4月のビットコインイベント
NEW! 4月6~9日 | Bitcoin2022がマイアミで開催。昨年はエルサルバドルのBTC法定通貨化が発表されたが、今年はやや期待外れの声も |
NEW! 4月19日 | オーストラリアで初のビットコイン・イーサリアムETFが承認 |
NEW! 4月27日 | 中央アフリカ、ビットコインを法定通貨に採用 |
2022年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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急落のきっかけは「ステーブルコインUST不安」
BTC(ビットコイン)市場は5月12日に昨年1月につけた安値2万8,000ドルを割り込み、一時2万5,000ドル台まで値を下げたが、おおよそ3万ドルをネックにするヘッドアンドショルダーを形成して、下げ止まり感が浮上している。同時に話題のNFT市場や*DeFi市場**でも変調が起こっている。この背景と今後の展望について解説したい。
NFT市場*…(Non-Fungible Token:非代替性トークン)。偽造できない鑑定書・所有証明書などがついた「デジタルデータ」のこと。暗号資産と同じく、ブロックチェーン上で発行&取引される。
DeFi市場**…分散型金融(Decentralized Finance:ディファイ)。ブロックチェーン「スマートコントラクト」上の金融サービスで、金融機関の管理や仲介が不要なため、透明性や利便性が向上すると期待されている。
USTドルペッグ崩れる
今回の下げの直接的な原因の一つはステーブルコインTerra USD(UST)のペッグ(連動)離れだ。USTはTerraform Labsが開発したテラ***というブロックチェーンで発行されるステーブルコインで、アルゴリズム型と呼ばれ、同じくテラのネイティブトークンであるLUNAとの交換により価格を維持する仕組みとなっていた。
1UST=1USDで取引されていたが、質への逃避的な流れが強まった5月9日に両者の関係が崩れると1UST=0.1USD近辺に下落した。時価総額2兆円以上あったステーブルコインの価格維持に失敗したことで暗号資産市場に戦慄が走った。
これを支えるはずのLUNAの価格に至っては100万分の1に暴落、3兆円以上あった時価総額が数日でほぼ消滅する事態を受け、市場全体に信用不安が広がった。
このUSTとLUNAの関係は複雑でわかりにくい。例えるならば、ETH(イーサリアム)のブロックチェーンのネイティブトークンがETHで、同チェーンのスマートコントラクト機能を使ってテザーを発行する仕組みに似ているが、その裏付け資産というか価格安定をETHとの交換で行っているイメージだろうか。
そんなことをしたら、ETHの価格が下がったら、そのステーブルコインの価格が維持できなくなる。市場で認められてきたETHならばまだましかもしれないが、何の実績もないLUNAで価格を維持することなどかなりハイリスクだと気づきそうなものだが、実際、LUNAの価格が暴落してUSTは価格維持ができなくなった。
テラ(LUNA)*** …米ドルや韓国ウォンをはじめとした各国の法定通貨の価格に連動する「ステーブルコイン」を発行するプロジェクト。
そうならないように、LUNAの価格を守るためにBTCを約8万400BTC購入し話題になっていたが、これもBTC価格の下落により(おそらく)含み損が発生する状況となり、信用不安に油を注ぐ格好となった。
▼DeFiやNFTにも飛び火
この問題は、これまで調子のよかったDeFiやNFTにも飛び火した。退屈そうなサルのデジタル画像が何千万円で取引されていたBAYCを保有するともらえるトークン、ApeCoin****は1日で半分近くに価格が下がり、DeFi PulseによればDeFiにロックされている暗号資産の時価総額は5月11日から13日の2日間で678億ドルから567億ドルに16%減少した。
ApeCoin**** …高値で取引されている人気NFT「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」に関連する暗号資産。
USTとLUNAの関係を分かりやすく記述しようと試みたが、それでも上記を一読で理解できるのは、よほど暗号資産市場に精通した方だと思われる。
それほど両者の関係は複雑なのだが、うがった見方をすれば、わざと分かりにくく、複雑にしているきらいもある。リーマンショックのきっかけも、そうして複雑化した商品の隠れたリスクが顕在化したことだった。
金融の言葉で説明
ただ、実は、これらの問題は「古くて新しい」というか「新しいが古典的」な問題がいくつか絡み合っているだけで、それらをひもとくと、金融界で今まで何度も繰り返されてきた問題に行きつく。以下では、金融界で何度も繰り返されてきた事件を例に、今回の出来事の説明を試みたい。
サブプライムショック
商品を複雑にし、レバレッジをかけ、最後は何のリスクを取っているのか、ウォール街の専門家でさえ分からなくなってしまった代表例がサブプライム問題とリーマンショックだ。そこまでいかなくとも、銀行はあれこれと複雑なデリバティブ商品を組成しては、少しでも手数料収入を高くしようと試みる。
取り付け騒ぎ
さらにUSTはAnchorという専用のDeFiで、2021年3月から年利20%近くの利回りで資金を調達していた。私が本邦銀行の大阪支店で預金集めをしていたころ、担当地区の信用組合が高金利商で預金を集めていて、お客さんにお宅の金利は安いと嫌味を言われていたが、東京の信組が破綻した後、同組合でも取り付け騒ぎが発生、外訪中に目のあたりにした。
ポンジスキーム
DeFiには将来性や可能性が大きく、交換所に納めていた手数料を参加者で分配するなど優れた仕組みもあるが、先にお金を払えば、後から払う人のお金の一部がもらえる、といったスキームに近いものもあるようだ。
ドルペッグ
ステーブルコインについても誤解が大きい。「お金」の本質は信用で、裏付けとしてお金を預けているか否かはあまり関係ない。ステーブルコインがステーブルであるためには「ドル(法定通貨)にペッグ」していると信用されることが重要で、それは一定の価格で誰かが無制限に介入して守ってくれるという信用だ。これは為替を長くやっていれば自明なことだ。
イングランド銀行を負かした男
そして、このペッグ価格は常に投機筋に狙われてきた。ブレトンウッズ体制では何度も破られたし、英国がユーロに参加していないのはジョージ・ソロスにユーロ参加国通貨とのペッグを破られたからだ。
アジア通貨危機
そして、その通貨を買い支える介入資金が足りないことが知られると投機筋の餌食となる。アジア通貨危機もタイバーツの外貨準備がスワップで水増しされていることが市場にばれたことがきっかけだった。
自転車操業
こうした歴史を踏まえて、今回のUST事件を捉えると、意図的か意図的でないにせよ、複雑なスキームでリスクを分かりにくくしてお金を集めようとしたこと、高利回りで自転車操業に近い形で資金を集めていた時点で、このプロジェクトの安全性は脆弱(ぜいじゃく)だった。
ハイリスク運用
さらに、ステーブルコインのペッグを守る、よりどころとなるLUNAの準備資金をBTCで運用してしまった。その値上がり益で準備不足を補おうとしたのか、その意図は分からないが、高金利でお金を集めて一発逆転のハイリスク運用をして、その運用に失敗して信用不安を引き起こし、最後は取り付け騒ぎに陥(おちい)るケースを我々は嫌というほど見てきた。
マクロ要因から説明
ドル回収
そしてマクロ要因からみても、典型的だ。すなわち、FRB(米連邦準備制度理事会)が世界中に供給したドルを回収に動き、市場では株が下落、債券が上昇(金利低下)する「質への逃避」的な動きが発生していた。
▼質への逃避
質への逃避相場では、市場は脆弱なもの、流動性が低いものを探して弱みを突く傾向がある。上昇相場では目立たない傷が目立って見えるからだ。
▼弱いものが狙われる
為替でいえば経常収支が赤字のエマージング国通貨、債券ではジャンク債や仕組債が大きく下げがちだ。そうした中、暗号資産の中でも脆弱性が問われていたUSTとLUNAに売りが集中したのも自然な動きで、次にDeFiやNFT銘柄に売りが波及したのも既視感がある。
回復の兆しと今後の展望
テザー売り
この動きで最後はステーブルコインの筆頭格であるUSDT(テザー)が一時94セントに値を下げたがすぐさま値を戻した。運営側は発行時に1テザー=1ドルを受け取っているので、94セントで1テザーを買い戻しバーンすれば6セントの利益となる。
テザーが戻ったことは当たり前なのだが、それで市場の動揺は少し落ち着いてきている。もう一度金融の言葉で説明すると、金融引き締めで質への逃避が発生、流動性が低く、リスクが高い資産にプレッシャーがかかる中で、問題があるプロジェクトが市場の攻撃に屈した。
しかし、同じステーブルコインでも比較的きちんとしているプロジェクトにも攻撃の手が及んだが、跳ね返されて落ち着きを取り戻しているというのが現状だろうか。
BTCが反発した理由
ところで、テザーに信用不安が走った時、何が買われるかご存じだろうか? テザーを売ってドルを受け取ればいいのだが、投資家がテザーを保有する大きな理由のひとつが、自由にドルを売買できないから。
しかし自国通貨に戻したのではわざわざテザーを購入した意味が薄れる。そこで、彼らは、暗号資産の中で最も流動性が高く、最も信頼性がある、BTCを購入する。金融市場では弱者であるBTCも、暗号資産市場では圧倒的な強者だからだ。
バブルの歴史
暗号資産市場は、ICOブーム、DeFiブーム、そしてNFTブームとバブルの歴史だった。その革新さ故に多少どうかな…と思うプロジェクトでも投資家を惹きつけすぎてバブル的な動きにつながってしまっている側面もある。
ITバブルや崩壊やリーマンショックを乗り越えた中からGAFAが生まれたように、ICOブームとその後の崩壊を経て不健全なプロジェクトが淘汰(とうた)され、いくつかの有力なプロジェクトがプレゼンスを高めている。DeFiもNFTもこうしたストレスを乗り越えながら、本物のプロジェクトが生き残っていくものと考える。
2022年 時事イベントと仮想通貨の出来事(最新順)
4月4日 | ウクライナへの仮想通貨で集まった寄付金、約123億円を超える E・マスク氏(テスラCEO)、Twitterの筆頭株主に。取締役にも任命される |
3月29日 | Axie InfinityのRonin Networkで大規模ハッキング |
3月22日 | 世界最大のヘッジファンド「Bridgewater Associates」、暗号資産ファンドに投資開始か |
3月17日 | FOMC、0.25%利上げ発表でビットコイン上昇 |
3月9日 | デジタル資産に関する米大統領令を好感 |
2月28日 | 米、ロシア中央銀行の資産を凍結。ルーブル安からBTCに逃避フロー |
2月27日 | 米欧、ロシアをSWIFTから排除 |
2月25日 | プーチン大統領、軍事攻撃を命令 |
2月20日 | 北京五輪閉幕 |
2月17日 | 米大統領、ロシアが数日中にウクライナ侵攻 |
2月12日 | BlockFi**、SECと1億ドルで和解。米国内でのレンディングサービス困難に |
2月4日 | 北京五輪開幕。当面、軍事衝突が控えられるという見方でBTC上昇 |
1月31日 | 春節の連休入り(大みそか)。例年BTCが強い時期 |
1月26日 | プーチン大統領、中銀の暗号資産禁止に同意せず |
1月20日 | ロシア中銀が暗号資産のマイニング*と流通の禁止を提案 |
マイニング*とは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。
BlockFi**とは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。
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