米景気は「ほど良い減速」?「景気後退前夜」?

 米景気の減速が鮮明になりつつあります。これが「ほど良い減速」なら、株にとって強気材料となります。インフレが鎮静化し、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融引き締めスタンスが緩和すれば、PER(株価収益率)などの株価指標で見て割安感が出始めている日米株とも急反発するでしょう。

 ただし、今の米景気が「景気後退前夜」にあるのならば、株にとって弱気材料となります。景気後退で企業業績が一段と悪化すれば、日米株とも一段安となるでしょう。

 米景気が「ほど良い減速」か、「景気後退前夜」か判断できるようなるまでに、まだかなり時間がかかりそうです。とりあえず、今月の注目材料は、これから発表される4-6月期の景気指標・企業業績の内容です。それを見ながら、判断していくことになります。

 ただし、投資は、全てがわかってから実行しても遅すぎることがあります。全てがわかる前の、不透明感が残り、株価が安いうちが買い場ということもあります。時間分散しながら、買い増ししていくことが必要です。

 もう一つ、投資の仕方があります。「逆指値(さしね)」売り注文をつけたまま、投資していく方法です。

「逆指値」売り注文とは

 一言でいうと、「想定外の株価下落に備える損切り予約」です。

「ここまで株価が下がってしまったら、さらなる下落によって損失がどんどん拡大する可能性がある」と考えられる株価水準を決め、「そこまで下がったら、自動的に売り注文が出る」ように予約しておくのが、「逆指値・売り」注文です。

 逆指値注文には、逆指値の成行売り注文と、逆指値の指値売り注文があります。私は、損切り予約として使うのは「逆指値・成行売り注文」に限るべきと思います。このレポートでは、逆指値・成行売り注文に絞って、説明します。

<逆指値・成行売り注文のイメージ図>

 米国株の例で説明します。株価150ドルの銘柄を1株保有していて、160ドルまで上昇したら利益確定売りをしようと思っているとします。その場合、160ドルに「指値売り」注文を入れることができます。それが、指値注文です。

 これに対し、逆指値は、損切りの予約です。株価150ドルの銘柄を1株保有していて、140ドルまで下がったら損切り売りをしようと思っているとき、140ドルに「逆指値・成行売り」注文を入れておくことができます。米国株の逆指値注文は、iSPEED、または、楽天証券のスマホまたはPCウェブページからログインして出すことができます。

「億り人」は損切り達人

 株のトレーディングなどで、1億円以上の金融資産をつくった人を「億り人」と呼びます。億り人の成功談には、「これこれを買ったら株価10倍に」のような話がたくさん出てきます。

 ただし、どんな投資の達人でも、選ぶ銘柄で100発100中はあり得ません。たくさんの銘柄をトレードしているうちに、買った後、そのまま持っていたら株価が半値になってしまう銘柄も多数あるはずです。

 そういう失敗銘柄を、暴落初期にすばやく損切りできないと、億り人にはなれません。「保有し続けていたら半値になっていた銘柄を、暴落初日に10%の下げで損切りした」というような「損切り成功談」が、億り人にはたくさんあるはずです。

 一般の個人投資家が、機関投資家やデイ・トレーダーに対して不利な点は、「日中、常に相場を見ていることができない」ことです。投資銘柄に想定外の悪材料が出て急落する時、大きな損失を抱える前にすばやく損切りすることは、長期のパフォーマンス向上にとても大切です。

 ところが、個人投資家の場合、家事・育児に忙しかったり、会社で仕事中だったりして株価を見ていないうちに大きく下がってしまうことがあります。

 そうならないように、値動きの荒いテーマ株に投資する場合は、逆指値・成行売り注文を入れておくべきと思います。

逆指値の成行売り注文を、しっかり使いこなす

 逆指値注文には、売り注文も、買い注文もあります。意味を説明すると、以下の通りです。

◆「逆指値売り注文」:指定した価格まで、株価が下がった時、出される売り注文
◆「逆指値買い注文」:指定した価格まで、株価が上がった時、出される買い注文

 株式投資の初心者の方は、逆指値の成行売り注文だけ覚えて、使っていただければOKです。逆指値買い注文は、信用取引で信用売りしたときなどに使うくらいで、通常の取引で使うことはほとんどありません。

 それでは、具体例で説明します。以下のように株価が150ドルでついている時、160ドルで指値売り注文を出すことができます。また、140ドルで逆指値の成行売り注文を入れることもできます。

<指値売りと逆指値売り>

 A社株が、160ドルまで上昇し、あなたが入れた指値売り注文にヒットすれば、160ドルで利益確定売りが成立します。一方、A社株が下落し、140ドルをつけた時は、損失確定の成行売り注文が出されます。

 その時点で、140ドルに指値の買い注文が残っていれば、140ドルでの損切りが成立します。140ドル買い指値がなくなっている場合は、それより下の、一番高い価格に入っている買い指値にヒットして、売ることになります。

 逆指値の成行売り注文を入れておけば、きっちり損切りできます。株価をずっと見ていると、いろいろ迷って損切りできなくなる人も、損切りできるのがメリットです。

 なお、以下の説明もご参照ください。
【米国株】逆指値注文の仕組み

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