1月6日のレポートでドル/円の動く範囲は概ね5年(60カ月)移動平均線の±30%かい離水準だと述べた。これは極限値であり、過去の相場では5年(60カ月)移動平均線の±10%および±20%水準もサポートやレジスタンスとなっている。
2012年11月からドル/円の月足は鋭角的に上昇しており、現在5年(60カ月)移動平均線の+20%かい離(1月8日現在105円49銭)近辺まで上昇してきた。円の買われすぎの修正は、かなりのレベルまで進んだといえよう。円安・株高という「良い円安」が5年(60カ月)移動平均線の20%かい離をすんなり抜けてくるかどうかで、筆者は気を揉んでいる。
ドル/円(月足)と60カ月移動平均線かい離(エンベロープ)
10%かい離(緑)・20%かい離(青)・30%かい離(紫)
+20%かい離は1月8日現在105円49銭
5年(60カ月)移動平均線かい離+20%が105円49銭、2007年高値から2011年安値の61.8%戻しが105円49銭と、105円台半ばには2つの難関が控えている。年末年始に投機筋はここをトライしたが、12月30日は105円41銭、1月2日は105円44銭が高値となり、105円50銭を上抜けなかった。
104円50銭手前が重く、「ここは一撃では抜けない」とみた一部ファンドが利食いに動いたため、強いドル買い相場はいったん終了した。現在は105円10銭から21日移動平均線のレンジでの調整相場となっている。
ドル/円(日足) 61.8%戻し(105円59銭)トライに失敗し調整中
現在、21日移動平均線がサポートポイントとなっている
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)
CFTCが発表した12月31日時点のシカゴIMM通貨先物市場の円のポジションをみると、日本円は13万5228枚の売り越しと前週の14万3822枚から縮小した。一部投機筋が利食いに動いたようだ。
シカゴIMM通貨先物市場の円のポジション(CFTC発表12月31日時点)
この積み上がった円売りポジションの解消を懸念する声もあるが、市場参加者の1~3カ月のコストである移動平均リボンをみると、現在103円87銭~100円64銭となっている。現在、ドル/円は移動平均リボンの上で推移している。したがって、円売りポジションの崩落や損失覚悟の投げが出ているわけではなく、利食いが出たというのが現状の相場認識である。
ドル/円(日足)と移動平均リボン(1~3カ月の市場参加者のコスト)
ドル/円は移動平均リボン(赤の帯)の上で推移
通貨を運用対象とするいくつかのファンドに、目先のドル/円の「押し目買いの水準」を聞いてみたところ、104円30銭、103円50銭、103円00銭付近に集中している。そして、今後102円50銭水準まで下がれば、ドル/円を買いたいという運用者は多い。
あるファンドの幹部は、「われわれはいま4月までのリスク商品の買いの循環の中にいる。したがって、基本的に押し目買いで相場に対処する。FOMCのガイダンスの変更がない3月までにリターンを狙いに行く方針である」と語っている。
クロス円相場ほど親和性のないドル/円の「10月末買い・4月売り」の循環売買も、今のところ順調に推移している。1971年以降の円相場の変動パターンをみると、確率的には1月~3月が円売りの時間帯であることがはっきりしている。今年も年前半は押し目買いがワークしそうだ。
ドル/円(月足)と10月末買い・4月末売り(赤は失敗の年)
2013年10月末の98円35銭から大きく上昇
円相場の年間変動パターン(1971年からの平均値)
それでは、ファンド運用者たちはドル/円の上値ターゲットをどのあたりに定めているのであろうか?ドル/円は2007年高値から2011年安値の61.8%戻しの105円59銭を上抜くと上値余地が拡がるが、数人の運用者が次の上値ターゲットとして「20年(240カ月)移動平均線」を挙げている。
筆者は20年移動平均線など全く気にしていなかったが、「過去にドル/円が20年移動平均線を抜いたのは2007年だけである」というのが、20年移動平均線に注目している理由だそうだ。
20年移動平均線は1月8日現在106円72銭近辺を走っている。不思議なことに106円72銭は筆者が三角保合ブレイク相場の上値ターゲットとして取り上げてきた106円76銭とほぼ同じ水準である。
ドル/円(月足)20年(240カ月)移動平均線(青)
20年移動平均線は1月8日現在106円72銭近辺
ドル/円(日足) 三角保合離れの教科書的なターゲットは106円76銭
さて、今週の注目材料は10日(金曜日)の米雇用統計である。昨日発表されたADP雇用者数が強めの数字となったため、米雇用統計への期待感が強まっている。ADPの結果を受けて12月の非農業部門就労者数の市場予想は上振れし、前月比20万人増加の予想中央値となっている。
ドル/円が105円59銭を上抜いてくるのか、それとも今しばらく調整相場を続けるのかは米雇用統計の数字次第といえるだろう。1月相場は米雇用統計からが本番だ。
米国の雇用の推移(2000年~2013年)
直近の市場の予想は非農業部門就労者数が+20万人・失業率7%となっている
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