2012年の相場は「大いなる金融緩和相場第2幕」と言われている。先進国はともかく新興国も利下げに動いているのが、今回のバブル相場の特徴だ。LTROというECBの裏口QE(量的緩和)以降は、世界中の株が上昇基調に入りバブル相場が展開されている。3年物LTRO(長期資金供給オペ)による100兆円規模のバラマキは、まさに「バズーカ砲」であったと言えよう。

ドラギ・マジックによって、世界規模の株価上昇相場が発生


(出所:フィナンシャルタイムズ)

ここまでのバブル相場の牽引役はECBであったが、ECBは100兆円もばらまいたので、しばらく金融緩和は打ち止めとなる。バブル相場のさらに高値を買い上がる材料として市場が要求しているのが、「日銀の追加緩和」と「米国のQE3」である。つまり、現在のマーケットテーマは「日銀の追加緩和期待」と「米国QE3の有無」である。

世界の金融市場の動向は中央銀行の政策次第である。だから、市場はFRB・ECB・日銀などの中央銀行のスタンスに一喜一憂する。今週の相場は4月3日のマネタリーベースの収縮の発表を受けて、「日銀は本当に金融緩和をする気があるのか?」という海外勢の疑心暗鬼から、「催促の円高進行」となっている。また、同日に発表されたFOMC議事録(3月13日分)の「QE3推進派が数人から2~3人となった」という文言に市場が過剰反応し、米国では「QE3をやれ!」という催促相場が展開されている。

日銀のマネタリーベース(左)と日・米・独のCPIの推移(右)

日銀の物価見通しが目標に達するとの見込みは薄い…さらなる緩和が必要である


(出所:石原順)

FF金利先物が示唆する将来の金利水準

揺れ動く米国の金融政策見通しだが、ツイスト・オペが終了の6月にはFRBが動くだろう


(出所:石原順)

今週、海外のファンド連中とミーティングをしたが、「目先の動きはともかく、このバブル相場はまだ続くだろう」という意見が多かった。日銀に関しては「4月追加緩和観測」、FRBに対しては「6月QE3観測」が出ている。これらの期待が仮に裏切られても、株が下がればFRBはバーナンキ・プットであるQE3を実施するだろう。日銀も株安・円高となれば(政治家がうるさいので)、追加緩和に動かざるを得ない。

つまり、現在の相場は運用者にとっては非常にありがたい相場環境であるということだ。バーナンキ・プット(相場が下がればバーナンキが助けてくれる)という保険付きの相場なのである。

バブル相場では押し目買いがワークする。本日、筆者の周辺の運用者は短期勝負で日経平均先物やコールオプションを買いに出ている。日経平均株価の下げが「18日移動平均マイナス3%乖離水準」に到達したからだ。これは一例に過ぎないが、筆者は海外ファンド勢の押し目買い意欲は強いという実感を持っている。

日経平均株価(日足) バブル相場はまだ続く? 下げが18日移動平均-3%乖離水準に到達したことで押し目を買うファンドも…

上段:26日標準偏差ボラティリティ
下段:18日移動平均±3%乖離線


(出所:石原順)

ドル/円相場では、「前年4Qの安値を買って1Qで売り抜ける」のが確率的に儲かりやすいパターンだと言われている(まあ、株も似たようなものだが・・)。今年もその通りになっている。4月相場が3月相場と逆の動きとなることが多いというドル/円相場の傾向や、過去3年続いた「ドル/円相場4月高値」のアノマリーから、「3月中に利喰いたい」という運用者も多かった。そうした空気を反映してか、3月半ば以降は若干円高バイアスの強い展開となっている。

ドル/円相場の確率的に儲かりやすいパターン

前年4Qの安値(青↑)を買って1Q(黄色のゾーン)で売り抜ける


(出所:石原順)

ドル/円(日足) 過去3年間のアノマリーを覆せるか…


(出所:石原順)

しかし、2012年の相場に関しては日銀の追加緩和次第である。今月は日銀の決定会合が2回(4月9~10日・4月27日)ある。「展望レポートの発表と同時に追加緩和を行う」という噂の多い4月27日の会合が特に注目されているが、「4・27失望相場」とならないことを願うばかりだ。

日銀金融政策決定会合開催予定日

日銀金融政策決定会合開催日
1月 23日(月)・24日(火) 7月 11日(水)・12日(木)
2月 13日(月)・14日(火) 8月 8日(水)・9日(木)
3月 12日(月)・13日(火) 9月 18日(火)・19日(水)
4月 9日(月)・10日(火) 10月 4日(木)・5日(金)
27日(金) 30日(火)
5月 22日(火)・23日(水) 11月 19日(月)・20日(火)
6月 14日(木)・15日(金) 12月 19日(水)・20日(木)

(出所:石原順)

FRBやECBと違って、日銀はリーマン危機後に大胆な金融緩和を行わなかった。昨年の東日本大震災でも動いていない。現在、FRBやECBのスタンスが「様子見」となっているなか、日銀は「周回遅れの量的緩和」に動いている。

欧米では出口戦略を言う人も増えているが、日本はまだ「入り口」に入ったばかりである。この差異が円安基調をサポートすることになろう。欧・米・日の中央銀行のポートフォリオの変化は、今後の円安基調を暗示している。

2005年からのポートフォリオの変化 ECB(左)・FRB(中央)・日銀(右)

周回遅れの金融緩和が円安を下支え?


(出所:石原順)

現在の円相場は、(筆者の認識では)円買いトレンドが発生しているわけではない。基本的には、まだ調整相場が続いている。

ドル/円(日足) 横這い調整中

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

ユーロ/円(日足) 横這い調整中

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足) レンジ相場の範疇も、一応、深押しに注意

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

ニュージーランド/円(日足) 横這い調整中

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

さて、明日は米雇用統計の発表がある。NFPは21万人、失業率は8.3%が市場予想となっている。ここがファンド勢にとって、4~6月相場の始まりとなる。5月の決算前にファンド勢はもう一稼ぎを狙っている。米雇用統計の結果を受けてバブル相場再開となるか否か、投機筋は非常に注目している。

米雇用統計 非農業部門雇用者数の推移(2001年~2011年)

MACDの買いシグナルが出るか!?


(出所:石原順)