18歳から投資が始められるように

 2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられたことで、高校3年生になったら証券口座を開設して、株式投資ができるようになりました。

 高校の家庭科でも、資産運用や金融商品に関する授業が始まっています。

 とはいえ、18歳で株を買えるようになったからといって、10代や20代の若者には、株に投資できる資金がまだ少額しかないはずです。

 そこで、お小遣いやバイト代の一部など少額でも投資でき、かつ資産形成や経済・金融の勉強にも役立つ「少額資金銘柄」を選びました!

1万円以下の少額資金でも投資はできる!

 日本を代表する東京証券取引所(「東証」と略して呼ばれています)に上場している企業の数は3,823社に達します。

 ただ、日本の株式市場では、市場で売買できる最低の株式数は一般的に100株単位です。

 例えば、株価500円の株を買いたいと思っても、1株500円で買うことはできません。100株が「最低売買単位」のため、500円×100株=5万円の資金が必要です。

 楽天証券は、自分が買いたいと思う条件に合った株を探せる「スーパースクリーナー」という銘柄検索ツールを無料で提供しています。このツールを使って検索すると、予算1万円以下で買える上場企業は62社しかありません。

 100株の価格が1万円以下なので、株価は100円以下。業績不振で株価が長期的に下がり続け、ついに100円以下まで値下がりしてしまったという企業が多く、初心者の方が初めて購入するにはリスクが高すぎる面があります。

 ただし、多くの投資家から少額の資金を集めて、まとまった大きなお金にし、日本や世界各国の株式に分散投資する「投資信託」なら、話は別です。楽天証券をはじめ多くのネット証券では、たった100円の少額資金から投資信託を購入可能です。

 株式市場で普通の株と同じように取引できる「ETF」(イーティーエフ:上場投資信託)も少額から購入可能です。

 ETFはさすがに100円から購入できませんが、1万円以下の少額資金でも、世界中のさまざまな株価指数に投資できます。

1万円以下の少額資金で投資できるETF編

 株価指数は、株式市場全体や特定の銘柄群の値動きを表すように設計されたもの。金融情報会社などが、その市場に上場する企業から数十~数千社を選び、それらの企業の株価全体を反映するように指数化したものです。

 日頃、テレビのニュース番組で、「本日の日経平均株価は何円でした」「米国のNYダウは何ドルでした」といったフレーズを耳にしたことがありませんか。

 そこで使われる「日経平均株価」は日本経済新聞社が日本の優良企業225社の株価をもとに算出した株価指数。「NYダウ」は米国の優良企業30社で構成された株価指数なのです。

 こういった株価指数に連動するETFなら1万円以下でも購入できます。

 まだ若い高校生、大学生の投資家が、個別の有望企業を独自に分析して、株を買うのはかなり難しいこと。「株式市場全体をまるごと買える」ETFや投資信託なら、難しい銘柄選びは不要です。初心者が「株式投資とはどのようなものか?」を実際に体験し、経済や金融の知識を広げる「入門編」としてもぴったりです。

 1万円以下で買えるETFの中で、投資の勉強を兼ねて買うのに適したものには、以下のような銘柄があります。

1万円以下の資金で買えるETF(上場投資信託)

銘柄名(銘柄コード) 株価 いくらから買える? 企業情報
NF TOPIX Core30(1311) 890.7円 8,907円(10株) 「TOPIX(東証株価指数)コア30指数」に連動するETF。このETF1本で日本のトップ企業30社の株全体に投資できる。野村アセットマネジメントが運営。
上場日経225(ミニ)(1578) 2,061円 2,061円(1株) 日本を代表する優良企業225社の株価を平均化した「日経平均株価」に連動するETF。1口2,000円前後から購入可能。日興アセットマネジメントが運用。
iシェアーズ S&P500米国株(1655) 365.3円 3,653円(10株) 米国を代表する株価指数S&P500に連動。米国の資産運用会社ブラックロック社が運営。初心者だけでなく、長期の資産運用目的に投資している中級者クラスの投資家も多い。
株価は5月12日時点

5万円以下で買える成長性の高い企業編

 株式投資の醍醐味(だいごみ)は買った株の株価が、買値よりも上昇して値上がり益を得ることです。そのためには、投資した企業がビジネスを拡大して成長を続けないといけません。

 企業が成長する原動力となるのは「売上高」です。売上高が右肩上がりで伸びているということは、その会社の提供する商品やサービスを購入するお客が増えて成長が続いているということ。

 売上高が伸びていけば、たとえ現状は赤字経営が続いていても、やがて利益も出るようになります。

 そこで、5万円以下の少額資金で買える銘柄の中から、過去2年間と今期予想の売上高の伸びが平均して10%を超えている成長企業をスーパースクリーナーで検索。その中から、若い人がよく利用している製品・サービスを提供する企業を選びました。

 自分が身近に観察できる企業なら、会社の勢いや業績の成長ぶりも実感できるはずです。

 成長企業を見極める目を磨く意味でも、少額資金から投資してみると、投資の勉強にもなるでしょう。

5万円以下で買える成長企業の一例

銘柄名(銘柄コード) 株価 いくらから買える?(100株) 企業情報
出前館(2484) 462円 4万6,200円 出前仲介サイト「出前館」を運営。先行投資で赤字が続くものの、加盟店が10万店を突破し成長が続く。
ハブ(3030) 456円 4万5,600円 英国風のパブ「HUB」を展開。コロナ禍で打撃を受け、赤字転落したものの、欧米人の人気が高く訪日外国人の入国再開なら追い風。2月に100株保有で1,000円の飲食券がもらえる株主優待制度もある。
Chatwork(4448) 396円 3万9,600円 中小企業向けのビジネスチャットツール「Chatwork(チャットワーク)」を展開。先行投資で赤字が続くものの有料会員が順調に増えている。
BASE(4477) 295円 2万9,500円 個人、小規模事業者が簡単にショップを開設できるネット通販サービスを運営。TVコマーシャルも有名で、2025年度の黒字化を目標に投資を継続。
三菱自動車工業(7211) 361円 3万6,100円 自動車メーカー中堅。成長企業とはいえないものの、米国向けSUVなどが円安で好調。EV軽自動車など電気自動車の普及が成長源。
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5万円以下で投資できる優良企業編

 投資信託やETFではなく、普通の優良な個別の上場企業の株を買うには、数万円~十数万円の投資資金が必要です。

 株式投資には、株を買ったあと、株価が下がって値下がりしてしまうリスクがあります。個別企業の株の場合、業績不振が続いたり、財務内容に問題があったりすると、最悪、その会社が破たんして投資した資金がゼロになるリスクもあります。

「この企業は大丈夫か?」「今後、業績が伸びて株価が上昇しそうか?」、自分なりに判断し、有望と思える銘柄を慎重に選ぶ必要があるのです。

 特に、企業規模が小さく、投資家からの評価が低い中小企業の株は業績悪化や不景気などの影響を受けやすくなります。

 株式市場で会社の規模を見る基準として有名なのが「時価総額」です。株価に、その企業が発行している発行済みの株式数をかけて計算します。

 いわば、株式市場で投資家がつけた「会社のお値段」。それが時価総額です。

 時価総額がある程度以上の企業なら規模も大きく、投資家から一定の評価を得ているので株価も安定しています。時価総額は大きいほどいいですが、そういった大企業は株価水準も高く、10万円以下の少額資金ではなかなか投資できません。

 そこで、5万円以下の資金で買える株の中から時価総額2,000億円以上の銘柄を、スーパースクリーナーで検索。前期の経常利益がプラスで業績に問題がなく、若い人でも知っている企業を厳選したのが下の表の銘柄です。

 当然、こうした優良企業の株でも株価が下落して損してしまう可能性はあります。ただ、ある程度の規模があり投資家から評価を得ている企業ですので、長期的に見ると株価が値上がりする可能性もあります。

 また、業績が安定しているので、企業が毎年稼いだ利益の一部を株主に還元する「株主配当金」を受け取ることもできます。

資金5万円以下で買える時価総額2,000億円以上の有望株の一例

銘柄名(銘柄コード) 株価 いくらから買える?(100株) 企業情報
Zホールディングス(4689) 418円 4万1,800円 LINEやYahoo! JAPAN、アパレルネット通販ZOZOを子会社に持つインターネット企業。配当利回りは1.33%。
ENEOSホールディングス(5020) 467円 4万6,700円 国内最大の石油元売り会社で、ガソリンスタンドを全国展開。配当利回りは4.71%。
セブン銀行(8410) 241円 2万4,100円 コンビニ「セブン-イレブン」の親会社が大株主の銀行。ATM手数料が安定した収益源。配当利回り4.56%
オリエントコーポレーション(8585) 123円 1万2,300円 「オリコ」ブランドのクレジットカード会社。自動車ローンが収益の柱。配当利回り3.25%。
ヤマダホールディングス(9831) 448円 4万4,800円 日本最大の家電量販店「ヤマダ電機」を展開。100株保有で年間1,500円分の買物券がもらえる株主優待制度もある。配当利回りは4.01%。
株価は5月12日時点。配当利回りは今期の1株あたり予想配当金額を5月12日時点の株価で割って計算。

5万円以下で買える若者が利用しやすい株主優待株

 株主になってくれた「お礼」に企業が自社商品や買物券を贈呈してくれるのが株主優待制度です。優待品をもらって生活に役立てながら、株を長期保有することで株主配当金も毎年もらえます。

 日々の生活でよく利用する企業なら自然と親しみや愛着も生まれ、長期投資することで株価の上昇にも期待が持てます。

 そんな株主優待株の中には5万円以下で投資できる銘柄もたくさんあります。

 株主優待制度を導入している企業にはコロナで打撃を受けた外食、小売、アパレル産業も多く、株価が低迷している銘柄もかなりあります。

 ただ、コロナ明けで今後は業績の持ち直しに期待できるのも事実です。

 そこで5万円以下の少額資金で投資できて、10代、20代にもなにかと役立つ優待制度を導入している企業を紹介します。

 株価の安い銘柄は「低位株」と呼ばれ、業績面で不安要素のある銘柄も多いので注意が必要です。

 紹介する銘柄は、コロナ禍で打撃を受けているものの、負債の比率が少なく、自社で保有する資金の比率が高い(「自己資本比率」と呼びます)企業。財務力が高いので、破たん懸念が少ない会社といえます。

5万円以下で買える株主優待株の一例

銘柄名(銘柄コード) 株価 いくらから買える?(100株) 企業情報
クックパッド(2193) 240円 2万4,000円 料理レシピサイト国内最大手。生鮮食品のネット販売や海外事業に進出。高い財務力(自己資本比率88%)で新たな成長事業を模索中。12月末に100株保有で自社サイトプレミアムサービス6カ月無料クーポン贈呈。
ピーシーデポコーポレーション(7618) 301円 3万100円 パソコン関連の量販店を首都圏中心に展開。デジタルサービスを行う有料会員制度が成長中。3月末に100株保有で、1,000円相当の店舗買物券が贈呈される。
ナカバヤシ(7987) 481円 4万8,100円 アルバム、シュレッダーなどを手がける文具会社大手。企業内の事務作業を請け負うBPO事業が収益源。3月末に100株保有で、自社製品(手帳など)1点が贈呈される。
株価は5月12日時点

 

少額資金から株式投資を始めて、コツをつかもう!

 少額資金で買える株は、業績が回復したり、新商品・サービスがヒットしたりすると、株価が大きく上昇する可能性もある点が魅力です。

 なにより、月々のお小遣いやバイト代からでも手が届くので、株式投資に慣れるきっかけを与えてくれるでしょう。

 株式投資で成功するためには、日ごろから経済やビジネスの情報入手を欠かさないこと。

 若いうちから少額資金で株式投資して得た経験や知識は、今後の資産運用や日々の仕事や生活にも役立つはずです。

 何事も「習うより慣れよ」。まずは少額資金でもいいので実際に株を買ってみて、投資の楽しさ、面白さを体験することから始めましょう!