NYダウに続いてドイツの株価指数DAXも史上最高値を更新した。欧州は不景気だが、カネ余りの受け皿は株か債券しかない現状だ。

独DAX(左)と米NYダウ(右)の日足 1990年~2013年

史上最高値を更新!


(出所:石原順)

株はおろか、債務危機にあるイタリアやスロベニアの国債が買われ、ギリシャ10年国債は10%を下回った。6%しかないアフリカのルワンダ国債まで人気となっているという。ジャンク債バブルも続いている。

この動きはバブル(カネ余り)相場としかいいようがない。筆者はバブルを過剰流動性の意味で使っているが、「バブル相場だからこれ以上相場は上がらない」と言っているわけではない。筆者は四半世紀にわたって相場の世界にいるが、適正価格や理論価格というのは相場の実践ではあまり役に立たないのである。

相場のトレンドは「買われすぎ(過大評価)」や「売られすぎ(過小評価)」の先に発生するものであり、今の相場の焦点は「買われすぎ相場はいつまで続くのか?」という事である。相場はバブルとその崩壊の繰り返しの運動だ。適正価格というのはその真ん中にある。

1971年の「ニクソンショック」で(ゴールド保有に比例して通貨を発行する)金本位制が崩れて以来、中央銀行は好きなだけ通貨を発行できるようになった。このシステムは歯止めがきかない。米国の経済規模の3分の1の日本が米国以上にマネーの量を増やす今回の異次元緩和は壮大な実験であるが、世界中不景気で戦争になるよりましだろう。

日本の異次元の緩和・米国のQE3・欧州の利下げ(資産購入観測も浮上)・英国の緩和観測など、世界はまさにカネ余り相場の自己強化プロセスに入っている。

NYダウやDAXの史上最高値更新と比べると、日本の株はなにより“見た目” が安い。現在、アベノミクス相場で暴騰しているが、その上げ幅は1989年の史上最高値から2008年安値までの下げ幅のまだ23.6%戻しである。目先は兎も角、長期的な相場の上昇ノリシロは大きい。

日経平均(月足) 1980年~2013年

1989年の史上最高値から2008年安値までの下げ幅のまだ23.6%戻し水準


(出所:石原順)

米国のCNNで「現在の米国株相場は1999年の相場に似ている」という相場解説をやっていたが、筆者は2003年型バブルの再来だと思っている。日本国内では1986年型という声もあるようだが、2015年10月の消費税10%までの期間は「なんでもあり」の相場となりやすい。

日経平均(月足) 黒田相場は2003~2006年の福井相場の再来!

2015年10月の消費増税まで、「なんでもあり」の相場が続く?


(出所:石原順)

株のバブルに比べると、最近の円相場の動きは緩慢である。最近、「日経平均は上がっているが、円安は進まないのか?」という照会が多いが、2012年からの相場では先行して円安が進み、株は野田解散まで出遅れていたので、先に円相場が調整していると見るべきだろう。

海外ファンド勢が引っ張っていた昨年10月から今年1月までのドル/円相場は最高のトレンド相場だった。2月以降は「ミセスワタナベ」が主役となり、相場は逆張り相場の色彩が強くなっている。

いずれにせよ、円安と株高は一蓮托生だ。ドル/円が100円を超えられず、日本株だけがどんどん上がっていくという展開は考えにくい。

日経平均(日足) 4月から相場は再び暴走中

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ドル/円(日足) 調整相場 三角保合形成中

昨年10月半ばから今年の1月までが暴走トレンド相場(緑のゾーン)
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ファンド勢は長期円安相場を想定しているが、6月までのドル/円相場の想定レンジは102円~93円程度と円高バイアスに傾いている。最近円安が進まないので、年末までの予想も105円が中央値となっている。

円安予想が「おとなしく」になっているのは、「日本(の政治家)は7月の参議院選まで100円以上の円安を望んでおらず、95~100円のレンジが良いと思っている」という観測が増えていることが底流にある。安倍政権は「円安=物価上昇批判の中で参議院選挙をやりたくない」という思惑だ。

「100円を超えても、目先102円くらいまでしか円安のノリシロがない」と想定すれば、「もっと下で買いたい」と考えるのが人情である。日本の生保などはこの典型だ。日本生命は「この水準からどんどんオープン外債を増やすかというより、押し目をみてやっていく」とコメントしている。要するに、100円水準ではなく押し目を買いたいということだ。

ソルベンシーマージン規制でがんじがらめのなか、生保のような投資家は「稟議」で動くので、オープン外債投資には大義名分(エクスキューズ)が必要だ。これには米国の経済指標が持ち直して米・日金利差が拡大するか、ドル/円相場が円高に振れる必要があろう。

米・日10年国債金利差とドル/円相場


(出所:石原順)

あとは、100円の重さである。「オプションの防戦か何かしらないが、ここまで重いと一旦利食って押し目を待つ」というファンド運用者は多い。また、ゴールド暴落で損失を出した投資家が損の穴埋めに豪ドル/円やドル/円の利食いに動いたことも、円安進行の障害となった。

黒田日銀が異次元緩和を続ける以上、大局は円安で間違いない。しかし、目先は上記のような理由で円安相場は足踏みとなっている。

ドル/円(日足)はトレンド指標(標準偏差・ADX)が調整相場を示唆しており、相場は21日ボリンジャーバンドの+1シグマ内部での往来相場となっている。他のクロス円相場も概ね同じようなチャートの形状だ。現在、日足相場は次のトレンド待ちとなっているが、投機筋はその契機としてドル/円の「三角保合放れ」に注目しているという。

ドル/円(日足) 三角保合形成中 明確に抜けるまで「ダマシ」に注意!


(出所:石原順)

豪ドル/円(左)とニュージーランド/円(右)の日足

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/円(左)とポンド/円(右)の日足

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

先週のレポートで、「ドル/円の日足相場にトレンド(方向性)がないので、現在、筆者は1時間足での短期売買をメインの取引としている。ドル/円1時間足相場の動く範囲は、概ね13時間移動平均線0.8%乖離(13時間エンベロープ0.8%)である」と書いたが、筆者は今週も1時間足相場での短期売買を継続中だ。

円相場に次のトレンドが出るまでは、13時間移動平均線0.8%乖離(13時間エンベロープ0.8%)水準での押し目買いを敢行したい。

日々の相場動向は、ブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

ドル/円(1時間足) 時間エンベロープ0.3%(ノーマル相場)・0.8%(トレンド相場)

上段:26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13時間エンベロープ0.3%(赤)・0.8%(青)


(出所:石原順)

ユーロ/円(1時間足) 時間エンベロープ0.3%(ノーマル相場)・0.8%(トレンド相場)

上段:26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13時間エンベロープ0.3%(赤)・0.8%(青)


(出所:石原順)

豪ドル/円(1時間足) 時間エンベロープ0.3%(ノーマル相場)・0.8%(トレンド相場)

上段:26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13時間エンベロープ0.3%(赤)・0.8%(青)


(出所:石原順)

ニュージーランド/円(1時間足) 時間エンベロープ0.3%(ノーマル相場)・0.8%(トレンド相場)

上段:26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13時間エンベロープ0.3%(赤)・0.8%(青)


(出所:石原順)