豪ドル/円およびニュージーランド/円の相場は、先週のレポートで書いたように「強力なトレンド相場からノーマル相場(調整相場)に移行」していた。26日の標準偏差ボラティリティやADX(方向性指数)が下げ始めたからだ。標準偏差ボラティリティとADXの両方がピークアウトした場合、概ね値幅(下押し調整)か日柄(横ばい調整)での調整相場となる。

しかし、この調整相場は短期間で終わる可能性が出てきている。カナダ/円・ポンド/円など一部のクロス通貨では、相場が今年の高値を抜いてきているからだ。現在、海外のファンド勢は、カナダ/円・豪ドル/円・ポンド/円(資源通貨絡みのクロス/円)を猛烈な勢いで買っている。

2月以降の最強通貨であるドル/円やカナダ/円の相場は、「高い位置にある標準偏差ボラティリティが再び持ち直す」という、すさまじい勢いのバブル相場となっている。

ドル/円(日足) イケイケドンドン! 理屈が引っ込むバブル相場

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

カナダ/円(日足) 標準偏差ボラティリティが再び上昇、ひと相場でトレンド指標のダブル・ループ(再上昇)が起こる可能性が出てきた

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足) 乱高下しながら横ばい調整中

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

ニュージーランド/円(日足) 乱高下しながら横ばい調整中

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

ユーロ/円(日足) 乱高下しながら横ばい調整中

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

ユーロ/ドルは2月29日の2回目の資金供給以降下げ方向に向っているが、<ランダムに上下動しながら(振りながら)上げ下げする>ので方向感を掴みにくく、売買しにくい通貨となっている。

日足の26日標準偏差ボラティリティやADXの動きをみると、相場の方向感はないと言ってもよいだろう。ユーロ/ドルの日足は投機筋の損切りが主体の相場(投げと踏みの応酬)となっており、ユーロ圏の堂々巡りの報道を映しているかのようだ。

ECBの政策とユーロ/ドル(日足) 2月29日の3年物オペ以降ユーロ売りの流れに


(出所:石原順)

ユーロ/ドル(日足) そろそろ方向性が出そうだが…

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

それでは、ユーロ/ドル相場に収益機会はないのであろうか? 昨年のトリシェショック以来、ユーロ/ドル相場の日足取引は儲けにくくなった。ユーロ危機が本格化するなかで、「市場が煽る危機」と「当局の対策」の繰り返しが今も延々と続いているからだ。しかし、タイムフレームを変えて「日足」から「週足」に目を転じると、ユーロ/ドル相場の景色ははずいぶんと変わってくる。

下のチャートはユーロ/ドルの週足チャートである。MSエクセルのチャートに14週ADX・26週標準偏差ボラティリティ・9週RSIを表示している。このチャートでは9日RSIが60以上になると桃色のシグナルが表示され、40以下になると水色のシグナルが表示される。「桃色が買い相場で、水色が売り相場」というトレンド認識となるが、実践的な売買では「シグナルと同時にADXと標準偏差ボラティリティが上昇している」ことが必要条件となる。

ユーロ/ドル(週足)トレンドの発生(緑)・トレンドの消滅(黄)

日足より明確なトレンド波形、2012年は年初から現在まで調整局面が続いている
上段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13週移動平均線(赤)・21週移動平均線(青)・21週ボリンジャーバンド1σ(茶)
9週RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

RSIは逆張り指標として使われるのが一般的だが、筆者にとってRSIは基本的に順張り指標である。RSIが買われすぎや売られすぎにならないような相場は、しょせんは「せこい相場」と言えよう。現在、ユーロ/ドル相場は日足でも週足でもトレンドが出ていないので、筆者は次のトレンドが発生するのを待っているところだ。

相場に絶対の法則はない。この世に楽な金儲けはないのである。相場とはつまるところ、確率に賭けるゲームである。そして、確率に賭けると同時にストップロス注文を置くべきである。この2つのことを、ことさらに強調しておきたい。また、取引するタイムフレームが長くなるほど、相場の不確実性は増していく。週足で取引すると儲けも損も大きくなる。従って、大きなレバレッジを掛けてはいけない。

同じ手法でドル/円相場の週足を見てみよう。ADXと標準偏差ボラティリティが低い位置から同時に上昇している現在の相場は、最高のトレンド相場である。トレンドが発生したと思ってポジションを取ったものの、トレンドが早期に消滅した局面も多い。加えて、週足のトレンドのいうのは、週足という性格からいって年に何回もトレンドが発生するものではない。それでも筆者が週足チャートに注目するのは理由がある。大きなトレンドに乗るためには、日足と同時に週足の観測が欠かせないからだ。

ドル/円(週足)  トレンドの発生(緑)・トレンドの消滅(黄)

現在、最高のトレンド相場を展開中
上段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13週移動平均線(赤)・21週移動平均線(青)・21週ボリンジャーバンド1σ(茶)
9週RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

週足RSIを使った上記の手法は、筆者が中期タームの売買で使っているシンプルな取引手法である。あくまで相場の中期トレンドを観る場合の<参考アイデア>として紹介しており、この手法を使えば儲かるという話をしているのではないことを断っておく。また、RSIの計算式は「2種類」あり、筆者が使用しているRSIは「鈍感バージョン」(相場に対して過敏に反応しない)の方である。

さて、3月13日のFOMCの結果を受け、QE3観測が後退している。これはドル買い要因だ。欧州は12月と2月の3年物資金供給で合計100兆円もの量的緩和を行っている。これはユーロ売り要因である。日本は2月14日のインフレ目標政策発表で、ようやく金融緩和路線に入る。追加緩和の姿勢(マネーの量)から言えば、ドル高・ユーロ安・円安の流れとなるのがロジックだ。

FRBの資産(週足) 単位:100万ドル

QE2以降横ばい、現在QE3観測も後退している


(出所:石原順)

ECBの資産(週足) 単位:10億ユーロ

ドラギマジックで3兆ユーロというFRBを超える資産額に急拡大


(出所:石原順)

日銀の資産(週足) 単位:10億円

リーマン危機後何もせず(円高の原因)、周回遅れでこれから緩和へ。4月27日には追加の緩和も?


(出所:石原順)

2月9日のレポートに「この先、ドル/円が本格的に上昇するには米金利が上昇する必要があるが、米30年国債のチャートは金利下げ止まりの形状となっている。相場がさらにバブルしてきて、逃避の米国債買い(安全資産買い)ポジションが減少に向うようだと、米金利のリバウンドが起こるだろう。米国債トレーダーは、「リスク選好で米国債市場から他市場にカネが流れつつある」と語っている。来年の2013年に利上げ(出口)を予測するトレーダーも出てきている。QE3の後ズレ観測と共に、ドル/円の上昇を後押しする材料となるだろう」と書いたが、米国の長期・超長期金利はリバウンド相場に入った可能性がある。

米30年国債金利(日足) 過去5カ月のレンジをブレイク


(出所:石原順)

ドル/円は2010年からの円独歩高相場の円高分の38.2%戻し水準を突破し、この先は半値戻し水準の85円まで大きな抵抗が無くなっている。60カ月移動平均線の-10%乖離水準も85円となっている。この先、米国の金利が上昇に向うようだと、投機筋は85円をトライしに行くだろう。もっとも、バブル相場なので下値警戒もお忘れなく!

ドル/円(月足) 2010年高値と2011年安値のフィボナッチ・リトレースメント


(出所:石原順)

ドル/円(月足) 60カ月移動平均 ±10%乖離(緑)・±20%乖離(青)・±30%乖離(赤)

-10%乖離水準へ揺り戻し中


(出所:石原順)

ドル/円(日足) 支持線・抵抗線

2010年の高値・安値のリトレースメント(青)・フィボナッチファンライン(赤)・ギャンアングル(緑)


(出所:石原順)