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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
米国株・日本株、どうなる?米「ほど良い減速」?「景気後退前夜」?

先週の米・日株は、米景気後退の不安から下落

 先週(6月27日~7月1日)の日経平均株価は、1週間で556円(2.1%)下がって、2万5,935円となりました。米景気が悪化する不安から、米国株が下落し、日本株にも売りが波及しました。

先週の日米株価指数の騰落率:2022年6月27日~7月1日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 先々週(6月20~24日)とは、正反対の動きとなりました。先々週は、米景気が「ほど良い減速」となる期待から、米国株が反発し、日本株も買われました。

先々週の日米株価指数の騰落率:2022年6月20~24日

出所:QUICKより作成

 先々週の米国株は大きく上昇し、先週は下落しました。同じ材料に異なる反応となりました。

米国主要株価指数(ナスダック・S&P500・NYダウ)の動き:2019年末~2022年7月1日

出所:QUICKより作成。2019年末を100として指数化

 好調だった米景気も、高インフレ・金利上昇の影響を受けて、急速に減速する可能性が高まりました。先々週は、「ほど良い減速」になる期待から株が反発、先週は「失速、景気後退のリスク」が意識されて、株が下がりました。

 米景気減速の不安が米国株に二つの影響を及ぼしています。

【1】プラスの効果

 景気減速からインフレがピークアウトし、金融引き締めピッチが緩む期待が少し出ています。

【2】マイナスの効果

 景気悪化によって、企業業績も悪化に向かい、米国株が一段安になる不安も出ています。

 最近の米国株は、上の【1】プラス効果と【2】マイナス効果の二つの間で、揺れ動いています。先々週はプラスに反応、先週はマイナスに反応した形です。

 上昇が続いてきた米国長期(10年)金利も、足元、景気悪化の不安が出たことから、低下しています。

米長期(10年)金利の動き:2020年1月2日~2022年7月1日

出所:QUICKより作成

 日本株は、円安・リオープン(経済再開)への期待から、今年は米国株が下がっても、あまり下がらなくなっていました。ただし、足元、米景気悪化の不安もあることから、米国株に連動して下がるようになっています。

 米景気が「ほど良い減速」なのか「失速、景気悪化」なのかで、日本株の動きも決まっています。

ナスダック・日経平均の動き比較:2019年末~2022年7月1日

出所:QUICKより作成。2019年末を100として指数化

世界景気悪化がなければ、米国株も日本株も割安

 今後の米国株・日本株の見通しを考える上で重要なのは、米国景気の先行きです。米景気が急速に悪化する気配があります。「ほど良い減速」ですむか、「景気後退に向かう」のか、当分、結論は出ないと思います。米国株は、この二つの見方のはざまで揺れ動くことになるでしょう。

 米景気が今、景気拡大「過熱期」に入っているのは明らかです。

景気・金利・株価の相関関係

出所:筆者作成

 ここから、景気が「ほど良く減速」して「景気拡大・中期」に戻っていくか、あるいは、「景気後退期」に進むかが判断の分かれ目です。

 私は、メイン・シナリオで、今年、米景気は減速するものの、景気後退には至らないと予想しています。米景気・世界景気の後退がなければ、米国株も日本株も、すでにPER(株価収益率)で割安と判断できるところまで売り込まれています。

 米国株全体をもっとも良くあらわすS&P500種指数で予想PERは約16.4倍まで、日本株全体を代表すると考える東証プライムで予想PERは約13.3倍まで低下しているからです。メイン・シナリオでは、米国株・日本株ともに今後割安さが見直されて反発していくと予想されます。

 ただし、景気判断は水物、私の判断が間違えている可能性もあります。米景気が、リーマンショックの時のようにこれから「あれよあれよという間に急激に悪化する」リスクも考えなければなりません。しばらく、米景気の動きをしっかり見ていく必要があります。もし、米景気がここから後退期に至るならば、米・日株ともに、ここからさらに一段安となるリスクもあります。

 結論は毎回述べていることと同じです。メイン・シナリオと、リスク・シナリオの両方を考慮しつつ、時間分散しながら米国株・日本株を買い増していくことが、長期の資産形成に寄与すると判断しています。

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