年初からの勝ち組は昨年の負け組?
「年初からの勝ち組は昨年の負け組である」というバンクオブアメリカ・メリルリンチのレポートが話題となっている。今年のここまでの相場は、昨年の負け組だった<新興国市場・債券・ゴールド>が強く、昨年の勝ち組だった<日本株・ナスダック・ドル>が軟調となっている。
ブラジルボベスパ指数(日足) 割安感から海外資金が流入
ルセフ政権の支持率は昨年12月の43%から3月に36%まで低下し、株式市場はこれを好感している
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)
ゴールド先物(日足)
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)
為替市場でも負け組が復活
10月末買い・4月末売りという「リスクをとるのに最高の半年間投資」でも、豪ドルや南アランドのパフォーマンスがさえなかったが、負け組の復活の動きは為替市場にも波及しており、豪ドルや南アランドは3月半ばから急激に戻す動きが観測されている。
2013年10月末に買った場合のパフォーマンス(2014年4月16日現在)
豪ドル/円(日足)
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)
豪ドル/ドル(日足)
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)
シカゴIMM 豪ドルのポジション(CFTC発表 4月8日現在)
売りポジションは一掃された…
南アランド/円(日足)
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)
ドル/ランド(日足)
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)
昨年の負け組の上昇要因となっているのは、ショートカバー(買戻し)である。買戻しに「割安感からの資金流入」「先進国買い・新興国売りの巻き戻し」が加わって、概ね堅調推移となっている。要は焦点ボケ相場の中で<循環物色>が続いているということだ。
米国はQEの縮小に動いているが、まだ道半ばである。今年は新興国危機がささやかれているが、その時期に関しては早くて6月のブラジル・ワールドカップ、夏から秋以降との見方が多い。ブラジル人運用者の話では、「通貨や株価が下がって割安感が出れば、新興国にも金余り資金が入ってくる」という。
循環物色が続いているうちは、市場のマーケットテーマが定まらない。したがって、トレンドフォロー(順張り)はワークしにくい。やはり、今年の前半の投資スタンスは「急落時の押し目買い」であろう。
日本市場はイベントドリブンファンドの独壇場か?
先週のレポートに『安倍首相が日本株安・円高(=支持率低下)を避けるために、日銀に株価テコ入れ(ETFやリートの買い入れ枠増額)を要請するだろう」という期待感が、ファンド勢にはまだ残っている』と書いたが、早速、4月15日に安倍首相と黒田日銀総裁が会談した。
安倍首相との会談後、黒田日銀総裁は「2%の物価目標に向け道筋を着実にたどっているが、支障をきたす恐れがあればちゅうちょなく政策調整を行うと首相には話した」と記者団に語ったが、首相との会談後は強烈過ぎた4月8日の会見の火消しに動いているようだ。4月8日の黒田会見以降、日本市場は急激な株安と円高に見舞われたが、「黒田会見のせい」と報道されていたからである。イエレンの「6カ月」発言後の火消しと同じパターンである。
甘利経済財政再生相が最近の株式相場の下落について、「日銀の対応に市場が勝手に期待して勝手に落胆している」との見解を示したが、この認識は正しい。海外勢が日本株買い・円売りに動くかどうかは
- (1)日銀の追加緩和があるか否か
- (2)年金PKOがあるか否か
の2点にポイントが絞られているためである。
逆に言えば、海外勢は円高圧力となる財政出動(無駄な公共事業)や成長戦略(第三の矢)には期待していない。
あるファンドの運用者は、「日本経済を良くするためには、本来、所得税減税と支出削減が急務であろう。その両方が行われていない。財政出動に反対はしないが、既得権者の声が大きいためにいつも支出削減は置き去りにされて、従来型のムダな公共事業ばかり増えている。海外勢からは昔の自民党と何が違うのかという声が多い」と発言している。
そのため、日本株や円相場は海外勢の追加緩和期待と、それを受けた日銀金融決定会合の結果だけで動いているだけということになる。
4月16日には麻生財務相の「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の動きが6月以降出てくる。外人が動く可能性がある」という年金PKO的な発言が飛び出し、日経平均やドル/円を売っていた投機筋の買い戻しが出たというのが今週のここまでの動きである。
日経平均(日足) 日銀会合が注目イベントとなっている
ドル/円(日足)と日銀会合のスケジュール 海外勢の堪忍袋の緒が切れる前に緩和はあるか?
「日銀の対応や政府の年金PKOに市場が勝手に期待して勝手に落胆している」だけの相場なのだが、そういった相場を主導しているのは高頻度取引ではなく、「イベントドリブン」(大きなイベントが発生することを予想してポジションを取る)と呼ばれるヘッジファンドである。
「イベントドリブン」の一部ファンドがまたしても日銀買い(追加緩和思惑)を行っているようだ。追加緩和は消費税10%決定の道具であり、財務省としては7~9月期まで温存したいというのが本音であろう。4月30日の日銀金融政策決定会合の結果(内容)によっては、再度売ってくる可能性が指摘されている。
4月後半相場は戻り歩調か…?
先週のレポートに「4月相場は第2週目から月半ばにかけて相場が下落するパターンとなることが多い。ここまでの4月相場をみると、今年もそうなっている。過去のパターンでは月末にかけて切り返すことが多く、筆者も押し目買いを基本に考えているが、今年はどうなるだろうか?」と書いたが、4月前半相場が冴えない理由として米国の確定申告の影響が挙げられている。
NYダウ(日足)と4月相場(黄色) 4月は月半ばが安くなる傾向がある
ドル/円と4月相場(黄色) 4月は月半ばが安くなる傾向がある
4月15日の米国の確定申告最終期限日を通過したので、株売りは一服するとみているが、イースター休暇で市場参加者が少なくなる中、急な変動への注意は怠らないでおきたい。ドル/円は現在、移動平均リボン(102.29-102.71)下限に上値を抑えられて動きが止まっているが、4月後半高のアノマリーから戦略は押し目買いを基本としたい。
ドル/円(日足)
上段:移動平均リボン(赤の帯)
下段:ストキャスティクス5.3.3
日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。
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