米国株と4月高のアノマリー

2012年の7月26日に『過去62年間の投資の王道』というレポートを書いて以来、何度も株やクロス円の「10月末買い・4月末売り」という「半年投資」戦略を取上げてきた。10月末買い・4月末売り」という半年投資は、今年も有効に機能したといえるだろう。

あと1か月で4月末となるが、米国株には「4月高」のアノマリーがある。先週のレポートに書いた『4月のダウ平均の月間上昇率の平均値は1945年9月以降だと1.86%、1990年以降でも2.37%と、ともに12カ月中首位だ』(2014年3月26日 日経新聞電子版「マーケット反射鏡」前田昌孝)という4月相場最強説バイアスは投機筋にも影響を与えており、ファンド勢は4月相場に賭けている。ファンド業界全体でみると、今年は1-3月期のパフォーマンスが冴えなかったため、運用者の「4月に稼ごう」という意欲は強い。

NYダウ(月足)と10月末買い・4月末売り(赤は失敗の年)


(出所:石原順)

筆者の独断と偏見で言えば、株が下がりやすい月というのは「5月」・「9月」・「10月」である。そこが逆張りの買い場となるが、半年程度保有する場合、「5月の買い」は9月・10月の下げ相場に巻き込まれてしまう。

S&P500(日足) 最高値更新相場

株が下がりやすい月は「5月」・「9月」・「10月」か?


(出所:石原順)

日本株(日経平均)に特定して細かく見ると、『4~6月期は底が浅い一方で天井が高くなる傾向がある。この経験則を信じるのならば、4月1日終値よりも株価が低くなった局面は、株式投資を始めるタイミングとして悪くなさそうだ』(日経新聞電子版 マーケット反射鏡「底浅く天井高い4~6月の株式相場」前田昌孝)ということで、本格的に下落しやすい時期はやはり「秋」ということになろう。

相場というのは最後が一番よく上がると言われる。「10月末買い・4月末売り」という半年のリスク選好循環の最終月である4月は手仕舞い(利食い)を視野に入れながらも、リスクをとるに値する月といえよう。

日銀の追加緩和期待を利用して3月末から投機筋が買い出動

ドル/円や日経平均も米国株の4月高を見越してか、3月後半から円安・株高基調に転じている。ドル/円や日経平均が3月後半から上がりだしたのは、一部投機筋の間で「日銀は4月に追加緩和に踏みきる」との観測が根強いからだ。

相場的には効果の薄い「催促の果ての追加緩和」という白川日銀時代の二の舞を避けるため、黒田日銀は市場のコンセンサスである7月以降ではなく、4月8日か30日の日銀金融政策決定会合で先手を打つという観測が市場の底流にある。

「結果として4月に追加緩和が行われなかったとしても、4月30日まではサプライズ緩和期待は残る。その間に円安・株高を仕掛けるというのが我々の戦略だ」と、あるマクロファンドの幹部は語っている。ただし、4月30日までに緩和がなかった場合は、ファンドは手仕舞いに動いてくるだろう。

ドル/円は本日104円を上抜いてきた。ここまでのドル/円上昇の原動力は、アルゼンチン・ショックやウクライナ問題でドル売り(円買い)に動いていたファンドの買戻し(損切り)である。また、101円~103円のレンジを想定してオプションの売りポジションを持っていたファンドも苦境に追い詰められている。このまま1月2日高値105円44銭を上抜けるかどうかは、日銀の追加緩和の有無がカギとなるだろう。

ドル/円(日足) 買いシグナル点灯中

101円~103円のレンジ情報ブレイクで、ドル/円の売り方は苦境に…
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)


(出所:石原順)

日経平均(日足) 円安を受けリバウンド相場に…

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)


(出所:石原順)

シカゴIMM 円のポジション(CFTC発表 3月25日時点) 投機筋は円売り再開に動くか?


(出所:石原順)

クロス円相場も4月株高のアノマリーに呼応

4月株高のアノマリーや新興国危機の沈静化を受けて、クロス円相場は買いシグナルが点灯中である。南アランド建ての金融商品が大量に販売されている南アランド/円相場も、2月初旬から3月後半までは売りトレンドの後の調整相場を続けていたが、資源通貨高の流れを受けて3月後半からは買いトレンド相場となっている。

豪ドル/円(日足) バンドウォーク相場

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)


(出所:石原順)

ユーロ/円(日足) 買いシグナル点灯中

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)


(出所:石原順)

ポンド/円(日足) 買いシグナル点灯中

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)


(出所:石原順)

NZドル/円(日足) 最強通貨?買いシグナル点灯中

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)


(出所:石原順)

南アランド/円(日足) 買いシグナル点灯中 政情不安も利上げ観測が浮上中

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)・2シグマ(赤)


(出所:石原順)

豪ドル/円は4月が高く8月が安い傾向がある

豪ドルが急騰している。豪ドル/円がプラスのリターンとなりやすいのは4月・12月・7月・2月・11月・3月で、マイナスのリターンとなりやすいいのは8月・5月・9月・10月・6月である。

豪ドル/円の顕著な上昇傾向がある月は日本の年度替わりの4月で、逆に8月の豪ドル/円相場は顕著な下落傾向がある。今年の4月相場はどうだろうか?

豪ドル/円(月足) 2000年~2014年

豪ドル/円は8月が安く4月が高い?(赤は4月安・8月高となった失敗の月)


(出所:石原順)

消費税率の引き上げとドル/円相場

消費税率の引き上げとドル/円相場の関係については、過去2回しかデータがないため、よくわからないというのが実情だ。ローレンス・サマーズは今回の消費税率の引き上げが、日本経済に悪影響を与えるとみているようだ。サマーズは1997年の消費税率引き上げにも反対していた。振り返ってその後の日本経済をみれば、サマーズの主張は正しかったといえよう。

以下のチャートは1989年と1997年の消費増税後のドル/円相場の日足である。過去2回のケースでは、「1~2カ月間は円高にならなかった」いうのが結論である。そうであるなら、今年の4月相場も円高のリスクは小さい。

消費増税後のドル/円相場の日足 1989年(左)・1997年(右)


(出所:石原順)

ポジティブサプライズはあるか?注目の米雇用統計

今週の相場の最大の焦点は4月4日の米雇用統計である。ブルームバーグの予想では失業率6.6%、非農業部門雇用者数(NFP)+20万人が予想中央値となっています。NFPの予想のレンジは+10万人から+27万5000人とテールが長くなっており、ポジティブサプライズが期待されている。

米雇用統計の推移(2000年1月~2014年2月)

4月4日発表の3月米雇用統計の市場予想は失業率6.6%、非農業部門雇用者数+20万人


(出所:石原順)

3月31日の講演で、イエレンFRB議長は「FEBは相当の期間、米国の雇用回復に向けて“異例”の金融支援を実行する。この約束は強力なものだ」と発言した。長期失業や賃金上昇率の低迷を根拠に、「雇用への支援姿勢を弱めたわけではない」と、当面緩和策を続ける考えを示している。したがって、雇用統計の数字が多少悪くても、押し目は買いたいという運用者は多い。

イエレンFRB議長は31日の講演で「利上げ」の問題には踏み込まなかった。米国の金融政策が見えてくるのは、スタンレー・フィッシャーがFOMCミーティングに参加してからだろう。米国株の上昇要因は自社株買い、日本株の上昇要因は為替次第とぜい弱な面はあるが、今しばらくはバブル相場が走りそうだ。

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。