ファーストリテイリング株が出直りの動き

 この7月、東京市場の個別銘柄でもっともサプライズを感じる動きをしたのは「ファーストリテイリング(9983・プライム)」で間違いないでしょう。

・ファーストリテイリングの2年週足チャート

赤:株価移動平均(13週)
青:株価移動平均(26週)
緑:株価移動平均(52週)

 6月末には7万円をやや下回る水準で推移していたものの、あれよという間に約13%も値上がりしました。

 7月4日に発表した「ユニクロ」の6月国内既存店売上(直営店、EC含む)は前年同月比10.2%減、前年実績を3カ月ぶりに下回ったものの、要因はセールを前年より前倒ししたことによるものとされ売り要因とはならず、それどころか6月末に猛暑が到来したことによって今後の売上伸長への期待が生じる格好となりました。

 さらに7月14日、2022年8月期(今期)の連結純利益が前期比47%増の2,500億円になるとの見通しを発表、2021年9月-2022年5月期はコロナ禍からの経済活動再開で先行する欧米がけん引し、円安も利益を押し上げ、従来予想から600億円の上方修正を行いました。

 発表翌日(15日)にファーストリテイリング株は6,100円高(約8.7%)となり、日経平均株価を実に約200円も引っ張り上げました。

 この2年の同株の動きは約6万円(2020年夏)→最高値11万円(2021年春)→長期低迷でしたが、最高値からの下落要因は大まかに3点指摘できます。

  • 月次販売の低迷
  • ウイグル綿使用が疑われ米国で輸入差し止め
  • ロシアでの営業展開への非難

 とくにウイグル綿とロシアに関することはいかにも外国人投資家に嫌気されるポイント(ESG視点)で、日経平均が3万円を回復した2021年秋、多くの銘柄が高値を更新する中でも同株は蚊帳の外に置かれました。日経平均寄与度が高い同株が反転高となると、もちろん日経平均の上昇につながり、投資家のセンチメント(心理)好転につながる可能性もあります。

 東証プライム市場には1,838銘柄(7月20日現在)が上場していますが、随一の重要銘柄ということになります。実際に投資をするかどうかを別にしても常に動向をウオッチしておきたい銘柄です。

コロナ感染拡大時の反応を横にらみで

 ファーストリテイリングだけでなく、東京市場では「消費関連株」に強い動きをする銘柄が多い状況です。

 北米など海外コンビニ事業が好調だった「セブン&アイ・ホールディングス(3382・プライム)」、プライベートブランドが好調で総合スーパーが黒字転換となった「イオン(8267・プライム)」、経済活動再開による外出需要が売上増につながった「しまむら(8227・プライム)」などもそれです。

・セブン&アイ・ホールディングスの1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

・イオンの1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

・しまむらの1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 半面で、国内でコロナ(BA.5)感染が拡大していることは、これら消費関連株にとって懸念となります。過去において、コロナ感染拡大局面での行動自粛、さらに感染拡大が続くと「まん防」など行動制限が発せられ、営業時間の短縮につながり、株価がいったん下落する局面が見られていました。

 ただ、今回ここまでは過去のコロナ感染拡大局面に比べ総じて堅調に推移している印象です。東京都の例でも1日当たりのコロナ新規感染者が1万人を超える事態となりましたが、東京株式市場で年初来高値を更新する銘柄にはやはり消費関連株が目立ちます。この背景としては以下の二つが想定されます。

  • 今回のコロナ(BA.5)感染拡大は早期収束すると投資家が考えている(行動制限はとられないとの見方)
  • コロナ感染収束→株価反発を何度も経験しており動きが想定しやすい。早めに下値に買いを入れている投資家がいる

 まだしばらくは株価の動きを検証する必要があると思われますが「コロナ感染拡大時には必ず下落するセクター」という理解だけでなく、過去とは異なるシナリオも頭に置くべきかもしれません。

 消費関連株の中で銘柄数が多い外食株も、外食最大手で牛丼「すき家」、回転ずし「はま寿司」などを展開する「ゼンショーホールディングス(7550・プライム)」、外食第2位でファミレス「ガスト」、中華の「バーミヤン」や和食「夢庵」などを展開する「すかいらーくホールディングス(3197・プライム)」、「モスバーガー」を展開する国内ハンバーガー業界第2位の「モスフードサービス(8153・プライム)」、居酒屋全国展開の「コロワイド(7616・プライム)」、「餃子の王将」の「王将フードサービス(9936・プライム)」、「大阪王将」の「イートアンドホールディングス(2882・プライム)」など多くの銘柄がここまで比較的堅調な動きをしています。

 この流れが継続すると、さらに小型でマイナーな銘柄にも物色のホコ先が向くものと考えます。消費関連株の中から10万円で投資可能な銘柄を例として挙げます。

10万円で投資可能な消費関連銘柄

 株価データは2022年7月19日終値ベース。

チヨダ(8185・プライム)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 靴の量販店大手で「東京靴流通センター」、「シュープラザ」など多店舗展開をしています。

ケーヨー(8168・プライム)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 関東地盤のホームセンター。業界大手「DCMホールディングス(3050)」の持分会社です。

買取王国(3181・スタンダード)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 リユース中堅で、ファッションやブランド品など中古品買い取りと販売の「買取王国」を東海3県中心に展開しています。

ANAP(3189・スタンダード)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 10~30代向けレディースカジュアル衣料・雑貨の「ANAP(アナップ)」を展開しています。EC比率が高いことでも知られています。

スタジオアタオ(3550・グロース)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 店舗、ECで自社ブランド「ATAO(アタオ)」の婦人用バッグ、財布などを販売しています。