超円高修正の目安はどこか? 年初のレポートやセミナーで「60カ月移動平均線乖離(エンベロープ)」を取り上げてきた。ドル/円相場が60カ月移動平均線の-10%乖離水準以下でずっと推移していた1993年~1995年、および2008年~2012年は円が実力以上に買われていた期間である。
「2013年のドル/円相場は、60カ月移動平均線の±10%乖離の水準をコアレンジとして推移するだろう。60カ月移動平均線の-10%乖離の外側という超円高相場から、60カ月移動平均線の±10%乖離の内側であるノーマル相場に戻るというのが筆者の相場観である」と述べてきたが、相場は60カ月移動平均線の88円水準を上回り、3月12日には高値96円71銭を示現した。これは60カ月移動平均線の+10%乖離の97円に近いレベルである。
ドル/円(月足)と60カ月移動平均線乖離(エンベロープ)
10%乖離(緑)・20%乖離(青)・30%乖離(紫)
2013年のドル/円の高値目標として100円~105円をみているファンドは多い。しかし、ドル/円が60カ月移動平均線の-10%乖離から+10%乖離まで上昇したことで、ヘッジファンドの一部にはいったん目標達成感が出ているという。
彼らは5月決算を控えており、もともと「45日ルール」の4月の半ばあたりまでにポジションを手仕舞いたいという事情がある。一部のファンドはイタリアやキプロスに端を発する欧州の混乱を嫌気して、イースター休暇前に利食いに動いているという。
ドル/円を手掛けるファンドの多くが1995年と2013年の相場パターンについて分析している。あるファンドの調査部門は「20%以上上昇した後の相場の上昇ペースは、穏やかになるのが普通である。大きな円安トレンドが転換するとは思わないが、円安のピッチはしばらく緩慢ならざるを得ない」とし、「超円高修正第1弾は概ね終った。今後、良い円安はジリジリとしか進まない。我々の穏やかな円安予想が外れるとしたら、それは悪い円安が到来した時である」と語っている。
ドル/円(日足)のアナログチャート(2013年3月28日現在)
2013年相場は1995年相場との類似性がみられる
2012年9月からの上昇相場と95年4月からの上昇相場の比較(95年は4/18、2012年は9/13が起点・横軸は起点日からの経過日数)
ドル/円相場の日足は概ね200日移動平均線の±10%乖離の内部での運動である。1971年の変動相場以降、「円安局面」でこれを大きく逸脱したのは1979年~1980年のボルカー・ショック相場、1995年の協調介入相場、1998年の円安5波動目の暴走相場、2013年のアベノミクス相場の4回しかない。
1995年の時も、200日移動平均線の+10%乖離逸脱後の相場はしばらくレンジ調整相場に移行しており、2013年のドル/円相場(200日移動平均線の+10%乖離は3月28日現在、92円付近)も今後「日柄か値幅」での調整相場を余儀なくされるかも知れない。
ドル/円(日足) 200日移動平均線(赤)と±10%乖離(緑)
1995年パターンと同じくしばらく値固め相場か?
ドル/円相場の日足は、トレンド指標(ADX・標準偏差)が方向性を失い21日移動平均線を割り込んだことで、短期的に「しこった」との感触が強くなっている。また、ドル/円週足はトレンド指標にピークアウト感が出ており、相場は21週ボリンジャーバンドの+1シグマを割り込んできている。今週末の終値で相場が21週ボリンジャーバンドの+1シグマを割り込んだままなら、円安トレンド相場からニュートラル(中立)な相場に移行する可能性が高まる。この攻防はまさにドル/円相場の正念場と言えよう。
ドル/円(日足) 21日移動平均線を割り込む
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)
ドル/円(週足) 21週ボリンジャーバンド+1シグマを割り込み、トレンド指標にもピークアウト(天井)感が漂っている
上段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21週ボリンジャーバンド1シグマ(緑)
ここからはイースター休暇で米国が3連休、英・豪は4連休という日程になる。96円70銭~95円辺りの円売りポジションがしこった格好となっており、目先、流動性が落ちて板が薄くなったところを、投機筋がストップロス・ハンティング(93円50銭~93円)を仕掛ける可能性が囁かれている。
ドル/円(日足) 支持・抵抗線
移動平均リボン(黄色の帯)=1~3カ月の市場参加者のコスト
13日移動平均線±3%乖離
ドル/円は日足も週足も円高トレンドが発生しているわけではない。昨日、某外銀が実施した顧客ヒアリングによると、ドル/円の4月末の予想は95円~100円が最も多く、90円以下の円高を予想している顧客はほとんどいないという。
しかし、4月4日の日銀金融決定会合や4月5日の米雇用統計辺りまでは、頭の重い相場展開となりそうだ。この懸念を払拭するには、とりあえず短期的な壁となっている95円を上抜く必要があろう。
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