NYダウの火曜日高現象が復活の兆し

POMO(パーマネント・オープン・マーケット・オペレーション)による火曜日のNYダウ高がトレーダーの間では事前に話題となっている。

4月22日、FRBはNY連邦準備銀行を通じて10.18億ドルの国債(2039年11月から2043年8月に償還を迎える国債)を購入した。22日の欧州時間までNYダウ先物はマイナスだったが、NY市場のスタートにむけて上昇に転じ、22日のNY市場のオープニングは大幅高で始まった。

POMOではニューヨーク連邦準備銀行が金融機関との間で国債やモーゲージ担保証券(MBS)を売買するが、その際、金融機関が国債やMBSの売却代金を株式のアルゴリズム取引に振り向けるために、毎週火曜日に米国株が上昇するという現象おきやすい。POMOによる火曜日の米株高は2013年前半の相場で大きな話題となった。

2014年のここまでの相場では、NY連銀とJPモルガンやゴールドマンなどの金融機関との間で演出されてきたPOMO(パーマネント・オープン・マーケット・オペレーション)による火曜日の株高が復活の兆しをみせている。

NYダウ(日足) 2014年のPOMOによる火曜日高(赤の矢印は失敗=下落した日)


(出所:石原順)

NYダウ(日足) 2013年前半相場のPOMOによる火曜日高(赤の矢印は失敗=下落した日)


(出所:石原順)

POMOと火曜日のNYダウ 2013年には20週連続で火曜日高となったことがある


(出所:ゼロヘッジコム)

火曜日の米国株高が復活の兆しを受けて、運用難に陥っているファンドの運用者たちの一部でNZドル/円の火曜日買い(始値で買って終値で売るトレード)が流行っているという。NZドル/円の火曜日買いの勝率は9勝7敗とたいしたことはないが、失敗した日の損失額が比較的軽微で、2014年のNZドル/円の火曜日買いはトータルで16回の売買で5円04銭のプラスとなっている。

火曜日買いの噂が広まったのと、NZドルの買われすぎの反動から4月相場ではあまり儲かっていないが、POMO(パーマネント・オープン・マーケット・オペレーション)が続く限り、火曜日買いは今後もある程度は有効かもしれない。

NZドル/円(日足)  火曜日にNZドル/円を買うと・・


(出所:石原順)

NZドル/円の火曜日買い(始値で買って終値で売るトレード)のパフォーマンス

2014年1月7日~2014年4月22日


(出所:石原順)

季節サイクルの変調で海外投資家が懐疑的に

さて、4月末が近づいてきたが、円絡みの主要通貨ペアの2013年10月末買いのポジションは、カナダドル/円と南アランド/円を除けば2014年4月時点で良好なパフォーマンスを維持している。

主要通貨ペア 「10月末買い・4月末売り」 2013年~2014年


(出所:石原順)

問題は日経平均である。日本株は海外勢に言わせると、安倍首相の靖国参拝以来下げ続けており、1月6日終値15908円から4月24日の終値14404円まで9.45%の下落となっている。

4月24日の『ついに米国株に抜かれたアベノミクス相場』(日経新聞「マーケット反射鏡」前田昌孝編集委員)という記事によると、「アベノミクス相場が始まってから1年5カ月。東京株式相場は薄商いが続き、上昇のきっかけがつかめないままとなっている。この間、為替相場の違いを調整すると、日本株よりもドイツ株やフランス株の方がリターンが大きく、22日にはついに米国株にも抜かれてしまった」という。

日経平均(日足) 2014年1月から日本株の下落基調が続いている


(出所:石原順)

日経平均の下落と連動して、NZドル/円と豪ドル/円を除けば円安も進まなくなっており、<アベノミクス相場の失速>を象徴するパフォーマンスとなっている。

主要通貨ペア 2014年1月2日~4月23日までのパフォーマンス


(出所:石原順)

株は1月から4月がもっともよく上がる商品だ。今年もNYダウはそういうカレンダー効果を維持している。本来、カレンダー効果はNYダウよりも日経平均に顕著な動向である。1~4月期の株高のアノマリーに対して、今年の日経平均が1割近く下がったということは、「アベノミクス相場が失速している」という明らかな兆候であり、ブローカーの話では海外勢は日本株に対して関心をなくしているらしい。

日本株の変動とその季節性のイメージ

5月からの半年間が問題・・


(出所:石原順)

日経平均とNYダウの月別推移と「半年間」運用した場合の運用開始月別のリターン(戦後62年間の平均)

『年初から4月末に掛けて5.8%値上がりし、4月末から10月末に掛けては1.9%の上昇にとどまり、10月末から年末に掛けて2.9%値上がりするというのが、2011年までの62年間の平均パターン』


(出所:『日本株転機のシグナル』前田昌孝)

日本株は秋までPKO(Price Keeping Operation)が出てくる?

季節性は日本株を見るうえで重要な指標であり、5月以降の相場は波乱含みとなりそうだ。もっとも、海外勢も日本株に対して「弱気」というわけではなく、「消費税10%が決定されるまで、日本は追加緩和・年金PKO・あるいは法人税減税などを温存しているので、今年の日本株は7~9月期、あるいは秋までなんとか相場がもつのではないか?」という見方をしているところも多い。まだ打つ手が残っていることは確かである。「結局、13000円~16000円」をコアレンジとする相場が続くのではないだろうか。

日経平均株価が14000円を大きく下回り底割れの動きとなれば、黒田日銀総裁の出番となる。安倍政権の第三の矢=「成長戦略」の柱はTPPと法人税減税だ。本日行われている日米首脳会談でTPP交渉に進展がないようだと、日銀の追加緩和が比較的早期に実施されるとみている投機筋は少なくない。

ドル/円(日足)と日銀会合のスケジュール 株底割れ(14000円を大きく下回る)なら早期の追加緩和も?


(出所:石原順)

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。