今年は企業や消費者とそれらのデータを狙うハッカー(サイバー犯罪者)との間で、いたちごっこが激化すると予想されます。2月末にはトヨタ自動車の主要取引会社がサイバー攻撃を受け、トヨタ自動車が国内⽣産を一時停止する事態となりました。

 また、ロシアによるウクライナ侵攻ではウクライナ政府に対してサイバー攻撃が仕掛けられるなど、サイバー攻撃のリスクが顕在化しています。

2021年にデジタル世界の脆弱性が明らかに

 現在、世界では1日に2.5クインテリオン(百京)バイト(1キロバイト=1,024バイト)のデータが生成されていると推定されています。その結果、ハッカーがこれまで以上に機密データへのエントリーポイントを得ることにつながっており、今後世界のデジタル化が進みデータ量が増加するにつれて、ハッカーがさらに多くの機会を得ることになると予想されます。

 特に、IoT(モノのインターネット)デバイスは、機密データへの絶好のアクセス経路となるでしょう。接続されているデバイスは2021年末時点で146億台にも上り、2027年には2倍以上になる可能性があります。

 また、経済が在宅勤務へ移行していることも、ハッカーにサイバー攻撃の機会を与えています。米国では2021年に新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウンが緩和されましたが、フルタイムの従業員のうち約45%が部分的に在宅勤務を継続しました。

 新たな変異株の出現や従業員自身の選択により在宅勤務制度は今後も維持される可能性があり、結果として当分の間データの脆弱(ぜいじゃく)性につながる可能性があります。

 2021年に発生したサイバー攻撃では、重要なインフラやサプライチェーンの混乱を招き、生活に影響が出たものもあります。例えば、米石油パイプライン最大手のコロニアル・パイプラインが攻撃を受けて一時操業停止を余儀なくされ、日常生活を脅かす事態となりました。

 重要なインフラやサプライチェーンへの攻撃を中心にサイバー攻撃の頻度とコストが増加し続けています。

頻発するサイバー攻撃がサイバーセキュリティへの投資を後押し

 企業、米国政府、消費者はサイバー脅威に対する認識が高まり、予防策に取り組む姿勢が明らかになっています。例えば、2021年に米国で行われた3,000人以上の経営者を対象とした最近の調査では、回答者の69%が2022年にサイバーセキュリティへの支出が増加すると予想しています。

 また、2021年7月にバイデン大統領は重要インフラ(特に電力、水、交通)へのサイバー攻撃を防ぐことを目的とした国家安全保障に関する覚書に署名しました。これらの施策は、「インフラ投資と雇用に関する法律」に反映されており、支出先が定められている17億ドルと潜在的な支出向けの約70億ドルの予算が、国家のサイバーセキュリティ向上に向けられています。

 グローバル経済のオンライン化が進み、機密データが危険に晒されるようになっていることから、脅威のレベルは今後さらに高まることが予想されます。結果として、サイバーセキュリティに対する意識と支出が高まり、サイバーセキュリティ市場は2026年までの5年間で約6割増加する見通しです。

高まるサイバーセキュリティテーマへの投資妙味

 世界中でデジタルへの移行が進む中、今後も同様の攻撃が発生する可能性が高まっています。しかし、この期間に得られたデジタル保護に関する教訓が、サイバーセキュリティサービスの導入をさらに加速させることになるとGlobal Xは考えています。

 ハッカーを阻止するための財政的なコミットメントはサイバーセキュリティ企業の追い風となり、サイバーセキュリティというテーマ全体の長期的な投資妙味を高めるとGlobal Xは見ています。

 以下のチャートは、指数会社が算出しているサイバーセキュリティテーマの株価指数(Indxx・サイバーセキュリティ・インデックス)と全世界株価指数(MSCI ACWI:オール・カントリー・ワールド・インデックス)を比較したものです。サイバーセキュリティテーマは良好なパフォーマンスを記録しています。

(ご参考:Global Xレポート『2022年も続くと予想されるサイバーセキュリティの脅威』