利下げサイクルでユーロは売り

ユーロ危機は今年で3年目に入ったが、ユーロが「売る通貨」になったのは昨年の9月からである。トリシェ前ECB総裁が利上げ打ち止め示唆をした2011年9月からユーロは基本的に売りトレンドが継続している。マリオ・ドラギがECB総裁に就任した2011年11月からはユーロ売りトレンドがより明確になっている。2011年11月、12月に利下げが行われたが、2012年2月、3月にも利下げが噂されており、金利面からのユーロ売り基調は当面持続されるだろう。

ユーロ/ドル(日足) 昨年9月からユーロは売り通貨になった


(出所:石原順)

量的緩和でユーロは売り

12月21日にECBが行ったLTRO(longer-term refinancing operations)3年物の資金供給オペは、市場予測を大きく上回る523行のユーロ圏銀行が4,891億9,100万ユーロを借り入れる結果となった。これによって、ECBのバランスシートは過去最大の2兆7,300億ユーロとなった。量的緩和政策は通貨安を促すが、2月末に再びLTROが予定されている。マネーの量が増えるので、ユーロは売り通貨である。

ECBのポートフォリオ(資産サイド) 単位:EUR/Billion

ECBのポートフォリオが2兆7,300億ユーロに急増


(出所:石原順)

上記の2つの理由でユーロの中・長期トレンドは売りとなるが、昨日はユーロが大きく買い戻られた。ファンド勢が「ユーロキャリー取引の巻き戻し」(ユーロの買い戻し)に動いたからだ。「IMFが5千億ドルの融資枠拡大を提案する見通し」「ギリシャ債務削減交渉が合意に近づいた」など、ニュースのヘッドラインがユーロの買い戻しを加速させたようだが、これらのニュースの中身をよく吟味すると持続的にユーロが買われるような内容ではない。要するに単なるファンドの買い戻し相場である。

現在、金融機関から多くのユーロ売り推奨レポートが出ている。その内容だが、ユーロ売りを狙っている投機筋のターゲットは概ね1.26~1.22となっている。一方、ストップは概ね1.3~1.31の水準だ。大きな構造で言うと、現在のユーロ相場はそういった欲望と恐怖のゲームとなっている。

目先の焦点はユーロ/ドルの13-21日移動平均バンドの攻防だ。特にユーロ売りの急所となっている21日移動平均線を越えてくるのか否か、注目の攻防戦が現在展開されている。

ユーロ/ドル(日足) 13-21移動平均バンド(水色)

投機筋のターゲットとストップ・ポイント


(出所:石原順)

ユーロ/円(日足) 13-21移動平均バンド(水色)


(出所:石原順)

ユーロ豪ドル日足(左)とユーロ/ニュージランド(右)の13-21日移動平均バンド


(出所:石原順)

長期抵抗線の攻防で週足トレンドラインの上抜けに失敗したドル/円相場は、トレンドラインに跳ね返されて円高となっている。ただし、75円では介入が噂されており、投機筋は「また多額の介入をやられるとたまらん」ということで円買いも止めている。

ドル/円月足(左)とドル/円週足(右)の長期抵抗線

週足はトレンドライン上抜けに失敗


(出所:石原順)

以下のチャートはドル/円相場の変動相場制以降のチャートだが、過去の円高期間は最長で5年である。2007年半ばから始まった今回の円高は5年目に入るが、気味が悪くなるくらい長い円高期間が続いている。月足を見ていると、ドル/円相場が横ばい推移であっても、ここから2~3カ月で上値抵抗線を上抜いてきそうな気もする。しかし、これは時を待つしかない。

変動相場制移行後のドル/円相場(月足) 円高期間(黄色のゾーン)


(出所:石原順)