週末に7月相場入りを迎えた先週の株式市場ですが、先週末1日(金)の日経平均株価終値は2万5,935円となりました。節目の2万6,000円を下回ったほか、週足ベースでは下落に転じ、前週末終値(2万6,491円)からの下げ幅は556円でした。

図1 日経平均(日足)とMACD (2022年7月1日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均を振り返ると、「前半は上昇・後半に失速」という展開でした。

 週初27日(月)の取引では、いわゆる「窓」開けで上昇して75日移動平均線を回復し、翌28日(火)も続伸して終値ベースで2万7,000円台を回復しました。さらに、この日のローソク足は、75日と25日の2本の移動平均線をまたぐ、「2本上抜け」と呼ばれる形で、上方向への期待を強める格好となりました。

 しかし、実際のところはこうした期待が覆されることになり、週末にかけて失速、2万6,000円台割れまで下落し、3月9日と5月12日の安値を結んだ下値ラインをも下抜けてしまいました。下段のMACDの線の傾きも下方向へと転じています。

 とはいえ、以前のレポートでも紹介した「上昇フラッグ(旗)」の旗にあたる線(水色のライン)の上限で何とか踏みとどまっているほか、その後の米国株市場が上昇したことに伴い、日経225先物取引の終値が大取(大阪取引所)で2万6,320円、シカゴCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で2万6,310円と反発しているため、今週の日経平均はこのまま下げ幅を広げていくというよりは、いったん落ち着きを見せるスタートが想定されます。

 そして次の焦点になるのは、その後に探っていく株価の方向感になるわけですが、先ほども述べたように、先週は上方向への期待が強まる兆候が出現しながらも報われなかったことで、相場のムードとしては上値への意欲に対して慎重になっているかもしれないことを認識しておくと同時に、先週末の米株市場の強さについても確認する必要がありそうです。

先週の米国市場と今週の見通し

図2 米NYダウ(日足)とMACD (2022年7月1日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末1日(金)のNYダウ(ダウ工業株30種平均)は前日比322ドル高の3万1,097ドルで取引を終えました。ちょうど前週末も前日比で大きく上昇して3万1,000ドル台を回復させており、似たようなパターンが2週続いたことになります。

 また、週間の値動きをたどってみても、28日(火)の取引時間中に25日移動平均線を超える場面がありましたが、積極的に戻りを試すような値動きではなく、3万1,000ドル台の攻防の中、5月20日の安値(3万635ドル)あたりで買いが入っている様子がうかがえます。下段のMACDは上向きを維持してはいるものの、株価の戻りの勢いについては強さがあまり感じられません。

 もっとも、ポジティブに解釈するのであれば、足元のNYダウは3万ドル台割れとなった6月17日の安値まで下げておらず、底打ちを探りつつ、株価上昇の機会を待っている状況と考えることもできそうです。

 ただし、先週末1日(金)の株価上昇については、連休(4日(月)の米国株市場は休場)を前にした需給的な要因(リスク回避の債券買いで長期金利が低下、株式の売りポジションの手じまい買いなど)が寄与した可能性があることや、足元の相場地合いが、インフレの動向やそれに伴う国内外の金融政策への思惑、そして景気への影響という「三つどもえ」の構図であることに変わりがないこと、そして、重要なイベント(米雇用統計や米消費者物価指数、企業決算など)がこれから控えていることなどを踏まえると、現時点で株価の底打ちを判断するのは早計かもしれません。

 実際に、中長期的な視点で見たNYダウは下落トレンドから脱しきれていません。

図3 NYダウ(週足)のボリンジャーバンド (2022年7月1日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3は、前回のレポートでも紹介した、NYダウの週足チャートにボリンジャーバンドとギャン・アングルを重ね、下段にMACDを表示させたものですが、前回と状況はほとんど変わっていません。

 ボリンジャーバンドではマイナス1σとマイナス2σのあいだを往来しながら下方向へ推移する「バンド・ウォーク」が続いていることや、2020年3月27日週の安値と2021年11月26日週の高値のトレンドを起点に描いたギャン・アングルでも、「3×1ライン」あたりの攻防が意識されていること、下段のMACDも下向きを続けているなど、下落トレンドからの反転サインはまだ出現していません。

 もちろん、直近の最安値、日経平均ならば3月9日の2万4,681円、NYダウならば6月17日の2万9,653ドルが大底となる可能性は残されていますが、そのためには、これから迎える重要イベントを通過する中で、

(1)インフレが早期に落ち着きそう
(2)景気が「後退」ではなく「減速」で済みそう
(3)企業業績の落ち込みも限定的になりそう

といったことを見極めることが条件になりそうです。

 したがって、今週は「重要イベントを前にした様子見が優勢」というのが基本シナリオになりそうですが、実は、需給要因による「隠れ乱気流」が潜んでいることにも注意しておく必要があります。

 具体的には、週末の8日(金)が、オプション・mini先物SQ日であること、そしてこの日はETF(上場投資信託)の決算が集中していることの2点です。とりわけ後者については、分配金を捻出するために1兆円規模の売りが出てくるのではという観測が一部で出ています。

 特に先週あたりから、企業決算や新型コロナ感染状況、猛暑、参院選など、国内の材料キーワードを手掛かりに物色される動きが目立ち始めているだけに、需給の思惑とタイミングが重なってしまうと、値動きが思ったよりも大きくなってしまうことには要警戒かもしれません。

 そこで、荒っぽい相場展開を意識しつつ、目先の日経平均の想定レンジについても見ていきます。

来週の日経平均見通し

図4 日経平均(日足)の移動平均線乖離率(25日)のボリンジャーバンド(2022年7月1日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末1日(金)時点の25日移動平均線乖離(かいり)率はマイナス3.75%でした(ピンク色の線)。

 この乖離率の推移を過去にさかのぼると、おおむねプラスマイナス5%の範囲に収まっていますので、1日(金)時点の25日移動平均線の値(2万6,946円)で計算すると、2万5,598~2万8,293円の範囲が目先の想定レンジとなり、その範囲内にあるプラスマイナス1σやMAなどの値が細かい値動きの目安になりそうです。

 そして、最後に今後の相場の方向性についても考えていきます。

図5 日経平均(週足)の動き(2022年7月1日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図5は日経平均の週足チャートに、ギャン・アングルなどいろいろと重ねたものになります。

 かなり読み取りにくい図になってしまいましたが、ポイントを整理すると、

(1)3本の移動平均線(13週、26週、52週)が全て下向きとなっている
(2)チャートの形状は「ダブル・トップ」の天井を形成し、その後の日経平均は52週移動平均線が抵抗となる「リターン・ムーブ」が繰り返されている
(3)直近の日経平均は2万6,000円割れで買いが入っているが、チャートを過去にさかのぼると、2万4,000~2万6,000円の価格帯は売買が少ない「空白地帯」となっている
(4)足元の値動きは下向きのギャン・アングル(ピンク色)の「2×1」ラインと「3×1」ラインの間で推移、株価の底打ちを確認するには、「4×1」ラインを目指す動きが必要
(5)上向きのギャン・アングル(水色)で見ると、足元の日経平均は「2×1」ラインと「3×1」ラインのはざまに位置している。今後の日経平均がどちらに向かうのかは2万6,000円台の攻防の勝敗に左右される

などが挙げられます。

 以上を整理すると、全体的には下方向への意識が優勢かなという印象ですが、それでも中長期的なシナリオを絞り込むのは困難と言えます。常に複数のシナリオを想定しつつ、状況の変化に合わせて比較的短期間で対応する必要があり、じっくりと取引したい投資家にとっては動きづらい局面がしばらく続いてしまいそうです。