先週は金融引き締め懸念が後退したことで米国株が急騰。日本株は一時1ドル132円台まで進んだ円高もあり、ほぼ横ばいでした。月が替わる今週8月1日(月)から5日(金)は急騰後の反動が怖いものの、一段高しそうな勢いです。

先週:FOMC通過で米国株は超強気モードに。円高が不安!

 先週の米国市場は「能天気」といえるほど楽観的なムードに包まれました。

 機関投資家が運用指針にしているS&P500種指数は週間で4.3%上昇。7月月間では9.1%高と2020年以来、最高の月間パフォーマンスで終了しました。

 悲観的な雰囲気を変えたのは、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)です。27日(水)に0.75%の大幅利上げを決めました。

 しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長が今後の利上げペース鈍化に言及。

 この発言をきっかけに、「ハイペースな利上げはもう終わった」と市場は総悲観から超楽観に一変しました。

 さらに、28日(木)発表のアマゾン・ドット・コム(AMZN)の2022年4-6月期決算は予想を上回る増収となり、29日(金)の株価は10%超も上昇。

 世界一の時価総額を誇るアップル(AAPL)も、iPhoneの販売増で決算が好調。29日(金)の株価は3%高でした。

 これを受け、ハイテク株が集まるナスダック総合指数は週間で4.7%高、7月月間では12%超も上昇しました。

 29日(金)には6月の米国個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)が発表。前年同期比6.8%の上昇となり、40年ぶりの物価高がさらに加速。しかし、悪材料視されませんでした。

※PCEデフレーターに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 一方、先週は日本でも2022年4-6月期の決算発表がスタート。

 27日(水)に増収減益を発表した医師向けサイト運営のエムスリー(2413)が「減益」ではなく「増収」の方を評価されて週間で14.5%も急騰。

 売られ過ぎたIT関連株に対する見直し買いが今後も続きそうです。

 ただ、29日(金)の市場終了後にはソニーグループ(6758)が2023年3月期の最終利益予想を下方修正。8月1日(月)は安く始まりそうです。

 日本では、感染力の強いコロナの「BA.5」株が猛威を振るい、新規感染者数が過去最多の20万人を超えています。

 しかし、ANAホールディングス(9202)エイチ・アイ・エス(9603)の株価が前週比で2%超上昇するなど、空運株や旅行関連株は堅調。

 行動制限が打ち出されていないこともあって、株価急落という事態には至っていません。

今週:日本企業の決算は?米国景況感指数、雇用統計に注目!

 今週は、日本企業の2022年4-6月期決算が本格化します。

 8月2日(火)はロシア天然ガス事業「サハリン2」の減損処理が注目される三菱商事(8058)三井物産(8031)

 4日(木)には日本経済を支える大企業・トヨタ自動車(7203)

 5日(金)には今年に入って前年比85%も株価が上昇した三菱重工業(7011)、半導体関連の人気株レーザーテック(6920)

 個別株の業績に一喜一憂する展開になりそうです。

 全体としては、売られ過ぎたIT関連株やリオープン(経済再開)株の見直し買いが続く一方、主力の自動車、電子部品株などは急速な円高が重しになりそうです。

 米国関連の指標では、1日(月)夜にISM(全米供給管理協会)が発表する7月製造業景況指数、3日(水)の非製造業景況指数に注目が集まるでしょう。

 景気後退が市場にとって一番の懸念材料ということもあり、好不況の境目となる50近辺まで低下すると、株価の戻り売り圧力が高まる可能性もあります。

 5日(金)には、7月の雇用統計が発表されます。

 前回6月の非農業部門雇用者数は予想を超える37.2万人の増加となりました。

 今回の予想は25万人増。インフレ圧力となる平均時給の伸びと合わせて、あまりに数字が良すぎると逆に金融引き締め懸念が再び台頭する恐れもあります。

 しかし、株式市場の表情は本当にくるくる変わるものです。

 日本株に目を移すと、先週、急速な円安トレンドの終焉(しゅうえん)が見え始めました。

 かたくなな量的緩和策の継続で「悪い円安の犯人」扱いされた日本銀行の黒田東彦総裁にとっては朗報かもしれません。

 しかし、先週のように1週間で6円も円高が進むような急激な動きは、日本株にとってネガティブ。

 2022年に入ってからの日本株は、「弱い米国株に比べて、意外に底堅い」というムードに包まれていました。そのけん引役になったのが円安です。

 今後は円高がボディーブローのように効いて、市場の雰囲気がじわじわと変化する可能性があるかもしれません。