6月のビットコインイベント

NEW! 6月7日 政府、骨太の方針に暗号資産。Web3が国家戦略に
NEW! 6月10日 米CPI予想上回る。インフレ早期ピークアウトシナリオが後退
NEW! 6月13日 テラ問題の余波でセルシウス入出金停止、Three Arrows Capitalも経営危機
NEW! 6月21日 FTXがBlockFiを救済、融資枠を設定へ

*2022年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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6月の振り返り

6月のビットコイン価格(円)とイベント

(出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成)

 6月のBTC(ビットコイン)相場は続落。

 4月から5月にかけて9週連続陰線を記録したBTCだったが、6月に入り10週連続を回避、5月12日に付けた2万5,000ドルで大底を付けたのではないかという見方も一部で流れていた。

 しかし10日の米CPI(消費者物価指数)が予想に反して前月より加速、早期のインフレ・ピークアウトシナリオが後退。50bpがコンセンサスだった6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での75bp利上げ観測が浮上し、リスクオフでNYダウ(ダウ工業株30種平均)が3万ドルを割る中、BTCは5月12日の安値2万5,000ドルを割り込んだ。

 結局、15日のFOMCで75bp利上げとなり、BTC市場は2万ドルを前で下げ止まったが、同日、スイスとイギリスが利上げに踏み切ると、市場のリスクオフの流れが強まり、BTCは2万ドルを割り込み1万7,000ドル台半ばまで急落した。

 その後、2万ドルを回復したが、上値の重い展開が続いている。

米CPI 実績と事前予想

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

 6月の、下がった要因

インフレ・ピークアウトシナリオの後退

 ここまで大きく下がった要因は米CPIが予想外に高かったからだ。しかし、CPIはヘッドラインで予想8.3%に対し8.6%と0.3%上ぶれしただけだ。その割にNYダウは3,000ドル近く、BTCは1万ドル以上値を下げている。

 どうやら市場は米インフレが早期に収まると勝手に思い込んでいた節がある、なので微妙にでも前回より上昇したことが許せなかったのだろう。この点は後程詳しく分析したい。

BTC/USDとS&P500の相関係数

(出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成)

テラ問題の余波

 暗号資産市場特有の売り材料として、5月に発生したテラ問題の余波が続いた。レンディングサービスのセルシウスが引き出しを停止、暗号資産ヘッジファンド・Three Arrows Capitalが破綻するなどテラ問題で損失を膨らませていたプロジェクトの破綻に加え、各種DeFiからの資金引き揚げなどレバレッジ解消の動きが続いた。

 取り付け騒ぎの連鎖に対するセーフティネットがないという、暗号資産市場の弱点の一つが露呈したかっこうとなったが、大手交換所FTXがレンディング大手BlockFiに与信枠を提供するなど、業界内での支援の動きも見られ、信用不安の連鎖は下火になりつつある。

 上は米株S&P500種指数とBTCとの相関係数だ。5月中ごろまでは80%を超える高い相関性を保っていたが、テラ事件以降、相関性が低下していた。しかし6月半ばから徐々に盛り返し、足元では50%を超えるレベルまで戻している。

7月見通し

半減期からピーク・ボトムまでの日数

(出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成)

6月の安値は大底だったか

 6月見通しでは「大底が近そう」として「今後数カ月の間にボトムが到来する可能性が高い」と申し上げた。さっそく6月19日には1万7,000ドル台半ばを付け、これが大底だった可能性は十分にある。

 過去2回の半減期後の大底を付けたパターンからすると、経過日数も、下落率も、大底であっても不思議はない水準だが、もう1回少し下があってもおかしくない。

 おそらくは今月か来月あたりに先月付けた1万7,000ドルをトライして、下抜ければそこが大底で、逆に抜けられずにショートカバーを起こしたら先月の底が大底となる可能性が高くなるイメージか。

オンチェーンデータで見たBTC相場の実現損益

(出典:Glassnode)

 ちなみに、オンラインデータ分析のGlassnode社の6月20日のレポートによれば、直近の3日間で73億ドルの損失が実現した。これは平均で2万ドル損失が出たと想定した場合、36万BTCの損出しが出たかっこうで、これは昨年1年間に発行されたBTCとほぼ同じ金額。売り圧力は一巡した可能性がある。

BTC大底から本格上昇までの日数(1)

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

BTC大底から本格上昇までの日数(2)

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

大底をつけてからの展開

 問題は大底を付けてからの展開だ。上図は過去2回の半減期後の大底をつけてからの相場展開だ。大底を付けていったんは反発するが、それから本格的上昇相場に至るまでしばらく時間がかかっている。

 どの時点が本格上昇とするかは微妙だが、本格上昇に至る新値を付けた日としてみると、2015年1月の底から本格反発までは288日、2018年12月の底から本格反発まで109日を要している。今回も、先月ないし今月、大底を付けたとして、本格的に上昇軌道に乗るには時間がかかりそうだ。

アノマリー

BTC相場・月別騰落一覧

(Bloombergより楽天ウォレット作成)

 最後にアノマリーを見ると、7月は今まで7勝4敗でやや上昇傾向、今まで3カ月連続で下落した9回のうち5回は3カ月で陰線が終えている。そういう意味では、若干陽線で引ける可能性の方がやや高いか。

7月見通し

 まとめると、7月のBTC相場はもう一度下値をトライ。先月の安値を更新できるか、できないかは微妙だが、いずれにせよ前回か今回あたりが大底となり若干反発。ただし、反発は限定的で、全体的には安値圏でのもみ合い推移となりそうだ。

なぜ市場はインフレを読み誤ったか

FRBの予想は当たらない

 インフレの面から見ても、BTC相場の本格上昇には半年程度はかかりそうだ。話は戻るが、市場が、インフレが早期にピークアウトすると期待し、それが裏切られた結果、リスクオフでBTC相場は2万ドルを割り込んだのだが、なぜ市場は読み誤ったのか。

 理由はいくつもありそうだが、ひとつは市場がFRB(米連邦準備制度理事会)高官の声を素直に信じるからかもしれない。ご存じの通りFRBは隔回のFOMCでインフレ見通しを発表しており、下はその予想と実績だが、ほとんど当たらない。

FOMCメンバーのインフレ予想と実績

(出典:FRBホームページより楽天ウォレット作成)

 FRBがこうした将来の予想を発表しているのは、実は予想を当てるためではなく、期待インフレ率をコントロールして金融政策の効き目を強くするためだ。高インフレ時には期待インフレを低くする方向に誘導するバイアスがかかっている。今回は、市場の目線が彼らの予想に引きずられて下げられた結果、サプライズになってしまったわけだ。

過去50年の米CPIと実質金利

(各種資料より楽天ウォレット作成)

名目金利がマイナス

 市場が見誤る二つ目の理由は、名目金利ばかり見ているからだろう。2022年の見通しでもご紹介したが、今年に入って1.75%利上げしたが、インフレ率が8.6%ということは、実質金利はマイナス7%近くあり、金融政策のインフレへの影響は拡大方向だからだ。

 厳密にいえば、この際に使用するインフレ率は期待インフレ率を使用すべきなのだが、金融市場から計算される期待インフレ率は金融緩和の影響で低すぎる。市場が実質金利に注意を払わない理由の一つは、FRBが実質金利に触れようとしないからだろう。

ミクロでマクロを説明しようとする

 インフレに対して市場が犯しがちな三つ目の誤りは、インフレの原因をコロナ禍のサプライチェーンの問題に転嫁するところだ。それはマクロの現象をミクロで説明しようとする過ちだ。

 確かに昨今、マクロをミクロで説明しようとする議論もあるにはある。ただ、ミクロの全ての要因を説明できるわけでないのに、それをしようとすると我田引水に陥(おちい)りやすい。

 サプライチェーンの問題に矮小化しなくとも、過剰流動性がインフレを引き起こしたが実質金利がマイナスだから収まらない、とマクロで簡単に説明できる。

「パウエルコール」

 結局、ジェローム・パウエルFRB議長も、インフレに対する甘い見通しを撤回、インフレ抑制を優先する方針を明らかにした。

 推測だが、FRB高官たちは、1980年代の経験から、自分たちがすでにビハインドザカーブに陥っていて、そうせざるを得ないことを認識しているが、市場にショックを与えないように明言を避けていた節がある。しかし、今回、(特に共和党からの)インフレをなんとかしろという議員の突き上げを受け、明言せざるを得なくなったものと考える。

 この結果、従来は株価が低迷すればFRBが緩和姿勢を強める「パウエルプット」なるものが指摘されていたが、今後しばらくは、株価が上昇し、市場のリスク許容度に余裕が生まれれば、FRBが引き締め姿勢を強めるといった「パウエルコール」ともいうべき状況が続きそうだ。リスクオン市場への回帰には時間がかかると思われる。

あと半年はかかりそう

 先ほどのインフレとの関係にも符合する。FRBの利上げが奏功してインフレが一服するのに足元のPCEコアデフレーターである4.7%まで利上げするには、あと約3%の利上げが必要で、今のペースの75bpずつ毎回利上げするとして年末まで要する。

 その頃になれば、FRBの利上げによりインフレ抑制の見通しが立つのか、それともインフレ抑制がままならず、FRBおよびドルへの信認が剥落するのか、見通しが立つと思われる。

 分かりやすくまとめてしまえば、市場もFRBもインフレに対する甘い見通しを改め、腹をくくったので、あと半年くらいは米株もBTC相場は低迷しそうだということだ。

 繰り返しになるが、7月のBTCは、少しは反発するが上値余地は限定的となりそうで、本格反発は年末ごろと言った感じだろうか。

2022年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

5月9日 テラUSD(UST)、ドルとのペッグが崩れ始め、テラ(LUNA)も暴落
5月12日 テラ不安がテザー(USDT)に飛び火、一時94セントに下落
5月13日 野村證券、シンガポールで暗号資産デリバティブ提供開始
5月24日 三井住友トラスト、年内に暗号資産カストディ提供
4月27日 中央アフリカ、ビットコインを法定通貨に採用
4月19日 オーストラリアで初のビットコイン・イーサリアムETFが承認
4月6~9日 Bitcoin2022がマイアミで開催。昨年はエルサルバドルのBTC法定通貨化が発表されたが、今年はやや期待外れの声も
4月4日 ウクライナへの仮想通貨で集まった寄付金、約123億円を超える
3月29日 Axie InfinityのRonin Networkで大規模ハッキング
3月22日 世界最大のヘッジファンド「Bridgewater Associates」、暗号資産ファンドに投資開始か
3月17日 FOMC、0.25%利上げ発表でビットコイン上昇
2月28日 米、ロシア中央銀行の資産を凍結。ルーブル安からBTCに逃避フロー
2月27日  米欧、ロシアをSWIFTから排除
2月25日 ウラジーミル・プーチン大統領、軍事攻撃を命令
2月20日 北京五輪閉幕
2月17日 米大統領、ロシアが数日中にウクライナ侵攻    
2月12日 **BlockFi、SECと1億ドルで和解。米国内でのレンディングサービス困難に
2月4日 北京五輪開幕。当面、軍事衝突が控えられるという見方でBTC上昇
1月20日 ロシア中銀が暗号資産の*マイニングと流通の禁止を提案

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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