※本記事は2020年3月20日に初回公開したものです。情報を更新してお届けします。
すっかりメジャーになったiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)。積み立て時点での節税効果はよく話題になりますが、受け取り時の税金については知らない人も多いと思います。
そんな方もこの機会に覚えておきましょう。
iDeCoの受け取り方法は3種類
将来(原則60歳以上、75歳まで)のiDeCoの受け取り方法には、3種類あります。
(1)一時金で受け取る方法
(2)年金で受け取る方法
(3)一時金と年金を併用して受け取る方法
そしてそれぞれにつき、税金の取り扱いが異なります。
受け取り方法で多いのは、一時金
iDeCoの受け取りで最も多いのが、(1)一時金で受け取る方法です。その理由は、一時金が退職所得として扱われているからです。
退職所得は、以下のように計算されます。
(収入金額-退職所得控除額)×2分の1
そして、退職所得控除額は以下のようにして求めます。
・勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(1年未満切り上げ。以下同様)
・勤続年数20年超:(勤続年数-20年)×70万円+800万円
なお、iDeCoでは「勤続年数」を「加入期間」と読み替えてください(以下同様)。
例えば、勤続年数25年、iDeCoの一時金1,500万円とすると、税額は以下のようになります。
・退職所得控除額:(25年-20年)×70万円+800万円=1,150万円
・退職所得:(1,500万円-1,150万円)×2分の1=175万円
・税額:175万円×5%×1.021=8万9,337円(所得税)
175万円×10%=17万5,000円(住民税)
合計:26万4,337円
1,500万円の受取額に対して、税額は約26万円と、かなり低額に抑えられていることが分かると思います。これが、一時金で受け取る人が多い大きな理由です。
会社から退職金がある場合どうなる?
先ほどの一時金の受け取り方法の計算式は、退職金が「iDeCoのみ」の場合です。iDeCo以外に会社から退職金を受け取る方は、税金の計算式が変わってきます。
同じ年にiDeCoと会社からの退職金を受け取る場合
両者を合算して収入金額として、上記と同じやり方で税額を計算してください。その際、勤続年数が重複している期間については、重複してカウントはできません。
例えば、40~60歳まで20年間会社勤務、50~60歳まで10年間iDeCo加入という場合は、20年+10年-10年=20年が勤続年数となります。
iDeCoと会社からの退職金の受け取り時期が異なる場合
先に受け取る分については、上記のやり方で計算してください。後に受け取る分については、下記のルールに従って、退職所得控除額を計算することになっています。
・iDeCoを後に受け取る場合:前年以前19年以内に受け取った他の退職金を計算したときの勤続年数は除いて計算する
・退職金を後に受け取る場合:前年以前4年以内に受け取った他の退職金(iDeCoも含む)を計算したときの勤続年数は除いて計算する
例えば、40~60歳まで会社勤務、かつiDeCo加入の人が、60歳で会社からの退職金を、65歳でiDeCoからの一時金を受け取る場合で考えます。20年の加入期間(=勤続年数)は、会社からの退職金受け取り時にカウント済みです。そのため、このケースではiDeCoの一時金受け取り時の勤続年数はゼロとして計算します。
また、このルールに基づけば、例えば自営業者が小規模企業共済とiDeCoに加入している場合、先にiDeCoの一時金を受け取り、5年後に小規模企業共済の共済金を受け取れば、両方とも加入期間をフルに活用して退職所得控除額を計算することができます。
このように、人それぞれの状況によって、有利・不利が異なりますので事前のシミュレーションは行うようにしましょう。
また、専業主婦の方のように、会社に勤務していない方は、iDeCoの加入期間そのものを勤続年数として、退職所得控除額の金額を計算すればOKです。加入期間が10年であれば、退職所得控除額は400万円となります。これを上記の退職所得計算の数式に当てはめていけば所得金額が計算されます。
年金で受け取る場合の税金は?
年金で受け取る場合、公的年金などの雑所得として、他の公的年金など(国民年金、厚生年金、企業年金など)と合算して税額が計算されます。
公的年金控除額を差し引いた後の残額が所得となり、これに対して総合課税により課税されます。
公的年金控除額は、65歳未満の場合は最低60万円、65歳以上の場合は最低110万円です(公的年金などの雑所得以外の合計所得金額1,000万円以下の場合)。これを超えると課税される所得が生じます。
そのため、iDeCoの年金以外に、他の公的年金などの受取額が多ければ、それだけ税額も大きくなります。総合課税のため、それらに加えて他の所得(不動産所得など)もある場合は、かなり高い税率になってしまう可能性もあります。
事前にシミュレーションをしておくことをお勧めします。
逆に言えば、65歳未満で他に受け取る年金がない場合は、iDeCoの年金は、公的年金控除額60万円+基礎控除48万円=108万円以内であれば、無税で受け取れることになります。
一時金と年金の併用も可能
楽天証券の場合は、一時金と年金を併用して受け取ることも可能です。この場合、一時金部分については、退職所得として上記で説明した一時金の税額が、年金部分については同様に公的年金などの雑所得として年金の税額が適用されます。
ただし、受け取りごとに440円の手数料がかかります。年金での受け取りの場合、受け取り回数が多くなるため、手数料もかさむことになります。この点も考慮にいれておきましょう。
iDeCoの受取額はいくらか、会社からの退職金はどれくらいあるか、公的年金などの雑所得以外の所得はどのくらいあるか、いつから受け取るか…といった点は、一人ひとり異なります。
事前にシミュレーションをし、どの受け取り方が税制上最も有利かを検討したうえで、決定するのがよいと思います。
次回は、いくつかのパターンごとに、税額がどうなるか、どのような受け取り方が有利か、といった点を検討してみたいと思います。併せて税金以外の観点での、受け取り方法の選択についても考えていきます。
>差がつくiDeCoの受け取り方法(後編)パターン別の有利な方法とは?
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