(ファンダメンタル・テクニカル・配当・優待など)やツールに目が行き、時間ばかりがすぎ結局よく分からないままなんとなく取引しています。始めたばかりの時はまず何を勉強したらいいですか?

 自慢できることではないですが、私は企業のキャッシュフローがどうかなんてさっぱり分からないですよ。有価証券報告書とか読んだこともありません。

 それでもそこそこ利益を出し続けているのは、高配当銘柄や優待銘柄の分散投資という手法に徹しているからです。

 株を買って値上がり益でもうけようと思ったら、当然、企業分析の知識やスキルが必要です。しかし、私のように配当金や優待で稼ぐなら、特別な知識はいりません。

 配当利回りや優待の利回りでみるとオトクな銘柄を割安な値段で買う、1銘柄に集中させず分散して買う、一時的に株価が下がっても損切りせず保有し続ける。これらを忠実に実行していれば、ある程度は利益を出せると思います。

 だから、何かについて勉強しなさいというつもりはないのですが、1つ挙げるなら割安かどうかを判断する方法は知っておいたほうがいいでしょうね。ただ、これもべつに難しいことではなく、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)の見方がわかれば十分です。

 ちなみに私は、証券会社のサイトなどで昨年来安値や年初来安値を更新している銘柄を調べて、そのなかから選ぶことも多いですね。

勉強よりまずは実践!桐谷さんの投資スタイルは「分散投資」と「損切りしない」、あと大事なのは「優待を楽しむこと!」