18歳から投資できるように。若者の資産形成が変わる

 2022年4月から、民法が改正され、成年年齢が140年ぶりに20歳から18歳に引き下げられました。これにより、18歳になったら親の同意がなくても証券口座を開設して、株式や投資信託に投資できるようになりました。

 高校の家庭科の授業では「分散投資」や「複利」といった資産運用の知識、投資信託の仕組みなど、お金に関する教育も始まっています。

 資産形成に有利なNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)に関しても、2023年1月からは18歳でも始めることができるようになります。

 月3,000円、5,000円といった少額資金でも、18歳からつみたて投資を始めれば、老後までの長い期間、複利運用することで資産を大きく増やすこともできます。

 日本人の資産づくりといえば貯金一辺倒でした。しかし、若いうちから投資について学び、実践すれば、資産形成の成果や効率も格段に向上するでしょう。

 投資を始めることで、経済やビジネス、お金に関する知識を得ることはその後の人生にとっても大いに役立つはずです。

株式投資の基本は「身近な企業」から

 18~20歳の若い人でも「この会社のことならよく知っている」と感じている身近な上場企業はたくさんあります。

 株式投資の基本は「自分がよく知っていて、日々利用しているような製品、サービスを提供している身近な会社」に投資すること。

 その企業が提供する製品やサービスに日々、接していれば、その企業のいい面、悪い面についても比較的簡単に判断を下せます。業績がいいか悪いかも、皮膚感覚でわかるでしょう。

「今、この会社の商品やサービスが世の中でとても受けている」といった情報をいち早く察知できれば、有利な立場で有望銘柄に投資することもできます。

 まずは中学生、高校生時代にお世話になった商品やサービスを提供する上場企業に注目することで、企業情報、株価、株主配当、株主優待といった株式投資の基本を学んでいきましょう。

身近な企業:スマホゲーム編

 若者にとって、最も身近なコミュニケーションツールといえばスマートフォン。スマホ上で人気のアプリを開発して課金収入を得ている上場企業は業績も非常に好調です。

「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」「モンスターストライク(モンスト)」「ウイニングイレブン(ウイイレ)」といったスマホゲームを知らない人は少ないはず。

 ただゲーム名は知っていても、そのゲームの運営会社はわからないという人も多いのではないでしょうか。

「パズドラ」はガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765)、「モンスト」はミクシィ(2121)、「ウイイレ」はコナミホールディングス(9766)という上場企業が運営。株式市場でその株を買うことができます。

 例えば、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765)の2022年5月10日時点の株価は1株2,576円。

 日本の株式市場では100株単位でしか株の取引ができないため、ガンホーの株を買うには2,576円×100株=25万7,600円の投資資金が必要になります。

 同社の株を長期保有すれば毎年、株主配当がもらえます。

 ガンホーの昨年(2021年12月期)の配当は1株あたり60円。100株保有していると6,000円(税引前)の株主配当がもらえました。

「パズドラ」を遊んでいて、その人気ぶりを知っている人なら今後の業績についても、なんとなく予想できるはず。なによりガンホーは「パズドラ」からの収益もあって借金が極めて少ない「お金持ち」企業。そのため、株価も安定しています。

 市場で購入するには資金が必要でハードルが高いですが、身近な人気アプリが有望な投資先になるということは覚えておいて損はないでしょう。

スマホゲーム運営企業一例

会社名(銘柄コード) 株価 いくらから買える?(100株) 企業情報
ガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765) 2,576円 25万7,600円 スマホゲーム「パズル&ドラゴンズ」の他、Nintendo Switch向けの「ニンジャラ」などの運営会社。
ミクシィ(2121) 2,253円 22万5,300円 スマホゲーム「モンスターストライク」が稼ぎ頭。J1サッカーチームの「FC東京」を子会社化するなどスポーツ関連の新規事業にも進出。
コナミホールディングス(9766) 7,570円 75万7,000円 スマホでも遊べる「ウイニングイレブン」「パワフルプロ野球」などゲーム事業の他、遊技場やカジノの関連機器製造やスポーツクラブも運営。
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コンビニ・ファストフード編

 日常的に利用していて、身近なお店といえばコンビニやファストフード店が思い浮かぶでしょう。

「セブン-イレブン」などのコンビニエンスストアや「マクドナルド」、「モスバーガー」といったファストフード店も運営会社が株式市場に上場しています。

 2019年に起こったタピオカブームを覚えている人も多いでしょう。

 タピオカ入りのミルクティーなどが東京、原宿などで中高生に熱狂的な支持を受けたことがブームのきっかけでした。

 このタピオカブームで業績を躍進させたのが、タピオカの原料を販売していた「業務スーパー」です。同社の運営会社である神戸物産(3038)の株価は、タピオカブームにも乗って上昇。2019年1月初めの795円から2021年9月末には4,660円まで5.8倍以上も上昇しました。

 このように若者に大ヒットした食べ物やお菓子をいち早く察知して、そうした身近な商品を販売している会社の株を買えば大きな利益を出すことも夢ではありません。 

株主優待も投資の魅力のひとつ

 日本の上場企業、特に外食産業には、株を保有するとそのお礼に飲食代金の代わりに使える飲食優待券がもらえる株主優待制度を導入している会社も多数あります。

 例えば、若者にとって最も親近感のある外食産業といえば「マクドナルド」。この日本最大のハンバーガーチェーン店を運営する日本マクドナルド(2702)の株に投資していると、年2回、バーガー、サイドメニュー、ドリンク類各6食分の株主優待券がもらえます。

 他のハンバーガーチェーン店では「モスバーガー」も人気です。その運営会社・モスフードサービスの株主になれば、「モスバーガー」や「ミスタードーナツ」でも使える優待飲食券がもらえます。

 このように、外食費の節約に役立つ株主優待がもらえるのも、株式投資の魅力です。

ファストフード店運営企業一例

会社名(銘柄コード) 株価 いくらから買える?(100株) 企業情報
日本マクドナルドホールディングス(2702) 5,130円 51万3,000円 世界最大のハンバーガーチェーン。100株保有で年2回、バーガー類、サイドメニュー、ドリンク各6食分がセットになった株主優待券1冊が贈呈される。
モスフードサービス(8153) 3,015円 30万1,500円 「モスバーガー」の運営会社。100株保有で年2回、モスバーガーや提携先のミスタードーナツ(一部店舗を除く)で使える1,000円(年間2,000円)分の優待券がもらえる。
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SNS・インターネット編

 10代、20代の若者にとって欠かせないのが、YouTubeやTwitter、Instagram、TikTokといったSNS。

 こうした企業の多くは海外のIT企業が運営しています。YouTubeは、検索ツールで有名なGoogleの親会社アルファベット(GOOG)、InstagramはFacebookも運営するメタ・プラットフォームズ(FB)という米国企業が運営するSNSメディアです。

 証券会社に外国株口座を開設すれば、そういった米国企業にも投資できます。

 しかし、日本円を米国ドルに両替するなど投資初心者には少しハードルが高いもの。

 日本の株式市場に上場しているSNS関連企業としては「ABEMA(アベマ) TV」を配信しているサイバーエージェント(4751)、日本生まれのSNSアプリ「LINE」やYahoo!JAPANを傘下に持つZホールディングス(4689)などが有名です。

 若者にとって身近な存在で、今後も急成長が見込まれるIT産業。株主になりその舞台裏を知ることは、投資の面だけでなく将来の就職活動などにも役立つでしょう。

国内SNS関連企業一例

会社名(銘柄コード) 株価 いくらから買える?(100株) 企業情報
サイバーエージェント (4751) 1,372円 13万7,200円 「ABEMA TV」などネットテレビ局や「ウマ娘」などゲーム事業を展開。ネット広告事業が収益の柱。
Zホールディングス (4689) 436.4円 4万3,640円 日本で最もアクセス数の多いポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営。SNSアプリ「LINE」の他、「ZOZO」「Pay Pay」など数多くのネット通販やIT決済サービスなどを展開。
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スポーツ・アパレル編

 学生時代の部活動でお世話になったスポーツ会社や、10代20代向けファッションを手がけるアパレル企業も若い人には身近な企業といえます。

 ウェアやシューズでおなじみのミズノ(8022)、アシックス(7936)、野球部ならゼット(8135)、バドミントン、テニス部ならヨネックス(7906)など、高校時代にお世話になったスポーツ関連企業の株も株式市場で購入できます。

 10代20代でファッションに目覚めた、という人にはアパレル会社の株もいいかもしれません。若者に人気のアパレル企業の中では、ユナイテッドアローズ(7606)、「グローバルワーク」などのブランドを展開するアダストリア(2685)などが業績も比較的安定しています。

 また前項で紹介した、Zグループの傘下でアパレルネット通販を手がけるZOZO(3092)も成長企業の一つです。

 日々、その製品を利用していれば、業績の良しあしも判断しやすいはず。スポーツやアパレル関連の企業も若者にとって身近な存在といえるでしょう。

スポーツ・アパレル関連企業一例

会社名(銘柄コード) 株価 いくらから買える?(100株) 企業情報
ミズノ(8022) 2,087円 20万8,700円 野球、水泳、陸上などスポーツ用具で国内No.1。海外でのゴルフクラブ販売が好調で業績も安定。
ユナイテッドアローズ(7606) 1,843円 18万4,300円 若者に人気のセレクトショップ「ユナイテッドアローズ」を運営。コロナ禍から徐々に回復中。
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学習塾編

 中学生・高校生がメインの顧客で、大学生になるとアルバイト先にもなるのが学習塾。「東進ハイスクール」や「四谷大塚」を傘下に持つナガセ(9733)や「明光義塾」の明光ネットワークジャパン(4668)、「TOMAS」のリソー教育(4714)など多くの学習塾運営会社が上場しています。

「どの塾の評判がいいか」「どの塾にたくさんの生徒が集まっているか」。そういった情報は、塾に通っていた人なら「顧客(=生徒)」として実感しており、きっとプロの投資家よりも詳しいはず。

 身近でどんどん生徒数や教室の数を伸ばしている塾を見つけることができれば、有望な投資先になるでしょう。

 学習塾企業の魅力は、設備投資などにそれほど資金が必要でないこともあり、借金が少なく財務力の高い会社が多く、株主になると高額な株主配当がもらえることです。

「(1株あたりの配当金÷株価)×100(%)」で計算した「配当利回り」が4%を超えるような高配当株がたくさんあります。

 日本は空前の低金利が続き、銀行の定期預金にお金を預けても1年で0.002%しか金利が付きません。配当利回り4%はその2,000倍に相当。 

 学習塾関連株など、業績も安定して、財務面でも優良な企業からの定期的な配当収入に期待できるのも株式投資の大きなメリットです。

 今回ご紹介している企業の中では必要資金が少ない銘柄ですので、株式投資の登竜門として買ってみるのもいいかもしれません。

学習塾運営企業一例

会社名(銘柄コード) 株価 いくらから買える?(100株) 企業情報
リソー教育 (4714) 367円 3万6,700円 個別指導受験塾「TOMAS」を運営するほか、幼児教育や英会話にも進出。業績好調で無借金経営、財務力も抜群。配当利回りは4.3%超。
東京個別指導学院 (4745) 581円 5万8,100円 業界最大手のベネッセホールディングス傘下で「東京個別指導学院」を運営。配当利回りは4.4%超。2月末株主に対して魚沼産コシヒカリ1kgなどのカタログギフト優待も贈呈される。
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10代、20代のセンスで投資を意識しよう!

 消費活動も旺盛な若者は、多くの企業にとって大切な「お客さま」です。

 日本でも海外でも若者から熱烈な支持を受けている企業は業績も右肩上がりで株価も長期的に上昇していることが多いもの。

 だからこそ、自分のセンスに忠実に、「欲しいもの」「あこがれるもの」「自分の周りで売れているもの」を提供している上場企業を意識しましょう。

 今回ご紹介した銘柄は、身近な有名企業ではあるものの、投資するのに必要な金額は小さくありませんので、ハードルは高いはずです。

 しかし実際に投資はしなくても、日常的に身近な企業を投資の視点から見ることによって学べる事は多いはず。将来の資産形成に役立つだけでなく、経済やビジネスに対する関心も高くなります。きっと、あなたの人生をより豊かで実り多いものにしてくれるはず。

 まずは、自分にとって身近な企業から株式投資を学んでみるのはいかがでしょう。