5月のビットコインイベント

NEW! 5月9日 テラUSD(UST)、ドルとのペッグが崩れ始め、テラ(LUNA)も暴落
NEW! 5月12日 テラ不安がテザー(USDT)に飛び火、一時94セントに下落
NEW! 5月13日 野村證券、シンガポールで暗号資産デリバティブ提供開始
NEW! 5月24日 三井住友トラスト、年内に暗号資産カストディ提供

*2022年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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5月の振り返り

5月のビットコイン価格(円)とイベント

出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成

 5月のBTC(ビットコイン)相場は続落。

 

 5日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では50bpの利上げと6月からのバランスシート縮小が決められた。ネガティブサプライズは避けられたとの見方からBTCは4万ドル(約520万円)にワンタッチした。

 しかし、FOMC翌日から米株が大きく下落、さらに米債金利が低下し、株が売られたが、債券が買われる「質への逃避」相場が始まった。

米株と米10年債利回り

出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

 そうした中、一部で脆弱(ぜいじゃく)性が懸念されていたテラプロジェクトで、まず20%近くの利回りを提供しているAnchorからステーブルコイン・テラUSD(UST)を引き出し市場で売却する動きが出回り、USTとドルとのペッグが崩れ始めた。

テラUSD(USDT)価格推移

出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

 するとUSTをその背景トークンとされるテラ(LUNA)に交換する動きが殺到、同トークンの価格が暴落し、USTを支えることが不可能な状況に陥(おちい)った。

 いわゆる取り付け騒ぎに似た状況で、USTは5セント台に、LUNAに至っては100万分の1に下落した。

テラ(LUNA)価格推移

出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

 時価総額で200億ドル以上あったステーブルコインが崩壊し、同じく200億ドル以上あったLUNAトークンの時価が数日の間にほぼ消滅したことは、市場を震撼させ、DeFiやNFT関連銘柄が軒並み値を下げた。

 BTC市場ではLUNAの価格維持のための準備資金として蓄えられていた約8万BTC(約30億ドル)が市場で売却されるとの懸念からBTCは2万5,000ドル台まで急落した。この準備資金がどう使われたのかは不明だが、実際、同財団のウォレットの残高はほぼゼロとなった。

 このように「資本逃避」の動きから脆弱なプロダクツを探る動きは12日、ついにステーブルコインの最大手、テザー(USDT)に及び、USDTは一時94セントまで下落したが、すぐさま切り返し、また逃避フローが流入したせいか、BTCも急反発、信用不安の連鎖はいったん断ち切られた。

テザー(USDT)価格推移

出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

 その後も米株の下落は止まらず、NYダウ(ダウ工業株30種平均)は90年ぶりの8週連続の陰線となり、BTCも反発後、すぐに上値を抑えられた。そして、米株が23日以降、するどく切り返したが、BTCはついていけなかった。

米株の反発にBTCがついていけなかった理由

 前回もご紹介したが米株との相関関係を深めていたBTC相場が、米株のリバウンドについていけなかったのはなぜだろうか?

信用不安が燻る

 一つ目の理由は暗号資産市場内にありそうだ。すなわち、テラ不安から始まった信用不安の連鎖がいったんはテザーの切り返しにより収まったが、その後も燻(くすぶ)り続けていたことだ。

 テザーの価格も1ドルではなく99.9セントまでしか戻っておらず、12日以降、テザーの時価総額は1割強にあたる約100億ドル失っている。このうち半分の50億ドル強はUSDTより安全といわれているUSDCに流れ、半分の50億ドルは暗号資産市場から抜け出した可能性がある。

 また、日本でも話題になったゲーム上のスニーカーを購入し、実際に歩くとトークンがもらえるSTEPNでは、NFT化されたスニーカー価格も、歩いた際にもらえるトークン(GST)も下落。GSTは4月29日につけた10ドルから5月12日に1.75ドルまで下落、いったん3ドル近くまで戻したが、月末にかけて安値を更新している。

STEPN関連トークン、GST価格推移

出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

景況感の悪化

 二つ目の理由は米景況感の悪化だ。図は米国の主な製造業景況感指数の推移だ。ISM(米サプライマネジメント協会)、NY連邦準備銀行、フィラデルフィア連銀、リッチモンド連銀、ダラス連銀、カンザスシティ連銀とみごとに4月から5月にかけて悪化している。

米製造業景況感指数

出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

 FRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派姿勢で株式市場が崩れ始めると、FRBは態度を軟化し株価に配慮する、いわゆるバーナンキプット、FRBプットと呼ばれる現象があるといわれている。

 しかし、この5月はFRBが75bp利上げの可能性を否定し、6月7月の2回50bp利上げをすれば9月以降は状況が改善すると株式市場と折り合いを付けようとしたが、リスクオフの流れはなかなか収まらなかった。その背景には景況感の急速な悪化があったわけだ。

 4月から5月にかけて景況感が悪化した主な要因は中国のロックダウンとウクライナ情勢の長期化だろう。3月28日から続いた上海のロックダウンも1カ月程度で終えるどころか北京にまで飛び火し、中国経済の減速も数字にはっきりと表れだした。

 3月から4月にかけてトルコの仲介で停戦交渉が進展、ロシア軍がキーウ(キエフ)近郊から撤退したが、現地の惨状にウクライナ側が態度を硬化、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4月29日に停戦協議が「終わる恐れが高い」との認識を示した。ロシア側も東部地区での攻勢を強め、全く出口の見えないまま1カ月が経過した。

 株式市場は23日以降、なんとか反発に転じたが、ファンドマネージャーからすれば、暗号資産にまで手が回らない状況が続き、買い手不在のもと、BTCは株の戻りについていけない状況が続いた。

変化の兆し

 月末にかけてこうした状況に変化の兆しが見え始めた。マクロ環境では、上海のロックダウンが6月1日に実質解除となった。まだ予断は許さないが、トルコが仲介で、ウクライナ産小麦の、ロシア占領区域を抜けた黒海経由の輸出ルートを確保しようとしている。当然、その先の停戦交渉を見据えた動きだろう。

 暗号資産でも、それまで大きく売られていたDeFiやNFT関連銘柄が戻し始めている。まだ予断は許さないが、最悪期を脱した可能性がある。

6月の見通し

 このように5月のもたつきを脱し、底打ち感が出てきているBTC相場だが、6月の相場はどうなるであろうか。

ビットコイン月別騰落率一覧

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

アノマリー

 まず、毎月ご紹介している月別の騰落一覧だが、6月は7勝4敗(過去11年で7回上昇、4回下落)で平均的な月。強いて言えば上がりやすいが、ここ数年のパフォーマンスは芳しくない。最近相関が増している米株のパフォーマンスが6月はさえないことも影響しているか。

 それと気になるのが、過去11年間で、2カ月連続で陰線となった13回中、翌月が陽線に転じたのは4回しかなく、7割に当たる9回は陰線となっている。

 6月は約7割上昇、連続陰線の翌月は約7割下落と強弱どちらのサインも出ており、アノマリー的にはどちらとも言い難い。

半減期を1としたその後のビットコイン価格推移(スケール調整済)

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成 

半減期サイクル

 次に半減期による4年サイクルで見てみたい。上は過去3回の半減期をDay 0=1としたBTCのパフォーマンス。ただし、半減期からその後のピークまで、2020年のケースでは約8倍(終値ベース)になっているが、2016年は約29倍、2012年は約90倍になっており、スケールを合わせるため、2016年は1/3強、2012年は1/9強スケールダウンしてピークの高さを合わせている。

 すると、半減期からピークやボトムまでの日数や経路が似かよっていることが見えてくる。なぜ、このように等比級数的にスケールダウンすると似通った経路になるのかについては別の機会に説明したいが、詳しくは楽天ウォレットホームページの「2022年ビットコイン相場見通し」にて説明しているのでご参照いただきたい。

 この経路を見ると、このところ値を下げた印象の強いBTCだが、過去2回の半減期後の推移と、類似で進んでいる印象だ。

大底は近そう

 現在が半減期から750日目で、2012年の半減期後のボトムは777日目、2016年の際は888日目で、従来のパターンでいけば、この4年サイクルのボトムが近いことが分かる。

 ただ、短期的に見れば、今後数カ月の間にボトムが到来する可能性が高く、6月のBTC相場にあまり強気にはなりがたい。

2017年のピークと2021年のピークのその後のビットコイン価格推移

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成 

2万5,000~3万ドルのサポート

 先ほどは半減期を基準にその後の価格推移を比較したが、今度は前回2017年と今回2021年の相場のピークを合わせて、その後の価格推移を比較してみたい。上は2017年12月のピークと2021年11月のピークをT+0としてその30日前からの推移を示したもの。

 すると、現在の相場が、2017年にピークを付けてからの2018年の相場によく似ていることが分かる。

 2018年は2月に6,000ドル近辺でサポートされた後、半年以上サポートとしてワークしたが、11月に割り込み3,000ドル台に下落、12月にボトムを付けている。このサポートが、今回の2万5,000~3万ドル水準に似ていると考えるが、今回はこの水準を割り込まないと考えている。

底割れはないと考える理由

 理由は当時との需要の違いだ。2018年にBTCが6,000ドルのサポートを割り込んだ最大の理由はBCH(ビットコインキャッシュ)の分裂騒動だった。ただ、当時の参加者は個人が中心で、この市場に機関投資家のマネーが入ってくるとこの相場は大化けするといわれていて、それが2020年ごろから米国を中心に始まり2021年の躍進につながった。

 その後の状況はどうだろうか。ここ2カ月でみてもゴールドマンサックス(GS)が暗号資産デリバティブ開始に向けFTXと協力、フィデリティは401kでのBTC投資を開始、ブラジル最大のネット銀行が暗号資産の取扱いを開始、国内でも野村證券はシンガポールに暗号資産のトレーディングチームを立ち上げ、三井住友トラストは暗号資産のカストディ開始に向け準備を始めている。

 こうした金融機関が暗号資産対応を進めているのは、背後に機関投資家のニーズがあるからで、彼らの参入は深化し拡大している。

 さらに、先月エルサルバドルがBTC導入による金融包摂に関する国際会議を開催、44カ国・地域の金融当局者が出席した。ウクライナ情勢と経済制裁により外貨準備の米ドル離れを予想したが、中央アフリカは2番目のBTC採用国になる模様だ。

 さらに、米インフレが高止まりしている間は米投資家のインフレヘッジ需要が期待され、相場が下がったところでは押し目買いが入ると考える。

6月見通し

 まとめると、中国経済やウクライナ情勢の変調により米景況感が上向き、米株やBTCは底入れムードとなる。しかし、その反発は一時的で本格反発にはいたらない。一方で2万5,000~3万ドルの水準は今後サポートとして意識され、下がったところには押し目買いが入る。そうした中、6月のBTC相場は横ばい圏でのレンジ取引が続くものと考える。

2022年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

4月27日 中央アフリカ、ビットコインを法定通貨に採用
4月19日 オーストラリアで初のビットコイン・イーサリアムETFが承認
4月6~9日 Bitcoin2022がマイアミで開催。昨年はエルサルバドルのBTC法定通貨化が発表されたが、今年はやや期待外れの声も
4月4日 ウクライナへの仮想通貨で集まった寄付金、約123億円を超える
3月29日 Axie InfinityのRonin Networkで大規模ハッキング
3月22日 世界最大のヘッジファンド「Bridgewater Associates」、暗号資産ファンドに投資開始か
3月17日 FOMC、0.25%利上げ発表でビットコイン上昇
2月28日 米、ロシア中央銀行の資産を凍結。ルーブル安からBTCに逃避フロー
2月27日  米欧、ロシアをSWIFTから排除
2月25日 プーチン大統領、軍事攻撃を命令
2月20日 北京五輪閉幕
2月17日 米大統領、ロシアが数日中にウクライナ侵攻    
2月12日 **BlockFi、SECと1億ドルで和解。米国内でのレンディングサービス困難に
2月4日 北京五輪開幕。当面、軍事衝突が控えられるという見方でBTC上昇
1月20日 ロシア中銀が暗号資産の*マイニングと流通の禁止を提案

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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