与野党一丸となり取り組まれる物価対策

 7月10日、参議院議員通常選挙が終わりました。選挙戦のさなかに政権幹部は街頭演説などでさまざまな訴えをしていました。多分、個人投資家の皆さんは今後の株式市場でどのような個別銘柄が注目されるのかという視点で「何が優先されるのか?」「どれくらいの予算が割かれるのか?」と見ていたと思います。

 自民党の茂木敏充幹事長は自民党への支持を訴えるとともに、はっきりと「物価高騰について必要な対策を講じていく」と各所で断言していました。

 今回の物価対策はガソリン代、電気料金などエネルギー価格高騰に端を発するもの、さらに食料品の値段が上がっていることと指摘した上で「政府は5.5兆円の十分な対策費・予備費を用意している。参院選のあと、必要な対策、効果的な対策をしっかりと打っていきたい」と強調しました。まず物価対策に取り組まれるのは間違いないでしょう。

 ガソリンについては、今年1月27日からレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル当たり170円を基準価格とし、それ以上に価格が上昇した分は、政府が石油元売り会社に補助金を支給していることはご存じだと思います。

 もし、補助金が無ければレギュラーガソリンは1リットル当たり、200円を軽く超えているとされています。ただそれでもガソリン価格が高いことには変わりがないため「充分ではないが最悪ではない事態」が続いていると認識されます。

 実はこの政策と類似のことが「食料品」でも示唆されています。

 6月15日、岸田文雄首相は会見で、エネルギー・食料品価格の上昇について、「ロシアのウクライナ侵攻による、有事の価格高騰」との認識を示し、その上で、輸入小麦の政府売り渡し価格について「ウクライナ情勢によって小麦の国際価格は2~3割上昇している。輸入小麦の政府売り渡し価格は10月以降、さらに輸入価格が突出して急騰している状況であれば、必要な抑制を講じ、パンや麺類の価格高騰を抑制する」としています。

 輸入小麦は政府が買い付けて製粉会社などに売り渡す形式ですが、穀物相場や為替、海上運賃といった複数の値上げ要因があります。

 首相の発言は輸入小麦の売り渡し価格について何らかの措置を講じることを強く示唆したものですが、ガソリン価格と同様の「補助金」が有力だろうと推察されます。

 石油元売り会社への補助金政策以降、石油元売り企業のENEOSホールディングス(5020)出光興産(5019)コスモエネルギーホールディングス(5021)などの株価が際立って強い動きをした経緯があり、連想が「製粉株」に働きやすい状況です。

 与野党9党首の討論会でも、一番訴えたいことの質問に対して9党首中7党首が「物価高騰から暮らしを守る」と答えています。与野党一丸となって喫緊の課題である物価対策に取り組むことがほぼ確実視されます。

物価対策関連銘柄

コード 銘柄名 株価(円)
2002 日清製粉グループ本社 1,613
2001 ニップン 1,620
2004 昭和産業 2,557
5020 ENEOSホールディングス 521.5
5019 出光興産 3,360
5021 コスモエネルギーホールディングス 3,740
※株価データは2022年7月5日終値ベース。

【製粉株】

日清製粉グループ本社(2002・プライム)

 製粉で国内シェア約4割を誇る首位企業です。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ニップン(2001・プライム)

 旧社名は日本製粉、製粉業界最古参で国内シェア2位企業です。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

昭和産業(2004・プライム)

 製粉と油脂が2本柱、双方とも大手の一角を占めています。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

【石油元売り企業】

ENEOSホールディングス(5020・プライム)

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

出光興産(5019・プライム)

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

コスモエネルギーホールディングス(5021・プライム)

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

新しい資本主義関連銘柄に目を付ける

 もちろん岸田首相が掲げる「新しい資本主義」構築への動きも加速すると見られます。5月31日に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」が発表されています。

 この「新しい資本主義」は昨年9月の自民党総裁選挙で、他の候補と政策を差別化するために生み出されたコピーのようなものであり、当初から具体策が示されていたものではありませんでした。

 その後8回に及ぶ「新しい資本主義実現会議」が開催され、案が練られてきました。その上で示されたのが目玉でもある「資産所得倍増プラン」です。

 投資による資産所得倍増を目指して、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の抜本的拡充や、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)制度の改革を進めるというもので、年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定するとしています。

 また6月7日に成長戦略を盛り込んだ「新しい資本主義」の実行計画も閣議決定されています。計画では、

  1. 人への投資
  2. 科学技術・イノベーションへの投資
  3. スタートアップ(新興企業)への投資
  4. GX(グリーントランスフォーメーション)及びDX(デジタルトランスフォーメーション)への投資

 の4本柱を中心に積極的な投資を行う方針が示されています。

 現実的にはその推移を見ていかなければならない項目や、やや抽象的なものもあり、本格的に株式市場で評価されるかどうかは、関連銘柄が動意するかどうかによると思われます。

 本年ここまでのテーマ株として理想的な動きをしたのは日本の防衛関連株の筆頭銘柄、三菱重工業(7011)でしょう。株式市場で動きが本格化する際には同株のような動きをする…とイメージした上で、それぞれのテーマに沿った銘柄を認識しておきましょう。

 主なテーマに該当する銘柄を参考として取り上げます。

新しい資本主義関連銘柄

コード 銘柄名 株価(円)
2168 パソナグループ 1,900
6200 インソース 2,374
9984 ソフトバンクグループ 5,378
8595 ジャフコ グループ 1,656
9501 東京電力ホールディングス 653
1407 ウエストホールディングス 4,285
7011 三菱重工業 4,894
※株価データは2022年7月5日終値ベース。

【人への投資銘柄】

パソナグループ(2168・プライム)

 人材派遣大手企業、中小企業などと複業人材をマッチングするプロジェクトも展開しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

インソース(6200・プライム)

 社員向け講師派遣型研修、公開講座を提供するなど人材教育を支援する企業です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

【科学技術・イノベーションへの投資銘柄】

(注)この段階では対象銘柄がはっきりしていません。

【スタートアップ(新興企業)への投資銘柄】

ソフトバンクグループ(9984・プライム)

 傘下で世界のベンチャー企業に投資を行う「ビジョンファンド」を運営しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ジャフコ グループ(8595・プライム)

 ベンチャーキャピタル(VC)専業最大手企業です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

【GX(グリーントランスフォーメーション)銘柄】

東京電力ホールディングス(9501・プライム)

 原発再稼働の動きが焦点となる銘柄です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ウエストホールディングス(1407・スタンダード)

 太陽光発電所の建設、保守を全国展開しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

【日本の防衛関連株の筆頭銘柄】

三菱重工業(7011・プライム)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)