1980年代半ばから金融資本主義の時代がスタートし、その後は過剰なドルの運動であるバブルが発生しては崩壊するということの繰り返しを続けている。2000年以降の相場は「米国財務省・ウォール街複合体」の政策によって動いてきたが、今年の相場もFRBがどう動くかで相場が決まってくる。

金融資本主義を牽引してきた米国は住宅バブルの崩壊によって首が回らなくなっているので、2012年の相場は住宅PKOとなるQE3がいつ発動されるのかが焦点となろう。現在、米国株一人勝ちの状況のなかで量的緩和をペンディングしているが、株が下がればQE3は行われるだろう。

ユーロ危機は今年で3年目を迎えるが、PIIGSの国債の大量償還を迎える年前半で勝負が決まるだろう。イタリア国債の借り換えが成功するかが焦点となるが、そこでECBの介入が大胆に行われなかった場合は、米・英の報道によってユーロ崩壊の危機(売り相場)が演出されそうだ。

PIIGSの国債償還スケジュール(単位:10億ユーロ)


(出所:石原順)

現在の世界の経済情勢は政治や文化も巻き込んでカオス状態となっているが、相場はむずかしく考えると手が出なくなる。マネーは単純なロジックでしか動かないので、為替相場も出来るだけ単純に考えたい。

2000年以降の為替相場の底流にあるのは「金利差相場」である。以下のチャートを見れば一目瞭然であろう。これに米国の金融政策がからんで株高の時はクロス円が買われやすくなる。大雑把に言えば、それだけである。2012年も為替相場は概ね「金利差」に添って動くことになるだろう。

ドイツと日本の2年国債金利差(緑)・ユーロ/円相場(茶)


(出所:石原順)

ドイツと米国の2年国債金利差(青)・ユーロ/ドル相場(茶)


(出所:石原順)

今年の相場は今週末の雇用統計が終わってからの本格始動となりそうだが、昨年末からの相場はユーロ絡みの通貨が一番簡単である。欧州の不安を背景に、ユーロ/円もユーロ/ドルも「13-21日移動平均バンド」を越えられない相場が続いている。相場の状況や材料を考慮しながらではあるが、ユーロ/円やユーロ/ドルの「移動平均バンドゾーンの戻りを売る」というトレードと、ユーロ/豪ドルの「4時間足での順張り」トレードが現在うまくワークしている。

ユーロ/円(日足) 13-21日移動平均バンド(水色)

買い期間(緑)・売り期間(黄)押目買い・戻り売りポイント(矢印)


(出所:石原順)

ユーロ/ドル(日足) 13-21日移動平均バンド(水色)

買い期間(緑)・売り期間(黄)押目買い・戻り売りポイント(矢印)


(出所:石原順)

ユーロ/豪ドル(4時間足) ユーロ売り・豪ドル買い相場


(出所:石原順)

上に書いた「戻り売り手法」で注意したいのは、13日移動平均線の方向だ。下のチャートの1月3日の相場では、筆者はユーロ/ドルの戻り売りをしなかった。13日移動平均線が上を向いたからだ。1月4日の相場では、再び13日移動平均線が下を向いたので、戻り売りを行っている。この手法は日計り商いが基本で、利食いポイントは相場をみながら適当に行っている。言うまでもないが、「戻り売り」や「押目買い」という相場に逆らった逆張り行為は、必ずストップ・ロス注文を置かなくてはならない。

ユーロ/円(日足) 13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)

押目買い・戻り売りポイント(矢印)


(出所:石原順)

注目のドル/円長期トレンドライン(上値抵抗線)の攻防は、相場が抵抗線に跳ね返されて、77円50銭のテクニカルポイントを割り込んだため、1月4日には76円61銭まで円高進行となった。抵抗線に跳ね返されたことで、逆に75円55銭のドル安値も意識せざるを得ない相場となっている。抵抗線の78円と安値75円半ばのレンジ抜けの攻防である。筆者は昨年来、78円30銭に逆指し値のドル買いを置いたままであるが、投機筋の売り仕掛けと買い仕掛けのいずれが成功するのか、ここから2週間の相場で決着が付くだろう。

リーマン危機後のドル/円相場の周期的な安値は概ね10~11カ月の周期で到来した。昨年10月31日安値75円55銭はその周期的な安値であった可能性があるが、1月にリバウンドの円安が起こらないようだと、今年のドル/円相場の円高圧力は相変わらず強いものとなりそうだ。

ドル/円(週足) 長期抵抗線(赤)1月5日現在、78円近辺まで降りてきた

78円と75円50銭の攻防に


(出所:石原順)

ドル/円(月足) リーマン危機後、ドルの周期的安値は概ね10~11カ月で到来している


(出所:石原順)

ドル/円(月足) 長期抵抗線(赤)と20カ月移動平均線(緑)


(出所:石原順)