10月23日にロイターが「日銀が物価1%展望できるまで基金残高維持検討へ、事実上無制限緩和」と報道したことで、日銀の「無制限緩和」がマーケットテーマに浮上した。「日銀が資産買入基金の残高を物価上昇率1%が展望できるまでを維持する無期限(オープンエンド)緩和を検討している」との材料で、ドル/円相場は3カ月半ぶりの80円にタッチした。
ドル/円(日足) 円安トレンド継続中
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)
野田政権は選挙対策から日銀に対し「資産買い入れ等基金の枠を80兆円から100兆円へ20兆円増額せよ」と政治的圧力をかけていると言われるが、本日の日経新聞は「国債などの資産買い入れ基金の規模を10兆円積み増す案を軸に検討する」と報道している。情報が錯綜しているが、“30日までは”基本的に追加緩和期待相場が展開されそうだ。
日銀の追加緩和、日本の貿易赤字の定着、日本国債の格下げ懸念、日本企業の米国向けM&Aの増加などの円安材料をテコに、マクロファンドは30日までに80円60銭まで円安を仕掛けたい意向と噂されている。日本勢は80円台の輸出の大きな売りをみて円売りに腰が引けているが、米系ファンドやテクニカル主導のファンドは「売りもののない相場は上がらない」と、ドル/円の上昇に強気である。
相場の実践的な話に移ろう。筆者の定点観測では、現在のドル/円相場は「中期的なトレンドの転換点を迎えつつある」という認識だ。今月はあと営業日数で5日を残すのみとなっているが、現状のレベルでドル/円相場が推移してくれれば、10月月足終値ベースで「20カ月移動平均線」を上回ることになる。過去5カ月間ドル/円相場は20カ月移動平均線で上値を押さえられていた。ドル/円相場が20カ月移動平均線を上回ることで、長期的な相場の基調が「円高」から「円安」に転換する可能性がある。
ドル/円(月足) 20カ月移動平均線(青)10月月足で上抜けるか?
10月25日現在、79円11銭付近の推移となっている
米系のテクニカル系のファンドがドル/円の上昇に強気なのは理由がある。リーマンショック後のドル/円相場は、MACDの「週足売買シグナル」がうまくワークしており、ドル/円週足のMACDは先週「ドル買い」シグナルが点灯している。ファンド勢は今回もその恩恵にあやかろうと言うわけだ。
ドル/円(週足)とMACDのシグナル 先週「ドル買い」シグナルが点灯
リーマンショック後、週足MACDのシグナルは信頼性が高い?
さらに週足の14週ADXと26週標準偏差ボラティリティの推移を観察してみると、今年2月~3月の円安トレンドが終了して以来、約半年間調整を続けていた相場が「調整十分」となっていることが伺える。
ドル/円(週足) 11~12月期に円相場のトレンドが形成される可能性が…
上段:14週ADX(赤).26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:一目均衡表の<雲>
現段階では「円安」「円高」のどちらのトレンドが発生するのか明確ではないが、相場が20週移動平均線を上抜いてきたことを考慮すると、円安への転換に分があるだろう。いずれにせよ、上記トレンド指標の形状からは、11~12月期に円相場のトレンドが形成される可能性が高そうだ。
中期的な円安局面に入ったかどうかを現段階で判断するのは時期尚早だが、この先、大きな円安基調が訪れるのか否か、興味深い局面に入ってきた。
目先、心配なのは30日の日銀会合の結果とNYダウの動向である。追加緩和に否定的な日銀が政治的圧力で動いているだけに、小出しの緩和やネガティブな会見が行なわれるようだと、市場は「ああ、またか…」となってしまう。
今週、ユーロ/ドルやドル/スイスはNYダウの下落と連動してトレンド(方向性)が消滅してしまった。NYダウは「13,000ドル、あるいは200日移動平均線をサポートできるかどうか」に注目している。現在の米株式相場やコモディティ相場の下落は、「13-21日移動平均バンド」(水色)を割り込むと必ずファンドの投げや利食いが出てくる」といういつものパターンに過ぎない。しかし、ここからさらにNYダウが下落するようだと、市場のリスク回避色が強まり金融市場全体を冷やす可能性があるので注意したい。
NYダウ(日足) 13-21日移動平均バンド(水色)・200日移動平均線(緑)
日経平均(日足) 13-21日移動平均バンド(水色)・200日移動平均線(緑)
ダウ急落も関係ない? 円安だと日本株はしっかり
ゴールド先物(日足) 13-21日移動平均バンド(水色)・200日移動平均線(緑)
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