先週ゴールデンウイーク中の日本株は、2日(月)と6日(金)しか取引されませんでしたが、日経平均株価は155円上昇し終値2万7,003円と大台を死守して終わりました。連休明け9日(月)から13日(金)は波乱含みの展開になりそうです。

先週:連休中の米国株は空前の乱高下。金利上昇はもろ刃の剣

 先週2日間しか取引のなかった日本株を除く海外の株式市場は大波乱の展開でした。

 4日(水)に米国の金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)が、22年ぶりに通常の倍となる0.5%の利上げを決定しました。

 しかし、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、「0.75%の利上げは積極的に検討していない」と発言したことから、NYダウ工業株30種平均は932ドルも上昇。FOMC通過後の材料出尽くしで上昇モードに入るかに見えました。

 ところが、5日(木)には一転、FRBの急速な金融引き締めによる景気後退懸念が噴出し、ダウ平均は一時1,300ドル超も下落し1,063ドル安で終了。金利上昇に弱い割高なハイテク株が集まるナスダック総合指数も5%近く急落しました。

 6日(金)には米国雇用統計が発表されました。非農業部門新規雇用者数は42.8万人増と予想を上回る好調さを持続しました。

 インフレに拍車をかける平均時給の伸びは前月比0.3%増とやや鈍化したものの、雇用拡大を受けて米国の長期金利の指標となる10年国債の金利は3%台に上昇。米国株は小幅続落して終わりました。

 機関投資家が運用指標にしているS&P500種株価指数は週間では5週連続の下げとなり、約11年ぶりの長期下落局面となっています。

 景気が過熱すればインフレ懸念で金利が上昇して売られます。

 米国企業の2022年1-3月期決算は、アマゾン・ドット・コム(AMZN)がコロナ明けによるネット通販の減速や輸送費の高騰、子会社の評価損で7年ぶりの減益に陥るなど、企業業績の後退や景気減速の兆候も見え始めており、これもまた株価下落の一因に。

 米国株は、景気が良すぎてもダメ、悪化すればもっとダメで、この難しい状況は米国株の足を引っ張り続けそうです。

 先週の日本株では、6月からの外国人の団体観光客受け入れの検討が伝わったことで、ANAホールディングス(9202)が週間で5.4%上昇。インバウンド再開の恩恵を受ける空運業やホテル、旅行関連株は今後、さらなる底打ち上昇に期待が持てそうです。

 一方、6日(金)には半導体検査装置のレーザーテック(6920)が週間で2%安、投資拡大で2022年6月期は営業赤字に転落する予想のメルカリ(4385)が3%安となりました。

 米国株の中でも最も軟調なハイテク株主導のナスダック市場の悪影響もあって、今週も半導体関連や東証グロース市場のIT、ウェブ関連株の下落が続くかもしれません。

今週:円安で日本企業の好決算に期待!日本株は底堅く推移!?

 今週の日本株は、株価の下落要因となる米国長期金利の上昇とそれに伴う1ドル130円台の円安進行をにらんだ展開になるでしょう。

 輸出株が潤い、観光も含め国内産業の国際競争力が高まる円安は、米国株に比べて日本株が底堅く推移している理由にもなっています。

 さらに、今週は日本企業の2022年3月期の本決算がピークを迎えます。円安もあって好調な決算が相次げば、日本株が反転上昇するきっかけになるかもしれません。

 一方、連休明けの5月9日(月)はロシアの対独戦勝記念日です。プーチン大統領がウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」から正式な「戦争」と宣言し、国家総動員体制を敷く可能性もあります。

 それは戦争の長期化や拡大を意味するので、資源株以外は株式市場にとってネガティブです。

 今週最も注目される経済指標は、11日(水)発表の4月米国CPI(消費者物価指数)です。いまやインフレこそ株価の敵ですが、前回の3月CPIは前年同月比8.5%と40年ぶりの伸びでした。今回は前年同月比で8.1%、前月比で0.2%の伸びが予想されています。

 CPIの上昇が長期金利の上昇につながり、株価の下落要因になっています。そのため、今回のCPIが戦争要因で予想を超えた上昇になるか、それとも伸びが鈍化するかが株価の浮沈につながる最大の要因になるでしょう。

 インフレのピークが見えれば株価にとってポジティブ。戦争で資源高が続いているため、エネルギーや食品を除くコア指数が鈍化すれば株価反転上昇のきっかけになるかもしれません。

 12日(木)には企業間の取引価格の動向を示した4月米国PPI(卸売物価指数)も発表されます。3月は前年同月比11.2%と非常に大きな伸びとなりましたが、こちらも10.7%と伸びが鈍化する予想になっています。その結果もCPI同様に株価に大きな影響を与えそうです。

 今週ピークを迎える2022年3月期の決算発表では、10日(火)には資源高で株価が好調な出光興産(5019)住友金属鉱山(5713)といった資源株の決算が発表になります。

 11日(水)は取引時間中の13時台にトヨタ自動車(7203)が決算発表。12日(木)は571社、13日(金)は1,213社と尻上がりに発表する会社が増えます。

 決算発表時期は全体相場の動きよりも、個別企業の決算発表に注目が集まります。特に重要なのは、前期の結果よりも、「2023年3月期の業績がどうなるか?」という来年2023年3月までの企業の業績予想です。

 戦争による資源高、原材料高と円安の恩恵をてんびんにかけて、各企業が今期の業績をどう予想するかが注目です。

 ただでさえ、5月は「セル・イン・メイ(株は5月に売れ)」という米国の投資格言にもあるように、株価が乱高下しやすい時期。

 ロシア・ウクライナ戦争やインフレによる長期金利上昇を受けて、ジェットコースターのような株価の乱高下が続きそうです。

 特に世界的な株高のけん引役になってきた「GAFAM(ガーファム)」と呼ばれる米国巨大IT企業5社の中では、メタ・プラットフォームズ(フェイスブックの親会社:FB)アマゾン・ドット・コム(AMZN)は成長鈍化懸念で株価が高値から4割から5割近くまで下落。もはや「成長株」といえない値動きになっています。

 S&P500の組み入れ比率でもトップ3に君臨するアップル(AAPL)マイクロソフト(MSFT)アルファベット(グーグルの親会社:GOOGL)の株価も同じように下落すると、世界最強だった米国巨大IT企業の株価にも陰りが見えてくるかもしれません。

 一方、インフレが進んでいるにもかかわらず先進国で唯一金融引き締めに動いていないのが日本です。低金利で調達できる日本円を米国ドルなどの外貨に換えて、世界各国の金融資産に投資しようという動きが続いている限り、日本株は底堅く推移するかもしれません。

 怖いのは、ロシアとウクライナの戦争や物価高による景気後退が懸念され、「リスクオフ」(リスクを回避する動き)の円高が進むとき。

 ドル/円の為替レートにも十分注意しながら、波乱含みの5月相場を乗り切りましょう。