日本株は1月効果が期待できる?

今年の日本株は「海外勢が買いまくり日本の個人や年金が売る」という構図の中で動いてきた。日本株は証券優遇税制の終了で年末に向かって売りが増えており、12月相場も1996年からの長期抵抗線付近で足踏みを続けている。証券優遇税制の終了(税金対策)の売りは年内で終了することから、需給面の重しがなくなる2014年1月の日本株は「1月効果」(1月の収益率はその他の月に比べて高い)が発揮されるかもしれない。

日経平均(日足)と長期上値抵抗線

長期抵抗線は12月11日現在15704円で、毎日1円62銭づつ切り下がっていく


(出所:石原順)

日経平均(週足) 需給面の重しがなくなる日本株は、近年は効果が薄れた「1月効果」が発揮されるかもしれない


(出所:石原順)

NYダウの「年末・年始効果」

さて、今回のレポートで取り上げるのは「1月効果」ではなく、「年末・年始効果」である。12月2日のウォールストリート・ジャーナルに『本物の「サンタクロース・ラリー」は年末年始の7営業日?』(マーク・ハルバート氏)という記事が載っていた。

「サンタクロース・ラリーと呼ぶべき状況が出現している期間がある。それは12月の最終5営業日から1月の当初2営業日までの7日間だ」「1896年の創設以降でみると、ダウ平均はこの7営業日に平均で1.7%上昇しており、77%の確率で上がっている。これは暦の中でこの期間を除く全ての7営業日の平均の伸び0.2%を大きく上回る」(12月2日のウォールストリート・ジャーナル)という内容だ。

興味深いので、近年のNYダウの「12月の最終5営業日から1月の当初2営業日までの7日間」の動きを調べてみた。結果は2000年~2013年までの14年間で「10勝4敗」(勝率71%)であった。これは確率としては悪くない数字だ。

NYダウ(日足)と「12月の最終5営業日から1月の当初2営業日までの7日間」の動き

2000年~2013年  7日間で上昇した年(緑)・下落した年(黄)


(出所:石原順)

ニュージーランドドル/円の「年末・年始効果」

NYダウの「年末・年始効果」のアノマリーはリスク選好商品であるクロス円相場にも通用するはずだと思い、来年先進国の中では異例の「利上げサイクル」に入ると観測されているニュージーランドドル/円の「12月の最終5営業日から1月の当初2営業日までの7日間」の動きを調べてみた。結果は2000年~2013年までの14年間で「12勝2敗」(勝率87.58%)であった。これはNYダウの勝率を上回っている。

ニュージーランドドル/円(日足)と「12月の最終5営業日から1月の当初2営業日までの7日間」の動き

2000年~2013年  7日間で上昇した年(緑)・下落した年(黄)


(出所:石原順)

「12月の最終5営業日から1月の当初2営業日までの7日間」だけの動きとはいえ、ニュージーランドドル/円の上昇確率はかなり高い。相場に絶対はなく過信は禁物だが、過去のデータからみれば、12月のニュージーランドドル/円の押し目買いには妙味があるといえるだろう。

ニュージーランドドル/円(月足) 10月末買い・4月末売り(赤は失敗の年)


(出所:石原順)

ドル安・円安相場と不景気のユーロ高

米経済指標の好転を受けてQEの早期縮小観測が台頭してきた。常識的に考えると、ドル高相場となるはずだ。しかし、このところの為替市場は「ドル安・円安相場」となっている。円安については、イエレンバブルでファンド勢が一斉に円キャリートレードを行っているので納得がいく。

問題はドル安である。QEの早期縮小観測やユーロ圏の利下げ観測にも関わらずユーロ高が進んでいる。そのため、ユーロ/円相場は急騰し、10月末に133円63銭だった相場は12月10日には142円15銭まで上昇した。

ユーロ/円(月足) 10月末買い・4月末売り(赤は失敗の年)


(出所:石原順)

「何でユーロは上がっているのか?」と訝しがる声は多いが、ユーロ圏の経常収支は「緊縮財政」と「不景気の輸入減」で黒字となっている国が多く、一人勝ちのドイツも内需は低調で貿易問題になるほど黒字をため込んでいる。つまり、(最悪期は脱したとはいえ)不景気のユーロ高が進んでいるのだ。日本がこれまで経験してきた不景気の円高と同じ構造である。

もっとも11月以降のドルインデックス・ユーロインデックス・円インデックスの推移を見てみると、ドルインデックス安もユーロインデックス高も「レンジ相場の範疇」といえるだろう。ADXや標準偏差が上昇するトレンドを有していたのは円インデックス(円売りトレンド)だけで、ドルインデックス・ユーロインデックスも11月相場は調整相場の範疇であった。本格的なユーロ高トレンドが発生するのか、ここからの動きが注目される。

ドルインデックス(左)・ユーロインデックス(中央)・円インデックス(右)の日足

11月は円独歩安相場だった…
上段:14日ADX
中段:26日標準偏差ボラティリティ
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ


(出所:ストックチャーツ)

注目の12月18日FOMC

12月17日~18日は最大のイベントである12月FOMCが開催される。12月9日の講演ではタカ派のフィッシャー・ダラス連銀総裁やラッカー・リッチモンド連銀総裁が12月のQE縮小開始を主張した。これは予定調和だが、金融当局の顔色を見ながら意見を変えるという評判の日和見派ブラード・セントルイス連銀総裁も「12月の小規模なQE縮小」を支持した。

ブラード総裁は「インフレ率が低過ぎる」という理由から早期のQE縮小に反対していたが、12月9日の講演では「12月QE縮小支持」に転じた。これで「12月QE縮小開始説」がにわかに台頭してきている。こうした状況のなか、12月18日のFOMCで「QE縮小見送り」となれば、年末・年始にかけてさらにバブル相場が走る可能性がある。

QE縮小が開始されても、FOMCは金融緩和の代替案を用意している。イエレンの主張する最適管理のロジックで、「利上げ開始の目安となる失業率のターゲットを現状の6.5%から5.5%(完全雇用)に引き下げる案」が最も有力視されている。

イエレンもグリーンスパンも米国株はバブルではないと言う。「米経済は何年にもわたって定常的な停滞に陥る可能性がある」「最低限の成長を維持するにはバブル(副産物)も受け入れ可能」とサマーズ元財務長官が発言しているように、米国ではバブル容認論も台頭してきた。

中央銀行のDNAが変化し、非伝統的手段(ゼロ金利・QE)が普通の政策理論になったと報道されている。テーラー・ルール(失業率7% 利上げ)→エヴァンス・ルール(失業率6.5%以上、インフレ率2.5%以下であれば低金利継続)→イエレン・ルール(失業率6.5%から5.5%にターゲット引き下げ)と、利上げのハードルは上がり続けている。当面、金融政策のホテルカリフォルニア状態(緩和はやめられない)から抜け出すことは難しそうだ。

相場に対する楽観的な見方が増えてきているが、バブル相場に反動安はつきものだ。損失の許容範囲を設定し、必ずストップ・ロス・オーダーを置いておきたい。日々の相場動向はブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。