相場見通しでは「押し目買い」や「戻り売り」という言葉が頻繁に使われる。押し目買い・戻り売りのポイントは概ね「チャートポイント(過去の高値・安値)」・「トレンドライン」・「値頃感」・「乖離率」などであろう。今回は筆者が長年使っている「押し目買い」や「戻り売り」の手法を紹介したい。このレポートに記載された売買手法は将来の成果を保証するものではない。投資に絶対の法則はないことをお忘れなく。

さて、今回取り上げる手法は、<移動平均線だけしか使わない>ので、相場初心者でもわかりやすいと言えるだろう。準備するのは2本の移動平均だけである。その移動平均線のパラメータにはフィボナッチ・ナンバーである「13日」と「21日」を使う。これを筆者は「13-21日の移動平均バンド」と名付けている。この移動平均バンドが意味するところは、過去13日から21日間の市場参加者の平均コストである。一目均衡表の「雲」に例えるとわかりやすいが、13日と21日の移動平均を組み合わせることで、相場の「支持帯」と「抵抗帯」が出来上がる。

この売買の基本的なトレンド認識は、価格が13-21日移動平均バンドの上にあるときは「買い」、価格が13-21日移動平均バンドの下にあるときは「売り」となる。これはトレンドについていく「順張り」の手法だ。簡単である。

豪ドル/円(日足) 13-21日移動平均バンド(水色の帯)

13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)
緑色の部分=買い期間・黄色の部分=売り期間


(出所:石原順)

それだけだと退屈なので、筆者は「短期保有の押し目買いや戻り売り」を行っているが、筆者の押し目買い・戻り売りのポイントは、「13日と21日の移動平均バンド」から導き出される。売買を仕掛けるポイントは「13-21移動平均バンドの上限・下限」である。押し目買いや戻り売りを仕掛ける前に「13日移動平均の方向」を確認する。13日移動平均が上昇しているときの押し目買い、13日移動平均が下降しているときの戻り売りは比較的リスクが小さい。

下のチャートは、豪ドル/円取引での押し目買いと戻り売りポイントに青の矢印をプロットしているが、これらの商いは基本的に日ばかり(1日)で手仕舞っている。筆者はこの手法を短期売買にしか使っていないことを断っておきたい。当然であるが、すべての注文にストップロス注文を置いている。日ばかり商いとはいえ、大きな損やブラックスワンに巻き込まれたくないからである。

豪ドル/円(日足) 2011年6月~2011年11月

13-21日移動平均バンド(水色の帯)
13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)
日ばかり用の押し目買い・戻り売りポイント(青の矢印)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足) 2010年11月~2011年5月

13-21日移動平均バンド(水色の帯)
13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)
日ばかり用の押し目買い・戻り売りポイント(青の矢印)


(出所:石原順)

以下のチャートは楽天証券「マーケットスピード」のチャートに13-21日移動平均バンドをプロットしたものだ。豪ドル/円、ユーロ/円、ユーロ/ドル、ポンド/円、ニュージーランド/円、ドル/円など、どの通貨でも売買手法は同じである。

豪ドル/円(日足) 13-21日移動平均バンド(水色の帯)

13日移動平均線(ピンク)・21日移動平均線(緑)


(出所:楽天証券マーケットスピード)

ユーロ/円(日足) 13-21日移動平均バンド(水色の帯)

13日移動平均線(ピンク)・21日移動平均線(緑)


(出所:楽天証券マーケットスピード)

ユーロ/ドル(日足) 13-21日移動平均バンド(水色の帯)

13日移動平均線(ピンク)・21日移動平均線(緑)


(出所:楽天証券マーケットスピード)

ポンド/円(日足) 13-21日移動平均バンド(水色の帯)

13日移動平均線(ピンク)・21日移動平均線(緑)


(出所:楽天証券マーケットスピード)

ニュージーランド/円(日足) 13-21日移動平均バンド(水色の帯)

13日移動平均線(ピンク)・21日移動平均線(緑)


(出所:楽天証券マーケットスピード)

ドル/円(日足) 13-21日移動平均バンド(水色の帯)

13日移動平均線(ピンク)・21日移動平均線(緑)


(出所:楽天証券マーケットスピード)

この13-21日移動平均バンドは為替の売買のみならず、いろんな商品に使い回しが効く。特にNYダウやゴールドの売買では、筆者の重視するテクニカル指標となっている。

ゴールド先物(日足) 13-21日移動平均バンド


(出所:石原順)

NYダウ(日足) 13-21日移動平均バンド


(出所:石原順)

今週の豪ドル/円は急落相場となっている。(ブログ『日々の泡』参照)9日のRSIは過去の相場の下限レベルまで下がってきたが、まだ反転の兆しはない。標準偏差ボラティリティが上昇する売りトレンド相場となっており、21日ボリンジャーバンドの-2σに沿いながら下げるバンド・ウォーク相場が継続している。逆張り(相場の転換点狙いの仕掛け)を考えるなら、9日RSIの反転および標準偏差ボラティリティのピークアウトを待つか、浅めのストップ注文を置いて損失覚悟の買いに出るかという局面だろう。

豪ドル/円(日足)

上段:13日標準偏差ボラティリティ(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
中段:21日ボリンジャーバンド2σ(青)
下段:9日RSI(赤)/円(日足)


(出所:石原順)

相場は防御だ。どんな売買手法でも必ず損失は出る。相場で重要なのは売買手法より資産管理だ。損切りを置いて損を小さく抑える資産管理をおこなっていれば、いずれチャンスはやってくるだろう。相場は「予想当てゲーム」として始まるが、投資資金がなくなればゲームは終了となる。したがって、相場を続けて行くにはまず資産管理をしなければならない。しかし、その事を本当に理解できるのは、たいていお金が全てなくなった後である。