利上げサイクルに入るニュージーランド経済
ニュージーランド準備銀行(中銀)は2013年12月12日の理事会で政策金利を2.50%に据え置いたが、金融政策報告書で「現在の水準の金融刺激策を維持することは不要になりつつある」と表明し、インフレ加速の見通しを考慮すれば利上げが必要になることを示唆した。
クライストチャーチ地震からの復興需要もあり、ニュージーランドの2013年のGDP成長率は先進国のなかでトップクラス(2013年第3四半期の実質GDP成長率は前年同期比+3.5%)の数字となっている。加えて、住宅バブルが過熱しており、低金利政策を維持することが難しくなっている。
『ニュージーランド準備銀行のウィーラー総裁が「住宅ローン新規制がニュージーランド国内の住宅価格上昇を抑制できなければ利上げが必要になる」と発言しており、「オフィシャル金利が2014年~2016年に2%上昇する可能性がある」ことを指摘している。ニュージーランド準備銀行は「2014年の第1四半期にオフィシャル金利を引き上げる」との見方が広がっており、ニュージーランドはファンダメンタルズ的に豪ドルより手掛けやすい』と、筆者がレポートでニュージーランドに言及したのは2013年10月17日である。
オセアニア通貨を買うなら豪ドルよりニュージーランドドルが有利であり、2013年以降の豪ドル/ニュージーランドドルは、一本調子で下げ続けている。
豪ドル/ニュージーランドドル(日足) 2008年の安値1.06480を下回るところまで下げている
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)
ニュージーランドドルは主要先進国通貨の中でも最も早く利上げサイクル入り(2014年中に2.5%から3.25%まで0.75%の利上げを実施する予想が多い)することから、2014年の最強通貨になるとの観測も出ている。利上げ開始時期については、2014年年第1四半期との見方が有力だ。
ニュージーランドドル相場の注意点
とは言え、今年のニュージーランドドル相場には注意すべき点がいくつかある。
- 1.豪州と同様に当局が通貨高(ニュージーランドドル高)懸念を表明している。
- 2.いずれかの時点で豪ドル/ニュージーランドドル相場の巻き戻しが起こる可能性がある。
- 3.米国のQE縮小の影響を受ける可能性がある。
- 4.中国経済の影響を受ける。
- 5.利上げは織り込みが進んでおり、初回の利上げで目先の材料出尽くしとなる可能性がある。
という5点である。
以上の点に注意が必要だが、2014年中に0.75%の利上げが実施されれば、ニュージーランドドルは穏やかな上昇を続けることになろう。
現在のニュージーランド/円相場の特徴は?
下のチャートはポンド/円とニュージーランドドル/円の日足である。チャートの上段には1%以上の変動ライン(緑)、下段には1日の最大値幅=1日ATR(青)および1日の最大値幅の20日平均=20日ATR(赤)がプロットしてある。
この2つのチャートを比較してみると、昨年10月末からポンド/円などの欧州通貨は爆発的な上昇を見せたが、年初の相場では大きな反落に見舞われている。一方、ニュージーランドドル/円は、10月末から地味ではあるが堅調な上昇を現在まで継続している。
短期売買を繰り返す投資家には、動きの激しいポンド/円の動きのほうが好ましいだろう。ポンド/円の仕手株のような動きが苦手な投資家や、金利差に着目して比較的長期に通貨を保有したい投資家にはニュージーランド/円の方が向いていると言えよう。どちらが良いという話ではない。
ポンド/円(日足) 1日の値幅の大きさが魅力
上段:21日移動平均線(赤)・1%以上の変動ライン(緑)
下段:1日ATR(青)・20日ATR(赤)
ニュージーランドドル/円(日足) オセアニア通貨の月別の変動は8月安が顕著で4月は高い
上段:21日移動平均線(赤)・1%以上の変動ライン(緑)
下段:1日ATR(青)・20日ATR(赤)
現在のニュージーランドドル/円は8月からの上昇トレンドライン(青)を支持線として上昇相場を継続中である。11月以降の相場は21日移動平均線がトレンドラインと重なりながら上昇する特徴的な動きとなっており、投機筋の間でも「めずらしい」と話題になっている。
昨年10月末からのニュージーランドドル/円の買いは今のところうまくワークしている。この「10月末買い・4月末売り」のリスク商品投資の循環が売買戦略の基本となるが、オセアニア通貨の月別の変動は8月安が顕著で4月は高い。この特徴を知っていれば、ニュージーランドドル/円相場に対処するのにいくらかの「優位性」をもたらすであろう。
米雇用統計を受けてドル/円は乱高下
先週のレポート「ドル/円の押し目買い・利食いのターゲットはどこか?」で、ファンド勢が想定するドル/円の押し目買いポイントをとりあげた。実際、筆者も104円30銭、103円50銭、103円20銭、103円00銭、102円50銭にリーブオーダーを置いていたが、月曜日の相場で103円00銭までのオーダーが全て約定してしまった。
1月10日に発表された12月米雇用統計の異常な数字は寒波の影響であり(来月も影響を受ける可能性がある)、一喜一憂する類のものではないと思われるが、週明けの1月13日月曜日に大規模なポジション調整に見舞われた。
月曜日の大幅な下げでオシレーターが短期的な相場の売られすぎを示唆していたため、筆者の周辺のファンドはドル/円の買いにまわったという。相場は火曜日から大きく戻し、15日のNY時間には104円69銭まで戻してきた。
既報の通り、61.8%戻しの105円59銭は強い抵抗だが、上抜ければ上値余地が拡大する。いずれにせよ、筆者は年前半の押し目買いを基本スタンスとしており、引き続き大きく下げたところは拾っていきたい。
ドル/円(日足) 月曜日の大幅な下げでオシレーターが短期的な相場の売られすぎを示唆
上段:先週のレポートで取り上げた押し目買いポイント
下段:ストキャスティクス5-3-3(赤)・14日RSI(青)
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。