1月4週以降の円相場は「26日標準偏差ボラティリティ」と「14日ADX」が下落している通貨ペアが多く、ランダム(無秩序)な動きとなっている。標準偏差ボラティリティがピークアウト(天井をつけ下落)すると、トレンド期とはやや逆方向にバイアスがかかった「レンジ内での乱高下相場」となりやすい。

豪ドル・カナダ・ポンド・南アランド・ニュージーランドドルの対円相場は、概ねこの通りの動きである。ドル/円は「ラッパ型」の変則的な調整乱高下相場となっている。ユーロ/円のみ「ユーロ買い」トレンド相場となっているが、トレンド指標の波形はやや曖昧(あいまい)だ。いずれにせよ、14日ADXや26日標準偏差ボラティリティが下落中の相場は、ランダム・ウォークである。

先週のレポートで、「この先は日々の材料をこなしながら、日柄調整の相場となるだろう。これまでの円は売りっぱなしでよいという相場から、ドタバタやるトレーディングベースの相場に移行したという認識である」と述べたが、日足ベースの相場は「次のトレンド」が発生するまで、売買錯綜するトレーディングベースの相場が続くだろう。

ドル/円(日足) やや変則的な調整相場だが、トレンド指標が上昇するまでは不安定な相場が続く

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足) 利下げ観測と2月5日RBA(据え置きだとおもわれるが…)が重石

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

カナダ/円(日足) 「利上げ」観測の後退から足踏み…

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

南アランド/円(日足) 格下げやアフリカ大陸の政治不安を受けて軟調

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ポンド/円(日足) ポンド/ドルの売りトレンド相場の影響で軟調推移

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ニュージーランド/円(日足) 安定的なトレンド相場が続いてきたが失速気味

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/円(日足) アンダーウエイトの反動相場か? ドラギ発言以降、ユーロへの資金回帰が続いている

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

上記のチャートを見ればわかるように、円相場は「調整相場」を継続している。この局面の円相場は「やや難易度が高い」ので、アクティブな投機筋はトレンドが発生している「ユーロ」や「ポンド」の方に軸足を移している。これが今の相場である。

「ユーロはさしたる買い材料もないのに、何故上がっているのですか?」という照会が多い。これは常識的な意見であろう。しかし、世の中には「買わざるを得ない」という人達が存在するのである。ユーロ資産をユーロ危機で売りすぎてしまった(アンダーウエイト)年金やファンドは、テール・リスクの後退でユーロ圏に資金を戻さなくてはならなくなっているのである。

「パッシブ運用」という「インデックスをベンチマークにしている」ファンドは、アンダーウエイトの修正を迫られている。ECBドラギ総裁の「年後半の景気回復発言」を契機にこの動きが加速している。今、世界中で起きている「債券売り・株買い」の動きも、株式をアンダーウエイトしすぎた(欧州危機で株を売って債券を買いすぎた)反動である。世界的なカネ余りもあって、債券バブルはまだ崩壊していない。しかし、米国では昨年までの「株式投信から資金が抜けて債券投信に資金が入る」という動きの「逆流」が、今年の1月から加速していると聞いている。この動きはまだ始まったばかりだ。

ユーロ/ドル(日足) アンダーウエイトの反動相場で予想以上の上昇に

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/豪ドル(日足) 動きが速いので、通貨ファンドはこの通貨ペアが好き

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ポンド/ドル(日足) 1950年以来のトリプルディップ(景気の三番底)観測で売られる

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ドル円(日足)の上昇はいったん小休止となっているが、今週の相場でドル/円(月足)は1982年からの3点を結んだ長期抵抗線を上抜いてきた。昨年1月に2007年からの長期抵抗線を上抜いた時と同じく、相場の底流では大きな円安転換が起きていると見てよいだろう。超円高バブルの崩壊である。一本調子の上げはないだろうが、月足ベースでみると95円が視野に入ってきた。

今月、為替ディーラーの集まりがあった。「往年の為替ディーラー」の多くが、「昨年(2012年9月)からのドル/円の上昇相場は1995年の相場と似ている」と語っている。筆者もそんな気がしているのだが…。

ドル/円(月足) 1982年からの長期抵抗線を上抜く!


(出所:石原順)

ドル/円(月足) 1982年からの長期抵抗線を上抜く(拡大チャート)


(出所:石原順)

ドル/円(日足)の相似律 2012年9月からの上昇相場と95年4月からの上昇相場の比較(95年は4/18、2012年は9/13が起点・横軸は起点日からの経過日数)


(出所:石原順)