あまりにも長い間、愚か者にカネの雨が降っていた…
テスラのイーロン・マスクCEOがツイッター上で、米国経済がリセッションに陥ることは「有益だ」との考えを示した。他の投稿者からの「米国経済はリセッションに近づいているのか」との質問に対して答えたものだ。さらに次のようにツイートしている。
「あまりにも長い間、愚か者にカネの雨が降っていた。いくつかの倒産が起こる必要がある。また、コロナ禍におけるステイホームのようなものが人々を騙し、実際には一生懸命働く必要がないと思わせている。怠惰な目覚めがやってくるだろう」
イーロン・マスクのツイート
さらに、そのリセッションはどれくらい続くのかとの質問を受け、次のようにツイートした。
「過去の経験からすると12ヶ月から18ヶ月だろう。本質的にキャッシュフローがマイナスの企業(つまり価値を破壊している企業)は、リソースの無駄遣いを止めるために滅びる必要がある」
イーロン・マスクのツイート
現在、米国ではレバレッジドローンの市場が崩壊し、リスクパリティ(RPAR=レイ・ダリオの運用手法のコピー)の債券/株式/不動産のデレバレッジによるシステミックリスク、高いプライベートエクイティ(PSP)、高いシンジケートローンへのPEエクスポージャー、政府系ファンド、投機技術におけるクレジットイベント、シャドーバンキング、米国消費者の今買っている後払いモデル、欧州クレジット/銀行/住宅、新興市場、ゾンビ会社などなど、多くの問題が発生している。
イーロン・マスクのツイートは、これらの動きに警鐘を鳴らしたものだろう。
【政府債務の増加を助長したのが金融緩和策である。特にここ数年はゼロ金利、さらにはマイナス金利だった。政府がゼロコストで自らに資金を調達できるのであれば、大盤振る舞いが、特に選挙前にできるのは明らかだ。
資本主義体制と自由市場の重要な特徴に、景気後退と金融危機が定期的に発生することがある。それがまさに資本主義のダイナミズムなのだ。実際のところ、それは体制の効率性とダイナミックな成長のために欠かせない期間である。
ところが、社会主義志向が強い学者や介入主義者ほど、この「非効率的な生産者と無礼な投機家の一統を一掃する」期間を不公平とみなし、しかも「市場経済と資本主義体制の欠陥」とみなしたがる。また、権力に取りつかれた政治家やエリート御用学者は財政・金融政策で経済と資産市場を支援しようとする。循環して起きる経済・金融危機の期間に乗じて、自分たちの権利と権限をさらに強くするためだ。
しかし、よく考えてみると、政府がある分野、ある企業、または人々の所得に助成金を支給するたびに、それらが政府の介入にますます依存し、脆弱になっていることに気づく。人々を政府に依存させる方法の好例が基本所得保障(ベーシックインカム)によるバラマキだ。人々は基本所得保障を受け取ることに慣れたとたん、こうした給付金を支払う政府の意欲と能力に、またさらに依存するようになるだろう】
(マーク・ファーバー)
出所:「マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート」
株式相場は急落した後、底入れまで4段階のプロセスに従うことが多い
5月25日のブルームバーグの記事『米国株にさらなる下落余地、4段階の株式市場サイクルが示唆』の中で、ネッド・デービス・リサーチの予測が取り上げられている。
ネッド・デービス・リサーチの米国担当チーフストラテジスト、エド・クリソルド氏とシニアクオンツアナリスト、タン・グエン氏によると、株式相場は急落した後、底入れまで4段階のプロセスに従うことが多いという。
1段階:主要な指数が極めて売られ過ぎの水準に低下する。
2段階:相場は上昇する。
第3段階:反発が持続するか確認するために再び安値を試す。
底入れの最終第4段階:短期間に下落銘柄数と比べて上昇銘柄数が極めて多くなる「ブレドス・スラスト(breadth thrust)」のクラスターが発生する。
「ネッド・デービスの複数の指標に基づくと、現時点ではこのサイクルの第1段階のみに到達している。S&P500種株価指数が買われ過ぎか売られ過ぎかを判断する際に使われるモメンタム指標、ストキャスティクス(14日間)は4月26日に0.045と、2018年12月24日以来の水準に低下した。クリソルド、グエン両氏は顧客向けリポートで「結論を言えば、市場は第1段階(売られ過ぎ)を達成し、第2段階(上昇)を試しつつある。市場が第4段階(ブレドス・スラスト)に移行できるまで、このプロセスは進行中だと考えている。クリソルド、グエン両氏は顧客向けリポートで「結論を言えば、市場は第1段階(売られ過ぎ)を達成し、第2段階(上昇)を試しつつある。市場が第4段階(ブレドス・スラスト)に移行できるまで、このプロセスは進行中だと考えていると指摘した」
出所:(5月25日ブルームバーグ『米国株にさらなる下落余地、4段階の株式市場サイクルが示唆』)
ネッド・デービス・リサーチの予測が正しければ、現在の相場は「2段階:相場は上昇する」のフェーズにあり、現在の米国株の上昇は大きな下落相場の中のあや戻しに過ぎないだろう。
米国株もドル/円も資源国通貨(株価連動のクロス円通貨)も現在、リバウンド相場となっている。われわれ市場参加者にとっての問題は、このあや戻しが、1カ月程度なのか2、3カ月続くのかである。
ナスダック100CFD(日足)
ドル/円(日足)
豪ドル/円(日足)
逆金融相場はまだ始まったばかりなのに、市場の一部では9月利上げ停止とか、QE5待望論とか、バブル再燃期待が強い。利上げを停止したら一時的に株は上がるだろうが、インフレが制御不能になる可能性がある。
ジャネット・イエレン米財務長官は、5月31日のCNNのインタビューで、「インフレ進行の道筋について私は間違っていた。想定外の大きな経済へのショックでエネルギー・食品価格が押し上げられるとともに、供給のボトルネックがわが国の経済に悪影響を及ぼしたが、当時はこれらについて完全には理解していなかった」と述べた。
ペリー・カウフマンが言うように、「政府はいつでも、パーティーには遅れてやってくる。彼らが起こった問題に対処しなければ、同じことが再び起こる可能性がある。一方、彼らは安全を過信し、大きな危機がふたたび発生することはないと思っている」のだろう。
そもそも株式市場は実体経済とはあまり相関がないが、最近は実体経済とはほとんど相関が無い。国家管理による人為的なネズミ講相場となっているため、突然崩壊するだろう。阿保らしい話だが、それが現実である。そして利上げやQTといったインフレ下の逆金融相場の今、バブルは破裂している可能性がある。
個人投資家がバブル相場につぎ込んでいいのは、失ってもいいお金だけだ。そもそも、大多数の人間が飛びつくものに、ろくなものがあったためしがない。資産運用の世界で流行とかブームに乗ると、最後にはしっぺ返しが待っている。
6月1日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』
6月1日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』は、武田則孝さん(楽天証券FXディーリング部)をゲストにお招きして、「楽天FXの投資家の動向」・「あや戻し相場に御用心」・「米利上げに9月打ち止め観測」・「投資戦略フェアEXPO2022「アミン・アズムデ✖︎石原順」(提供:楽天証券)のお知らせ」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください!
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
6月1日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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