FOMCの結果、0.75%の利上げ実施

 米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は27日(日本時間28日午前3時)、0.75%の利上げを発表しました。FF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を1.50~1.75%(中心1.625%)から2.25~2.50%(中心2.375%)へ引き上げました。6月に続き、2カ月連続で0.75%の大幅利上げを実施しました。

 事前に示唆していた利上げ幅は0.5%または0.75%でしたので、サプライズ(驚き)はありません。6月の米CPI(消費者物価指数)が前年同月比9.1%に上昇したことで、7月の利上げ幅が1.00%になるとの思惑が一部に出ていましたが、利上げ幅は事前に示唆されていた0.75%でした。

米FF金利、長期金利、NYダウ月次推移:2004年1月~2022年7月(27日)

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 米長期(10年)金利は、米景気の減速懸念が強まっていることを受けて、利上げ後も低下して2.78%となりました。6月に一時、3.5%近くまで上昇していたことを考えると、景気減速の織り込みが進んでいると言えます。

 短期金利(FF金利)の大幅引き上げが続いていることから、長期(10年)金利と短期金利(FF金利)のスプレッドがかなり狭まっています。このまま利上げを続けると、いずれ長短金利逆転が視野に入ってきます。

米国株は大幅高、決算&パウエル議長の発言好感

 27日の米国株は大幅高となりました。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は前日比4.1%高と今年最大の上昇率になりました。ダウ工業株30種平均は前日比434ドル(1.4%)高の3万2,196ドルでした。ナスダック大幅高の理由は二つあります。

(1)パウエルFRB議長が記者会見で年後半の利上げペース鈍化を示唆

 FRBは2カ月連続で0.75%の大幅利上げを行った上、今後もインフレ抑制のための利上げを続けると示唆しました。ただし、声明文で「最近の支出と生産の指標は弱まった」と米景気減速を認識していることも示しました。

 さらに材料視されたのは、利上げ後のジェローム・パウエル議長の記者会見です。インフレの鎮静化が確認されれば、「利上げペースを緩めることが適切になる」と発言したことから、秋以降に利上げが鈍化する期待が生じました。

(2)2022年4-6月決算を好感

 2022年4-6月決算を好感して、マイクロソフトやアルファベット(グーグル)が大幅高となりました。ハイテク株の決算が「事前の市場予想ほど悪くない」との見方が広がり、ハイテク株が買い戻されました。

IMFが米国の成長率見通しを大幅引き下げ

 IMF(国際通貨基金)は26日、米国GDP(国内総生産)成長率見通しを大幅に引き下げました。2022年の成長率を、4月時点の見通し+3.7%から+2.3%へ引き下げました。2023年についても、4月時点の見通し+2.3%から+1.0%まで大幅に引き下げました。インフレ・利上げによって、米景気が急速に減速することを織り込みました。

 2022年の米成長率見通しは大幅に引き下げられたとは言っても+2.3%なので、巡航速度の成長が続いていると言えます。ところが、2023年の見通し+1.0%は衝撃的です。米経済にとって2%台の成長は、これまで当たり前でした。

 2023年にもし1%しか成長しないとすると、それは米経済がかなり不況色の強い環境になることを意味します。IMFは、2023年に米国が景気後退に陥る可能性まで視野に入れていると考えられます。

 米国の見通しを含む、IMFの世界経済見通しは、以下の通りです。

IMFによる主要国・地域の成長率予測:2022年7月版

出所:IMF「世界経済見通し」2022年7月版 注:ASEAN5とは、インドネシア・マレーシア・フィリピン・タイ・ベトナムの5カ国

 上記予測の中で一番衝撃的なのが、2023年の米国成長率が1.0%に落ち込む予測です。それでも世界全体では、順調な成長が続く予測となっています。IMFは世界全体で2022年に+3.2%、2023年に+2.9%の成長率を予測しているからです。3%前後の成長が続くならば、世界経済は順調と言って良いことになります。

 米国が落ち込む分、アジアが高成長に復帰することで、世界の成長をけん引する予想となっています。中国は減速するものの2023年に4.6%成長を見込んでいます。インドは6.1%、ASEAN5は5.1%の高成長が続く予想です。

IMF予測から読み取れること:アジアが独自の成長を始める

 IMFが発表した予測のインプリケーション(示唆)として、欧米に代わり、アジアが独自の成長を始める可能性があります。2022、2023年は、欧米に代わってアジアが世界経済をけん引する予想です。

 1990年代、世界経済の中で米国が一人勝ちでした。当時、米国経済の予測だけすれば、世界全体の予測ができました。米国が好調ならば、その恩恵で世界全体が好調で、米国が不振ならば世界全体が不振になるのが明らかでした。

 21世紀に入り、米国とは独立の成長をする国がでてきました。中国やインドです。これからは、ますますその傾向が強まっていくと考えています。つまり、インドやASEAN(東南アジア諸国連合)などアジアが独自の成長を遂げる時代になると予想しています。

 ところで、日本についてはどうでしょう。IMFの予測では、日本は2022、2023年とも1.7%成長する予想となっています。もし1.7%成長するならば、低成長国の日本としては申し分ない成長です。この通りになると仮定すると2023年、米国は不況色が強まりますが、日本は内需回復などによってゆるやかな景気回復が続くことになります。

日本株は時間分散して買い増しの方針

 日本株についての投資判断は変わりません。日本株は割安で、長期的には買い場と判断しています。短期的な下値リスクは払しょくできませんが、時間分散しながら、割安な日本株を買い増していくことが、長期の資産形成に寄与すると判断しています。