先週の日経平均株価は米国株が絶不調にもかかわらず、前週比311円高で終わりました。世界各国で株安ショックが起こる中、今週23日(月)から27日(金)の日本株は持ちこたえられるでしょうか?

先週:割安小売株まで異例の27%安。米国株に絶望感漂う

 先週、日本株は上昇して終わりましたが、米国株は世界中の投資家が運用指針にしているS&P500種株価指数が前週比3%安、株価が割高なハイテク株が集うナスダック総合株価指数が3.9%安と大きく下落しました。

 株安の原因になったのは止まらない世界的な物価上昇です。

 先週発表の英国の4月CPI(消費者物価指数)は前年比9%の上昇。

 日本の生鮮食品を除いた4月CPIも前年比2.1%上昇。これは消費増税の影響があった月を除けば、13年7カ月ぶりの上昇率になります。

 一方、米国では4月の小売売上高が前月比0.9%増と堅調に推移。4月の鉱工業生産指数も製造業は前月比0.8%増と予想を上回りました。

 物価高でも景気がいいのは株価にとって朗報なはずですが、景気が過熱すればさらに物価が上昇し、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)は株価の大敵である利上げを続けるしかありません。

 さらに、18日(水)にはNYダウ工業株30種平均が1,164ドル安も急落する「ターゲット・ショック」が発生しました。

 これは、米国ディスカウントチェーン大手・ターゲット(TGT)の2022年2-4月期の純利益が予想を大幅に下回り、株価が1日で約27%も急落したことが引き金になりました。物価高を価格転嫁できなかったことが原因です。

 2022年はすでに、メタ・プラットフォームズ(FB)などが予想を下回る決算発表で、1日で株価が3割前後急落しています。

 しかし、それは株価が割高なIT関連株の話です。

 割安株に属する小売業であるターゲットの株が1日で3割近くも急落するのは異例です。

 米国市場には絶望感すら漂っています。

今週:景気後退占う欧米の製造業指数やFOMC議事録に注目!

 景気後退懸念により、米国の長期金利の指標となる10年国債の利回りは20日(金)に2.7%台まで低下。

 今週の日本株は、下げ過ぎた米国株の反発も見込まれ、上昇含みの展開も考えられます。

 今週は、24日(火)にフランス、ドイツ、英国、ユーロ圏、米国の景況感を占う5月のPMI(製造業・サービス部門購買担当者景気指数)の速報値が発表されます。

 物価高による景気後退が焦点になっているだけに、今後は製造業関連の景気指数に注目が集まりそうです。

 今週最大の注目は25日(水)深夜に発表される、5月開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録です。

 3月に続く0.5%の利上げとQT(量的金融引き締め)の開始が決定されたこの会合で、さらなる強硬な金融引き締め策が議論されていたら、再び米国株が急落するリスクも高まります。

 27日(金)には、米国の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表。前回3月分は前年同月比6.6%、前月比でも0.9%と物価上昇が加速。今回4月分は伸びが鈍化する予想になっています。

 米国株の主要3指数が年初来安値を更新する下げ相場の元凶は、物価高以外ありません。

 先週のターゲット・ショックは、物価高が続くとそれを価格転嫁できない企業の業績が悪化することの前兆シグナルでした。

 もし価格転嫁が進んだとしたら、今のところ好調な米国の個人消費もいずれは落ち込むでしょう。

 どちらに転んでも、米国経済の景気後退が半ば確実視されるようになったことが、米国株の下落が止まらない理由です。

 泥沼化しつつあるロシアのウクライナ侵攻や、世界の工場といえる中国の強硬なゼロコロナ政策の影響で、世界的なインフレが急に収束するとは思えません。

 だとするなら、物価上昇が止まるほど景気が低迷しない限り、株価が本格的に底打ちすることはないのではないか、という恐怖感が世界の株式市場を支配しています。

 今後は日本の内需産業も物価高を価格転嫁できず、業績悪化に陥る、という連想も働きます。

 米国の景気後退懸念で長期金利が低下すれば、日米金利差が縮小します。それにより、日本株独歩高の一因だった円安トレンドが停滞する懸念もあります。

 ただ、長期金利の低下は、急落が続く東証グロース市場の成長株の底打ち反転には貢献するかもしれません。

 新型コロナウイルス感染者の増加が落ち着き、リオープン(経済再開)消費に沸く日本経済。

 今後は思い切った外国人の入国制限緩和でインバウンド需要を喚起するなど、需要不足を解消するような岸田文雄政権の経済活性策に期待したいところです。