先週末の日経平均は2万7,824円で引け

 先週末6月10日(金)の日経平均株価終値は2万7,824円となりました。前週末終値(2万7,761円)からの上げ幅(63円)は小幅でしたが、週足ベースでの連騰記録を4週に伸ばしています。

図1 日経平均(日足)とMACD (2022年6月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて、先週の日経平均の値動きを上の図1で振り返ると、前週からの株価の戻りを順調に描く展開が続きました。200日移動平均線や2万8,000円水準といった節目を次々と上抜けただけでなく、9日(木)の取引時間中には直近の戻り高値(3月25日の2万8,338円)を超える場面も見せました。

 さすがに10日(金)の取引では、週末要因による手じまいや節目超えによる達成感などで売りに押されて下落しましたが、この10日(金)の下落をどう捉えるかが、今後の相場展開を考える上のポイントになります。

 結局、2万8,000円台と200日移動平均線の節目超えを維持できずに1週間の取引を終えているだけに、上昇トレンドがまだ続く中での一服なのか、それとも、再び下落に転じるきっかけになってしまうのかを探りに行く値動きが想定されます。

 まず、10日(金)の下落を「上昇トレンド中の一服」と捉えた場合、再び200日移動平均線や2万8,000円台を超えてさらなる上値を追っていくことになります。

 上の図1で日経平均の値動きを大まかな形状で分析すると、いわゆる「上昇フラッグ(旗)」を上放れしていることが分かりますが、この場合の上値の目標値は、フラッグ(旗)の支柱にあたる部分、具体的には3月9日から25日の上昇幅(3,620円)を、フラッグ(旗)が最後に下値をつけた5月12日の安値(2万5,688円)から加えた2万9,308円となります。

 現時点で日経平均の2万9,000円台乗せはイメージしにくいかもしれませんが、他の分析手法でも2万9,000円台前半を上値目標とするものがいくつかあります。

図2 日経平均(日足)のフォーメーション分析(2022年6月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2は先ほどの図1よりも期間を長くした日経平均日足チャートをフォーメーション分析したものです。この図はこれまでのレポートでも何度か紹介しましたが、特に注目していたのは、昨年9月14日を起点にして、以降の戻り高値を結んだ「上値ライン(紫色の線)」でした。

 ここ最近の株価上昇によって、これまで約9カ月間にわたって抵抗となっていた上値ラインを上抜けており、中期的な相場状況に大きな変化が出てきた可能性があります。もし仮に株価が下落したとしても、この上値ラインが今度はサポートとして機能することができれば、上昇に弾みがつくことにもなります。

 となると、今度は昨年末にかけて株価のサポートとなっていた「下値ライン(水色の線)」が注目されます。これらの上値ラインと下値ラインは、3月25日あたりでクロスし、現在は位置関係が上下反対になっていますが、このまま株価が上昇を続けた場合、株価と下値ラインがぶつかりそうな株価水準は2万9,000円あたりです。

 ちなみに、昨年9月14日高値(3万795円)から今年3月9日安値(2万4,681円)にかけての日経平均の下げ幅(6,114円)に対する戻りをフィボナッチ・リトレースメントで計算すると、足元の株価は61.8%戻し(2万8,460円)をトライしつつある水準ですが、ここをクリアできれば、次に控えるのが76.4%戻しにあたる2万9,352円となります。

 続いて、10日(金)の下落を「下落に転じるきっかけ」と捉える場合についても考えていきますが、むしろ、今週についてはこちらをベースにした方が良いかもしれません。というのも、10日(金)の日本市場終了後の米国株市場が大きく下落し、225先物取引も大取で2万7,340円、シカゴCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で2万7,325円と一段安で終えているからです。

 今週の取引が先物取引の終値水準まで下落することを想定すると、先ほどの図2で登場した「上値ライン」と株価がぶつかるところがちょうど2万7,300円あたりになります。つまり、「これまでの抵抗をサポートにできるか」という試練が週初に待ち構えているわけです。

 無事に上値ラインが株価のサポートとなれば上値意欲は強いと判断することができる一方、下抜けてしまった際には、これまで突破してきた節目(25日・75日移動平均線や2万7,000円水準)や、直近安値である3月9日と5月12日どうしを結んだ線(水色の点線)などが下値の目安になりそうです。

 さらに、10日(金)の取引で気になるのは、「メジャーSQ(特別清算指数)」でSQ値が2万8,122円だったことです。この日の日経平均の高値(2万8,044円)はSQ値に届いておらず、いわゆる「幻のSQ」と呼ばれる状況となっています。

 一般的に、幻のSQというのは、「SQ値を高くするために需給的に無理をした」と解釈され、翌週以降の相場が弱くなるとされているため注意が必要です。

 とにかく、今週は週初の動きが重要になると思われます。

今週の日経平均と米国市場の見通し

図3 日経平均(日足)のボリンジャーバンド(2022年6月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 

 次に、日経平均の動きをボリンジャーバンドでも確認していきます。

 週初の動きが重要ということはつい先ほども述べた通りですが、週初13日(月)の取引が軟調なスタートになりそうであることを踏まえると、ちょうど上の図3のプラス1σ(シグマ)あたりが意識されることになります。

 チャートを過去にさかのぼると、足元の状況と似ている場面があり、具体的には、昨年8月20日から9月14日の18営業日で3,840円上昇していた局面です。

 当時は急ピッチな上昇から急落へと転じていきましたが、本格的な下げに入る前にプラス1σあたりでの攻防があったことが分かります。

 今回も「昨年に見た光景」のように急落していくとは限りませんが、当時と足元の状況には、米国株などに比べて日本株の上昇が目立っていたという共通点があることは認識しておく必要がありそうです。

 なお、株価が上昇基調を維持するには、プラス1σから2σでのもみ合いを続ける中、反対側のマイナス2σの線が下向きから上向きに変わって、「バンドウォーク」と呼ばれる形状へと移行するのが理想的です。

 最後に米国株市場についても見ていきます。

図4 米NYダウ(日足)とMACD (2022年6月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末10日(金)の米NYダウ(ダウ工業株30種平均)は3万1,392ドルで取引を終え、週末にかけての3日間の下げ幅合計が1,787ドルと大きなものとなりました。

 欧州の金融政策がタカ派姿勢を強めたことや、米5月のCPI(消費者物価指数)が前年同月比で約40年ぶりのインフレ水準となったことなどが下げを加速させた格好です。

 チャートの形状も、リスクのオンとオフの境界線とされている3万3,000ドル台をはさんだもみ合いが続いていたところから、景況感の悪化を織り込む3万2,000ドル台割れまで株価水準を一気に引き下がったほか、下段のMACDも「0ドル」ライン超えを試すところからシグナルの下抜けへと悪化させています。

 直近安値(5月20日の3万635ドル)を下抜けも視野に入っている状況で、底打ちムードがいったんリセットされたような印象です。

 今週の米国市場では14日(火)~15日(水)にかけて米FOMC(連邦公開市場委員会)が開催されます。

 先週までは、従来予想の利上げ幅0.5%がすでに織り込み済みで、金融政策の論点は少し先の9月以降の政策方針に向かっていたのですが、先週末の米5月CPIの結果を受けて、今回のFOMCで0.75%の利上げを予想する動きも一部で浮上しており、注目度がグッと高まっています。

 FOMCの結果やその後のジェローム・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見の内容次第で米株市場が大きく動く可能性があります。

 また、金融政策イベントといえば、日本銀行の金融政策決定会合も16日(木)~17日(金)にかけて予定されています。先日、黒田東彦総裁の発言が物議を醸した直後だけに、政策姿勢や発言のトーンへの配慮と市場の受け止め方も焦点になりそうです。

 このほか、経済指標についても、中国で5月の経済指標がまとめて発表され、米国でも5月の小売売上高や住宅着工件数、鉱工業生産などが相次いで発表されます。

 こうした金融政策への思惑や、インフレ動向、そして景況感への影響といった「三つどもえ」の微妙なバランス関係が続くことになり、中長期的なシナリオを構築しづらく、しばらくは値動きの荒い相場展開となりそうです。