投資アカウントが複数あるのはもはや当たり前

 みなさんは投資アカウント、いくつ持っているでしょうか。数えてみるとたくさんあると思います。

 まずは単純に複数の証券会社の口座を開設している人がいます。資産残高ゼロという口座も含めるとたくさん、という人は少なくないはずです。

 FXや仮想通貨取引のために口座を別につくっている人もいるでしょう。銀行取引の延長で積立投資をしたとき、銀行系の口座をさらに持っている人もいます。ロボアドバイザーも別口座になっていることがあります。

 NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)も厳密にいえば別口座です。証券総合口座と一体で表示されることが多いものの、税制優遇をみれば別口座といえます。iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は完全に別アカウントとなっています。

 これに会社の退職金や企業年金、企業型DCの口座を加えると、さらに口座数は増えていきます。

 さて、あなたはいくつ口座があって、「今全体でどれくらい資産を保有しているか」が一覧できる状態にあるでしょうか。

「口座=投資商品や目的」と固定しすぎないことが大事

 複数の口座を持つことはもはや避けられない時代といえます。どんなに少なく整理したとしても「銀行」「証券会社」「iDeCo」「NISA」と4つは必要でしょう。

 このとき、複数の口座保有を「愚」とするか「賢」とするかがポイントになります。

 大前提として「全体でいくらあるかよく分からない」となるようでは、複数口座を保有することが管理を難しくしていることになります。

 また、行動ファイナンスで指摘される、メンタルアカウンティング(心の会計)のマイナス部分に陥らないように留意する必要があります。

「口座=目的」となることで思考停止することがしばしばあります。例えば、「本来の老後資金準備額」というものを抜かして「iDeCoに満額積み立てていれば老後は安心」のようなイメージを持ってしまう場合です。本来はもっと積立額をアップする必要があるかもしれません。

 あるいは「A証券口座で運用が好調である」ということだけをみて、全資産を俯瞰(ふかん)しないような検証をしてしまうこともあります。

 例えばアクティブに運用を行う口座が20%強のパフォーマンスをあげても、自分の全資産の10%程度しかそこに入金されていなかったとしたら、「全体での運用成績」に与える影響は2%です(それでも全体のリターンを押し上げたり、全体としてはリスクを抑えているといった意義はありますが)。

 複数口座を持つ場合には、個別の口座の状況把握だけではなく、全体としてもチェックをしたいものです。

アプリを使って全体把握をしてみよう

 資産状況を一元的に把握する方法として、アプリを使った一元管理があります。

 まず家計簿アプリです。近年は口座連携機能(アカウントアグリゲーション機能)の強化が進んだことで、半自動記帳できるようになりました。銀行口座、クレジットカード、電子マネーやECサイトのアカウントを連携することで消費履歴が自動記帳されます。

 実はここに、証券会社の口座や、FX、仮想通貨の取引口座、直接購入している投信会社、確定拠出年金口座などの情報も連携させることができます。

例)マネーフォワードMEZaim

 これ以外にも、OneStock、kaView、おかねのコンパス、など投資アカウントの連携に注力しているアプリも増えてきています。OneStockなどはシミュレーション機能なども有しており、資産運用の管理アプリとして地歩を築きつつあるようにみえます。

 いくつか試してみると「全体でこれくらい」というのが分かるようになり、急落時などにもざっくり把握できるのは便利です。

 今はまだ、群雄割拠時代で、バージョンアップによる進化も続いている状況ですが(新アプリが登場することも考えられる)、いくつか試してみてはどうでしょうか。

「あえて一元把握しない」という手もあり

 基本的には、今回のコラムの中身はここまで、なのですが、ちょっと変化球も最後に加筆しておきたいと思います。それは「あえて一元把握しない」アプローチです。

 これは私が全資産を一元管理してみたときの感覚なのですが「あれ、オレ金持ちじゃん?」と油断してしまう感覚があることに気がつきました(いや、実際にはそれほどすごい資産ではないのですが)。

 これは「見えてしまうがゆえの油断」というのでしょうか。節約の覚悟が緩むような感じがしました。そこで、「全資産を把握するアプリ」と「家計簿の領域にとどめるアプリ」を使い分けるなどして、自分の気持ちをコントロールしています。

 私たちは会社の退職金の現在価値が1,000万円あろうと2,000万円あろうと、それで油断することはありません。これは「見えにくい」からです。見える化しようとここまでは述べてきたものの、見えることでの弊害が生まれる可能性もあります。

 ひとつの方法として「マイナスの資産」も把握する方法が考えられます。住宅ローン残高などをあえて入力すれば「ローン残高マイナス○○万円」がiDeCoやNISAの資産を相殺して、油断を防いでくれるかもしれません。

 あるいは私が行っているように、「あえて、同一アプリに全資産を全て統合しない」という方法もあります。

 このあたりは、皆さんのメンタルにも左右されます。まとまったお金が見えないほうがいい、という人は自分なりにコントロールしてみるのもいいでしょう。