ギリシャ問題は堂々巡りの展開が続いているが、6月17日の再選挙が終わるまで埒があかない。ギリシャ問題のとりあえずの結論は、再選挙後の6月28日・29日のEUサミットまで持ち越される。ギリシャの再選挙まではまだ長い。相場のリスク回避傾向が強まり、運用者は買うものがないので米・独・日の国債市場に資金を逃避させている。
日本の市場では株安・円高が進行し、「この相場はどこまでいくのか?」という照会が多くなっているが、相場の反転は「中央銀行頼み」とならざるを得ない。となると、市場の焦点は6月6日のECB理事会、6月20日のFOMCの対応を待つしかないだろう。ECB理事会では利下げとLTRO、FOMCではQE3が期待されている。ここで、欧米の6月同時金融緩和が行われるか否かが最大の焦点である。
ギリシャ問題の伝染が懸念されるスペイン10年国債金利(日足)と米・欧・日の金融決定会合スケジュール
昨日、日銀は追加緩和を見送ったが、会見でも「当座預金の金利下げは市場機能が低下する」「外債購入は財務省の所管」と市場の期待する緩和策を否定し、「総裁会見で市場機能が低下した」と海外投資家を落胆させている。次の日銀会合は6月15日だが、6月17日のギリシャの選挙結果、および6月20日のFOMCの決定をみるまで日銀は動かないだろう。「後手に回る日銀」ということで、追加緩和は7月12日になると予想されている。
日銀がマネーを供給しないと円高になるが、先週のレポートにも書いたようにファンドの興味は既に円売り介入に移っている。この先、投機筋は78円50銭とも78円20銭とも言われる介入ゾーンを試しに来る可能性がある。下値には警戒が必要だ。
直近の相場では、ドル/円9日RSIの30%付近、および豪ドル/円の9日RSIの20%付近がいったん下げ止まるポイントとなっているが、逆張りを狙っている投資家は「ストップ・ロス注文を置いて買い、上がったら適当に利食う」というのが現状の戦法である。円高トレンド下なので、欲張っては痛い目にあう。
ドル/円(日足)
上段:フィボナッチのファンライン・13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)
下段:9日RSI鈍感バージョン(赤)
豪ドル/円(日足)
上段:フィボナッチのファンライン・13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)
下段:9日RSI鈍感バージョン(赤)
さて、筆者の現在の興味は6月に「QE3」と「米国金利の反転」があるか否かである。ここ数年はさほどでもないが、歴史的に6月相場は米金利の反転が起こりやすい。なぜ、反転するのかは説明できないが、6月はそういう季節なのである。
米国の金利が来月6月に反転することがあれば、その要因は米国の追加金融緩和(QE3)であろう。「追加緩和(QE3)が実施されれば、米株と米金利が上昇する」というのがこれまでのパターンである。
米国債や日本国債を買って儲けているファンド勢も、6月20日のFOMCまでに利食いないしは部分売却を考えているという。5月に入って世界中不景気風が吹いているが、6月の相場反転が起こるかどうかファンド勢は注目している。
米10年国債金利(日足)と米国の量的緩和政策 QE3があれば米株と米金利は上昇?
米10年国債金利(日足) 2010年~2012年 6月の相場反転(黄)
米10年国債金利(日足) 2007年~2009年 6月の相場反転(黄)
米10年国債金利(日足) 2004年~2006年 6月の相場反転(黄)
米10年国債金利(日足) 2001年~2003年 6月の相場反転(黄)
一方、日本国債市場では「高層ビル指数」との絡みで、「日本国債のバブルが崩壊するのではないか?」と話題になっているらしい。東京スカイツリーが開業したからだ。1999年にドイツの証券アナリストAndrew Lawrence氏が考案した高層ビル指数(Skyscraper Index)は、「高層の建物が建つと、その国のバブルが崩壊しやすい」というアノマリーである。1929年の世界恐慌、1998年のアジア危機、2010年のドバイショックに見られるように、高層ビルやタワーが建つとあまりいいことがない。
しかし、筆者の周辺のファンドは「日本国債はこわいから、まだ売らない」と言っている。それはそうであろう。過去20年間、名うてのヘッジファンドでも日本国債売りでは惨敗してきたからである。現在、日本の10年国債の利回りは0.85%である。海外ファンドが日本国債の売りで「大勝負」に出てくるのは、10年国債金利が2%を超えてきてからだ。多くのファンドは「メルトダウンするなら2%超えからで十分間に合う」と言っている。
日本の国債バブルが破裂するかどうかはともかく、債券運用者にとってはこれから神経質な時間帯を迎える。為替相場は2国間の国債の交換レートである。6月の金利動向を注視したい。
日本10年国債金利(日足) 20年間デフレという異常な経済状態の継続で、これまでヘッジファンドは日本国債売りに失敗してきた
最後に外為市場のトレンドをみておこう。筆者は相場の方向性の有無を判定するのに「26日標準偏差ボラティリティ」と「26日ADX」を使っている標準偏差ボラティリティとADXが共に低い位置から同時期に上昇する場合は、相場がもちあいを離れ強い方向性をもつシグナルとなる。一方、ADXと標準偏差ボラティリティがピークアウト(天井をつけ下落)すると、トレンド期とはやや逆方向にバイアスがかかった「横這いレンジ内での乱高下相場」となりやすい。
現在はドル/円を除く多くの通貨でドル高トレンドが継続しているが、多くの投資家が期待する相場の反転は、ADXおよび標準偏差ボラティリティがピークアウトするのを待たねばなるまい。
ドル/円(日足)
上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶) 9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場
ユーロ/ドル(日足)
上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶) 9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場
ユーロ/円(日足)
上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶) 9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場
豪ドル/円(日足)
上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶) 9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場
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