米国の株式市場は世界最大の時価総額を持ち、建国当初から株価は右肩上がりの成長を続けています。その理由の一つとして、常に企業の新陳代謝が起こり、時代ごとに革新的な企業を生み出しています。

 米国株式の代表的な株式指数は、鉄道・公共事業以外の工業株30銘柄で構成される「NYダウ平均株価」、NASDAQ(ナスダック)に上場している全銘柄を対象とした「ナスダック総合株価指数」、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQに上場している大型株500銘柄を対象とした「S&P500種指数」があります。

 これらに採用されている企業は長期間にわたり利益を出し続け、株価も上昇し、配当を増配し続けている銘柄も珍しくはありません。

 そこで2022年7月権利落ちの米国株高配当5銘柄について解説します(株価、配当利回りなどのデータは2022年6月14日現在、為替は1ドル=134円で計算)。

 その前に、日本と米国の高配当銘柄への投資で、特に重要な3つの違いについて、お伝えします。

(1)米国株の配当金は、通常米国で10%、日本で20.315%の2段階、約30%の課税がされます。しかし確定申告で還付を受けることにより、日本株と同じように20.315%の税率と同じになります。ただし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で購入した場合は、日本での利益・配当金はもともと非課税のため、還付を受けることはできません。この場合は米国で10%の課税のみとなります。

※米国に上場していても米国籍企業以外の場合、配当金にかかる源泉税率は日本との租税条約によって異なり10%ではありません。

(2)米国株は日本株と異なり、権利落ち日が月末に集中していません。そのため、銘柄ごとに権利落ち日を確認する必要がありますので注意が必要です。

(3)米国株は日本円で買う円貨決済と、米ドルで買う外貨決済を選べます。日本円から外貨に替える為替手数料も積もれば大きな金額になるので、米国株を買い続けるなら売却時にも外貨決済で米ドルにしなければ無駄に手数料を支払うことになります。

米国高配当株1:ドネガル・グループ(DGICA)

 傘下の複数の子会社を通じて、損害保険の提供をしています。

 ドネガル・グループの株式はクラスA・クラスBに分かれており、それぞれNASDAQ Global Select Marketで取引されております。

 また、ドネガル・グループは保険業界に特化した世界最大の信用格付機関であるAM Bestより、上位のExcellentの評価を得ており、そういった信用を背景に企業向けおよび個人向けに損害保険を提供しています。

 時価総額は5億ドルで、日本円で約675億円となっています(USD=134円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「大型企業保険部門事業(Commercial lines)」で、続いて「家計保険事業(Personal lines)」となります。

「大型企業保険部門事業」では、企業向けに保険を提供しており、自動車保険・対物賠償保険・労働者災害補償保険などを提供し、「家計保険事業」では自家用自動車保険・火災、地震、台風などに対応した住宅保険を提供しています。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値近辺で推移しています。また、配当は4月に増配を発表しています。

 火災による損失が前年同期に比べて減ったことや、保険料収入が増加したことで業績が改善し、それに伴い株価が上昇しました。

 今後も新たな保険商品の導入を図る一方で、インフレに伴う保険金の増加が予想される商品の新規契約を減らすなどの対応を引き続き行っていく方向であり、株価の安定した値動きが期待されます。

業績動向

 2022年4月28日開示の四半期決算では、売上は市場予想を下回ったものの、1株利益は市場予想を上回りました。

 事業の中心である「大型企業保険部門事業」で保険料収入が伸びたことや、保険料の増加によって、1株利益は大きく市場予想を上回りました。

 今後も収益は拡大していく見通しであると会社側も発表しており、堅調な業績が期待されます。

 次回2022年8月1日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 どこの企業でもインフレへの対応を迫られており、ドネガル・グループでも事業を展開する州ごとに投入商品を変えるなどさまざまな試みを行っていますが、今後の対応次第で業績への悪影響を及ぼす可能性があり注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:0.66ドル
配当利回り:4.11%
株価:16.04ドル(約2,100円)

 この銘柄、権利落ち日は7月下旬予定(権利実施は8月中旬予定)です。

 配当利回りは6月14日時点で4.11%、株価は16.04ドルでおよそ2,100円から購入できます(1USD=134円計算)。

 2019年からの最高値は16.47ドル、最安値は11.60ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株2:メイン・ストリート・キャピタル(MAIN)

 年間売上高1,000万ドルから1億5,000万ドルの間で構成されるローワーミドルマーケットの企業および、ミドルマーケットに属する企業に対しマネジメント・バイアウト、資本増強、成長資金調達、リファイナンスなどのワンストップのキャピタルソリューションを提供しています。

 時価総額は25億7,000万ドルで、日本円で約3,400億円となっています(USD=134円換算)。

事業の注目ポイント

 事業は「ミドルマーケット事業(LMM business)」の単一事業となります。

「ミドルマーケット事業」の主な収入が、「金利収入(Interest income)」で、続いて「配当収入(Dividend income)」、「手数料収入(Fee income)」となります。

「金利収入」では、投資先からの貸付金や債権による利息収入を中心とし、「配当収入」は投資先企業の配当を中心とし、「手数料収入」はストラクチャリングやアドバイザリーなどのサービスを定期的に提供することによる手数料収入を中心としています。

競合他社

 主に米国およびミドルマーケット企業への融資を通じた収益を生み出す非分散型クローズドエンド投資会社であるTCG BDC(CGBD)、各種金融資産にわたる消費者および不動産所有者へ債務回収ソリューションを提供する専門金融企業であるアンコール・キャピタル・グループ(ECPG)などが見受けられます。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値まで戻っていませんが、配当は今年に入って増配しています。

 昨年株価は、投資先企業の好調な業績を背景に大きく上昇しました。

 今年に入ってからは、マーケット全体の下落を受けメイン・ストリート・キャピタルの株価も下落していますが、それでも好調な業績から増配をしており、今後も堅調な業績とそれに伴う増配が期待されます。

業績動向

 2022年5月6日開示の四半期決算では、1株利益は市場予想を上回りましたが、売上は市場予想を下回りました。1株利益・売上ともに前年同期比の水準を大きく上回っており業績は好調に推移しています。

 ローワーミドルマーケット市場およびプライベートローンへの投資を今後も継続的に行っていく計画であり、これからも堅調な業績が期待されます。

 次回は2022年8月4日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 インフレに伴う投資先の業績悪化の懸念があり、それに伴いメイン・ストリート・キャピタルの業績が悪化する可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:2.58ドル(毎月配当)
配当利回り:7.33%
株価:35.19ドル(約4,700円)

 この銘柄、権利落ち日は7月1日(権利実施は7月15日)です。

 配当利回りは6月14日時点で7.33%、株価は35.19ドルでおよそ4,700円から購入できます(1USD=134円計算)。

 2019年からの最高値は46.61ドル、最安値は15.74ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株3:エジソン・インターナショナル(EIX)

 傘下に、米国大手電力会社の1つである「Southern California Edison(SCE)」や、グローバルエネルギーアドバイザリー企業である「Edison Energy」を抱える持株会社です。

「Southern California Edison(SCE)」はカリフォルニア州を中心に100年以上にわたり電力を供給し続け、「Edison Energy」はコスト削減やエネルギー効率化、再生可能エネルギー導入アドバイスなどの事業を展開しています。

 時価総額は238億ドルで、日本円で約3兆2,000億円となっています(USD=134円換算)。

事業の注目ポイント

 事業は子会社である「米国サザンカリフォルニアエジソン社(Southern California Edison Company)」の単一事業となります。

「米国サザンカリフォルニアエジソン社」では、所有する140万本の電柱および、約19万㎞にわたる配電線・バルク送電線を用いて、カリフォルニア州中部、沿岸部、南部で電力供給を行っており、上場している電力会社の中では最も低いシステム平均料金でサービスを提供しています。

競合他社

 競合他社として、エネルギー関連の製品とサービスを提供する持株会社であるコンソリデーテッド・エジソン(ED)、全国のエネルギー関連事業およびサービスの開発と管理に注力するDTEエナジー(DTE)、完全所有の子会社を通じて、規制対象の天然ガスと電力、再生可能エネルギー、および規制対象外の再生可能エネルギーを提供または投資するWECエナジー(WEC)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値近辺で推移しており、配当は18年連続で増配しています。コロナ発生以降株価は下落したものの、その後の経済の回復とともに徐々に株価は回復してきました。

 懸念だった山火事軽減の取り組みをしてきたことで、山火事が業績に与えるリスクはかなり減らせていると会社側も見ており、カリフォルニア州の経済活動回復とともに株価の回復が期待されます。

業績動向

 2022年5月3日開示の四半期決算では、1株利益・売上高いずれも市場予想を上回りました。

 また、1株利益・売上高ともに前年同期比を上回っており、今後は山火事による業績への影響が減っていくと予測すると、堅調な業績が続くことが予想されます。

 次回2022年7月28日に開示予定の四半期決算において、市場予想を上回ることができるか注目です。

注意点

 どの企業でも同じですが、クリーンエネルギーや、インフレへの対応などそれらが業績に影響を及ぼす可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:2.80ドル
配当利回り:4.48%
株価:62.375ドル(約8,400円)

 この銘柄、権利落ち日は7月上旬予定(権利実施は7月下旬予定)です。配当利回りは6月14日時点で4.48%、株価は62.375ドルでおよそ8,400円から購入できます(1USD=134円計算)。

 2019年からの最高値は78.20ドル、最安値は44.47ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株4:ピナクル・ウエスト・キャピタル(PNW)

 子会社のアリゾナ・パブリック・サービスを通じて、電気事業を展開しています。

 米国最大の原子力発電所であるパロベルデ原子力発電所を所有し、カーボンフリーの電気を生産することでESG重視の姿勢を企業として打ち出しています。

 時価総額は81億ドルで、日本円で1兆1,000億円となっています(USD=134円換算)。

事業の注目ポイント

 事業は「電力管理事業(regulated electricity)」の単一事業となります。

「電力管理事業」では、発電、送電、配電の各事業が含まれており、それらの事業はアリゾナ・パブリック・サービスを通じて事業展開しています。

 2050年までに100%クリーンでカーボンフリーな電力を提供することを目標としており、今後もESG投資を目的とした資金流入が期待されます。

競合他社

 競合他社として、消費者サービス企業であり、米国およびカナダ全土でエネルギーおよび関連製品・サービスの生産・販売に従事するNRGエナジー(NRG)、発電、送配電サービスを提供するエネルギー会社であるエヴァジー(EVRG)、子会社とともに、主に電力の送電・配電・発電に携わるファーストエナジー(FE)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値まで戻っていませんが、配当は昨年より増配しています。

 コロナの影響で一時的に株価は下落したものの、その後は上下を繰り返しながら横ばいで推移しています。

 2024年には、クリーン発電への投資を2021年比で2倍以上に増やしCO2排出を減らすことが計画されており、ESGマネーを呼びこみつつ、米国で最も成長している州のひとつであるアリゾナ州の地盤を生かすことで、今後も堅調な株価の推移が期待されます。

業績動向

 2022年5月4日開示の四半期決算では1株利益・売上高ともに市場予想を上回りました。

 傘下のアリゾナ・パブリック・サービスが運営するフォーコーナーズ発電所を廃止する計画を打ち出したことで、会計上1株利益が前年同期に比べて減少しているものの、決算を受けての株価への影響はほとんどありませんでした。

 今後はパロベルデ原子力発電所を中心としたカーボンフリーエネルギーを発電のメインとしていくことで、ESGに対応していくとともに新たな顧客開拓をすすめることで業績の拡大が期待されます。

 次回2022年8月4日に開示予定の四半期決算において、市場予想を上回ることができるか注目です。

注意点

 天候要因による電力小売販売量の増加を見込んでいますが、一方で最近の異常気象によりアリゾナ州でも異常気象を観測するなどしており、天候要因がマイナスに作用する可能性がある点にも注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:3.4ドル
配当利回り:4.76%
株価:71.28ドル(約9,500円)

 この銘柄、権利落ち日は7月下旬の予定(権利実施は9月上旬予定)です。配当利回りは6月14日時点で4.76%、株価は71.28ドルでおよそ9,500円から購入できます(1USD=134円計算)。

 2019年からの最高値は103.60ドル、最安値は62.91ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株5:シティグループ(C)

 世界160以上の国と地域に約2億の顧客口座を有する世界有数のグローバルな銀行です。

 個人向け銀行業務、クレジットカード、法人・投資銀行業務、証券業務、トランザクション・サービス、資産管理など、幅広い金融商品とサービスを提供しています。

 時価総額は890億ドルで、日本円で約11兆9,000億円となっています(USD=134円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「機関投資家事業(Institutional Clients Group)」で、続いて「個人金融資産管理事業(Personal Banking and Wealth Management)」、「レガシーフランチャイズ事業(Legacy Franchises)」となります。

「機関投資家事業」では、投資銀行業務・プライベートバンク・証券サービスなどのサービスを提供し、「個人金融資産管理事業」では国内リテールサービスや、海外プライベートバンキングサービスを提供しています。

競合他社

 競合他社として、銀行の所在地や事務所、インターネット、その他の流通チャネルを通じて、個人、企業、機関に銀行、投資、住宅ローンの商品やサービスを提供するウェルズ・ファーゴ(WFC)、個人・商業銀行、資産管理、投資銀行の多様な商品およびサービスを幅広く提供するバンク・オブ・モントリオール(BMO)、投資銀行業務、金融サービスおよび資産管理を行うJPモルガン・チェース(JPM)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値まで戻っていません。配当は横ばいを維持しています。

 ロシアのウクライナ侵攻以降、シティの株価は下降し、現在低位で推移しています。

 ロシアでの事業リスクや、株価下落に伴うTier1比率の低下など、さまざまな要因により株価が下落しました。

 しかし、配当は横ばいを維持していることから、4%を超える利回りとなった今の水準は魅力的な水準かもしれません。

業績動向

 2022年4月14日開示の四半期決算では売上・1株利益ともに市場予想を上回りました。

 決算を受けて株価はわずかに上昇しましたが、マーケットが下落している影響もあり大きな買いにはつながっていません。

 ロシアのカントリーリスクを受け、投資銀行業務など海外事業の業績が悪化したことで、売上・1株利益ともに前年同期比の水準を下回っています。

 今後は、海外事業が回復することで業績回復・株価上昇が期待されます。

 次回は2022年7月15日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 ロシアとウクライナの状況が長期化するようだと、さらに業績に悪影響を及ぼす可能性があり注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:2.04ドル
配当利回り:4.46%
株価:45.69ドル(約6,100円)

 この銘柄、権利落ち日は7月下旬予定(権利実施は8月下旬予定)です。

 配当利回りは6月14日時点で4.46%、株価は45.69ドルでおよそ6,100円から購入できます(1USD=134円計算)。

 2019年からの最高値は81.91ドル、最安値は35.39ドルとなっています(終値ベース)。

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