相場の大局

現在のドル/円相場は2012年9月安値77円13銭から2013年5月高値103円73銭までの上げ幅(約8カ月間の上げ幅は26円60銭)に対する調整(修正)局面にあると思われる。6月13日安値93円78銭は上げ幅26円60銭の38.2%押しの93円57円の近似値であり、ここから相場は反転して7月8日は101円52銭まで上げたが、7月11日現在は98円22銭まで急反落している。

ドル/円(日足) 支持線と移動平均リボン(赤)

現在の調整相場の後に、もう一つドル高波動が残っている?


(出所:石原順)

筆者の周辺のファンドの多くは7月に入ってから100円超の円安局面では利食いや円買いに動いたところが多い。8カ月の上げ相場の後の調整(修正)は1カ月程度では<日柄>が足りず、もうしばらく調整相場が続くと観ているからである。

先週末の6月米雇用統計は非農業部門の新規雇用者数は前月から19.5万人増え、4月と5月分も上方修正されるという好結果となった。QE縮小が9月FOMCで決定されるとの思惑から、先週末の米長期金利は2.725%まで急上昇しドルは全面高となった。

米雇用統計の推移 2000年1月~2013年6月

6月の非農業部門の新規雇用者数は+19.5万人


(出所:石原順)

先週のレポートで「雇用統計の結果がインパクトを持ち相場がトレンドを有するなら、来週火曜日以降も同じ方向のトレンドが続くはずである」と述べたが、これだけよい結果が出た雇用統計を受けても、ドル/円相場は火曜日から円高方向の推移となっている。これはドル/円相場がまだ調整局面を脱していないことの証左であろう。

次の本格的なドル上昇相場は、先週のレポート「ドル高転換のポイントとその時期-あるヘッジファンドの分析」で述べた「9月以降」となりそうだ。9月FOMC(QE縮小か?)、ドイツの連邦議会選挙、日本の成長戦略第2弾の結果が出そろう9月まではドル高基調も安定しないというのが、当たり屋と言われる投機筋の見立てである。

ドルインデックス(月足) 1971年~2013年 ドル高大転換は9月か?

壮大な三角保合を形成中(水色のゾーン)
120カ月(10年)移動平均線(緑)


(出所:石原順)

今朝のFOMC議事録やバーナンキFRB議長の講演を受けて98円22銭まで円高が進んだと解説されているが、今の市場が円高を望んでいたのであり、きっかけは別に何でもよかったのではないか? バーナンキFRB議長がやや「ハト派」寄りの発言をしたのは米長期金利の上がりすぎに対する牽制であって、QEの縮小方向であることには何の変化もないだろう。もちろん、利上げはまだまだ先の話だ。

ドル/円もユーロ/ドルも三尊天井か?

筆者の独断で言えば、昨年10月から今年の1月までの円安相場は最高のトレンド相場であり、比較的収益を上げやすい相場であった。やや専門的な話になるが、2月から現在の相場は「拡張型反転波動」という「ダマシにあう確率が高い」フォーメーションが続いている。

ドル/円(日足) 相場の上げ下げがラッパ型に拡張=拡張型反転波動相場

買ったところが天井、売ったところが底となりやすい
上段:1日ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)
下段:2%以上の相場変動ライン(赤)


(出所:石原順)

相場の上げ下げがラッパ型に拡張し、振れがだんだん大きくなるこの「型」が出現すると、順張り(トレンド・フォロー)取引は通用しにくい。「拡張型反転波動」の局面で人間が普通に(フィーリングで)取引すると、買ったところが天井、売ったところが底になってしまうのだ。コンピュータ取引も同様である。ブローカーによると、順張り型のシステムトレーディングもドル/円の日足売買では苦戦しているという。

上のチャートを見て頂きたい。上段は1日の真の値幅(トゥルーレンジ)である。「拡張型反転波動」の局面では、それまで1日1円程度しか動かなかったドル/円相場が1日2円から3円の幅で動いているのがわかるだろう。この局面で買ってやられ、売ってやられといった損切りの連続が続くと、1日に動く値幅が大きいだけに壊滅的な損失を被ることになる。

では、「拡張型反転波動」相場で大きな損失を避けるにはどうしたらよいのだろうか?

これを説明するのは難しいが、ポピュラーな指標を使って1つの例をあげておこう。ストキャスティクス(パラメータ5.3.3)の80%超や20%以下の相場には乗らない(追随しないで手仕舞う)ことである。

それ以上に重要なことは、「拡張型反転波動」相場ではレバレッジを上げないことである。

ドル/円(日足) 拡張型反転波動相場 三尊天井疑惑も?

上段:2%以上の相場変動ライン(赤)・支持・抵抗線とコア・レンジ(黄)
下段:ストキャスティック5.3.3(赤)


(出所:石原順)

現在、市場ではドル/円の「三尊天井(ヘッド・アンド・ショルダー)」が話題となっている。
「ドル/円が100円を割り込むと、三尊天井のフォーメーションから90円近辺まで下落する」という観測である。その可能性がないわけではないが、きれいな三尊天井相場というものはそう簡単に実現しない。「三尊天井」パターンとなっているのは、ユーロ/ドルであろう。

ドル/円相場は<ジグザク・フラット・三角形>といった形状の保合(もちあい)日柄調整相場になるのではないかと筆者は考えている。その通りであれば、相場は上のチャートの黄色のゾーンをコア・レンジとして推移し、6月安値93円78銭を割ることはないだろう。

ユーロ/ドル(日足) 2%以上の相場変動ライン(赤)と支持・抵抗線

こちらは三尊天井パターンに見えるが、はたして…


(出所:石原順)

投機筋は17日の議会証言21日の参議院選挙に注目

投機筋の関心は7月17日・18日の「バーナンキFRB議長の議会証言」と、7月21日の「日本の参議院選挙」に向いている。このところ様子見を決め込んでいるファンドも、参議院選挙の結果を見てから、日本株やドル/円の売買を再開するという。現在、ドル/円の日足は明確な方向感を持っていない。1時間足もきれいなトレンドが出ているとは言い難い状況だ。

ドル/円(日足) 21日移動平均線の攻防

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ドル/円(1時間足)

上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13時間移動平均線(赤)・21時間移動平均線(青)・21時間ボリンジャーバンド1σ(茶) 9時間RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

「ドルは米金利が各国金利に比べて相対的に高い時期に買われる」という為替相場の黄金律に従うなら、相場の方向を決めるのは米金利の動向となる。日米の金利差がここから縮小に向うのか否か、7月17日以降の相場には特に注意が必要であろう。

米10年国債金利(日足) 米金利は当面のピークを付けたのか?

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

日本10年国債金利(日足) 官製相場で動きなし

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)