2022年上期に業績悪化も最悪期脱却、需要回復と生産調整で業況回復見通し

 中国本土のセメント銘柄の2022年6月中間決算は、トン当たり利益の減少や販売量の縮小により、軒並み大幅減益となる可能性が高い。ただ、中国政府は大型の都市封鎖を回避しつつ、インフラ投資の強化で景気底上げを目指す方針であり、セメント需要は今後回復する見込み。セメントメーカーはより積極的に、電力需要のピークを避ける形での生産調整に動き出しており、実際に明るい兆しも見え始めた。BOCIは中国のセメント業界が段階的に最悪期を脱し、今後は大幅な復調に向かうとの見方。業界全体の株価の先行きに対する強気見通しを継続し、中国建材(03323)をトップピックとしている。

 上海市などの都市封鎖が痛手となり、中国のセメント需要は今春のピークシーズンに減少。多くのメーカーが上期の減益見通し、あるいは赤字転落見通しの発表を余儀なくされた。BOCIはカバー銘柄3社の上期決算について前年同期比17-62%の減益を予想し、華潤セメント(01313)の減益率が最も大きいとしている。

 中国のセメント需要は3-5月の極端な低迷から脱し、すでに回復基調にある。6月のインフラ投資は前月比46%増、前年同月比12%増の267億元。不動産開発投資は前年同月比13%減少したものの、これは前年実績の高さが一因。前月比では24%増加し、年初から月別で最も高い数字となった。6月の着工面積は前月比49%増加している。

 中国ではデベロッパーの資金難で住宅建設プロジェクトに遅れが出ているが、この問題に対処するため、政府が3,000億元規模の基金を創設するとの報道があった。仮にこれが実現して建設工事が再開されれば、セメント需要の押し上げが期待できる。

 一方、セメントメーカーは今夏、電力使用量の少ない時間帯へのシフトで生産調整し、厳しい事業環境を乗り切る考え。高水準にある在庫の縮小につながるとみられる。

 中国全土のクリンカー(セメントになる前の中間製品)保管施設の稼働率は5月から7月27日まで高水準で推移しているが、中部と東部ではすでにピークアウト。うち東部ではセメント価格が上昇し始めた。BOCIは供給サイドの生産調整が続けば、向こう数週間以内にもさらに広範なエリアに価格上昇傾向が広がるとみる。

 コスト面では一般炭価格が軟化し始めたことがプラス。秦皇島5,500キロカロリー種のスポット価格は3週間で4%下落し、7月25日時点で1トン=1,200元。当局が石炭生産量を積極的に増やしていることから、今後も下落基調で推移する可能性が高い。

 銘柄別では、BOCIは中国建材を選好している。事業構成と地理的な多様性が高い同社の2022年の減益率は同業他社より小幅にとどまると予想(上期の予想は前年同期比17%の減益)。セメントプラント管理事業や新素材事業を有望視している。ほかに安徽コンチセメント(00914)の株価の先行きに対しても強気。一方、華潤セメントについては中立見通しを付与している。