連休明けで迎えた先週の国内株市場ですが、週末5月13日(金)の日経平均終値は2万6,427円となりました。週足ベースでは反落し、前週末終値(2万7,003円)からの下げ幅は576円でした。

図1 日経平均(日足)とMACD (2022年5月13日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて、先週の日経平均の値動きを上の図1で振り返ると、週初の9日(月)に一段安で始まり、その後は2万6,000円台の攻防が続きました。12日(木)には2万5,688円まで下落する場面もありましたが、週末の13日(金)に切り返す展開となりました。

 13日(金)の上昇幅は前日比で678円(2.64%)と大きなものとなりましたが、それまでの下落が響き、25日と75日移動平均線のデッド・クロスが出現したほか、MACDも0円ラインを下回る状況が続いており、この日に見せた上昇幅の割にはチャートの形は思ったほど改善していない印象です。

 とはいえ、12日(木)から13日(金)のローソク足の組み合わせを見ると、両日とも始値はほぼ同じ出発点なのですが、12日(木)が陰線で下向きの一方、翌13日(金)が陽線で上向きと別々の方向を向いていて、いわゆる「振り分け線(行き違い線)」と呼ばれる並びになっています。

 相場の転換サインとしてはあまり強いとは言えないのですが、トレンド中に出現した際には注意したい組み合わせとされており、このまま株価の反発基調が続く可能性があります。

 まずは、13日(金)の上昇の勢いが、今週も続くかが試されることになります。仮に上昇基調となった際には、図1にも示されているように、移動平均線(25日・75日)や、節目の2万7,000円台、直近高値を結んだ線などが目安となりそうです。

日本企業、株価上昇の可能性は?

 では、株価が上昇する可能性がどのくらいありそうなのかについてを見ていきます。

 国内企業の決算発表がピークを越えましたが、先週の個別銘柄の動向を見ると、東京エレクトロンなどのような「好材料買い」と、ソフトバンクグループのような「いったんの悪材料出尽くし買い」が併存していることや、先週末のオプション・ミニ先物取引のSQという需給イベントの通過、株価下落局面で発生した信用取引の追証(追加保証金)の対応が一巡するタイミングなどを踏まえると、需給的には株価は上昇しやすいと考えることができそうです。

 そもそも、先週の日本株の下落は、国内要因というよりは、主要3株価指数(NYダウ:ダウ工業株30種平均、NASDAQ、S&P500)が、そろって年初来安値を更新する場面があった米国株市場の流れを受けたことが大きく寄与しています。

図2 米NYダウ(日足)とMACD (2022年5月13日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 その米国株の動きを、上の図2の米NYダウ(日足)で確認すると、先日(5月3~4日)開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)後に大きく上昇する初期反応を見せました。

 次回(6月)の会合で0.75%の利上げに消極的な姿勢を示したことが好感されたわけですが、結局は金融政策の正常化ペースが早いことに変わりがないとして、翌5日の取引では急落へと転じていきました。

 結局、FOMC通過によって相場にアク抜け感が出ず、さらに、その後の6日に発表された米4月雇用統計や9日の中国貿易統計、11日のCPI(消費者物価指数)などの結果を受けてさらに下方向への意識を強めていきました。

米金融政策の引き締めを前提に先行きを探る段階

 株式市場はひとまず米金融政策の引き締め自体をかなり織り込んだと考えて良いものの、現在は引き締めによる影響や賃金インフレへの動向など、景況感悪化への警戒の度合いを探っている状況になっていると思われます。

 とりわけ、今週はゼロコロナ政策で揺れる中国で経済指標が発表されるほか、百度(バイドゥ)やテンセントといったIT大手企業の決算が控えています。

 米国ではウォルマートやターゲットなどの小売り関連企業の決算発表のほか、小売売上高の発表などが予定されており、景気の先行き警戒が高まってしまう展開には注意が必要です。

 これまでのNYダウは米金融政策の引き締めを織り込む過程で3万3,000ドルがリスクのオンとオフの境界線として機能してきましたが、今後はその先にある景況感の悪化警戒を織り込む過程で3万2,000ドルが境界線となるかもしれません。

図3 米NYダウ(週足)とMACD (2022年5月13日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 また、上の図3は前回のレポートでも紹介した、週足NYダウの押し目をフィボナッチ・リトレースメントで見たものになりますが、先週の値動きによって、前回注目していた「23.6%押し」ラインを下抜けてしまっているため、株価が一段安となる動きも想定されます。

 同様に、フィボナッチ・リトレースメントで米NASDAQを見てみると、こちらも一段安への警戒が燻(くすぶ)っています。

図4 米NASDAQ(週足)とMACD (2022年5月13日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 NASDAQについては、上の図4を見ても分かるように、NYダウよりも一段階低い「38.2%押し」ラインをすでに下抜けており、さらに先週は「半値(50%)押し」ラインを下抜ける場面もあり、下方向への意識が強い状況と言えます。

NASDAQは上昇、反発の兆しも

 その一方で、週末13日(金)のNASDAQは前日比で大きく上昇(3.82%上昇)しており、株価反発の兆しも見せています。

図5 米NASDAQ(日足)とRSI (2022年5月13日取引終了時点)​ 

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 ただ、NASDAQがこのまま上昇を継続できるのか、それとも下落してしまうのかについては、「五分五分」というのが正直なところです。

 上の図5はNASDAQ(日足)とRSI(相対力指数)の推移となりますが、足元では株価が安値を更新する一方で、RSIの下値が切り上がる「トレンド転換型」(水色の矢印)が出現していて、13日(金)の株価上昇がトレンド転換のサインとなっているようにも見えますが、同時に株価の上値に注目すると、「トレンド継続型」(緑色の矢印)の逆行現象も出現していて、異なる性質の逆行現象が併存していることになります。

 NASDAQの値動きが読みにくくなっているだけに、先ほども触れたような今週のイベント(米中の経済指標や決算)の動向によって市場のムードが左右されることになります。

日本株も米国株と同調を想定

 日本株も基本的に米国株市場の流れに沿った推移となりそうですが、日経平均の株価水準は3月9日につけた直近安値(2万4,681円)を下回っておらず、米国株と比べて現時点ではまだ底堅いと言えます。

 米国株市場に波乱がなければ買い戻しも入りやすく、「思っていたよりも株価が上昇した」という展開もありそうです。

図6 日経平均(日足)とRSI (2022年5月13日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 実際に、上の図6で日経平均とRSIの逆行現象について見てみると、図5のNASDAQとは違い、足元では「トレンド転換型」(水色の矢印)のみが出現しており、短期的な株価上昇が期待できそうです。

 もっとも、昨年の9月14日から続く「戻り高値」の上値ラインが強く意識されているため、中期的にはこの上値ラインを超えるだけの材料や環境、相場の勢いが必要になってきます。

 そのため、目先の株価が大きく上昇したとしても、その後に大きな下落へと転じるような、「強気の罠」の展開も潜んでいますので、投資タイミングの判断に迷う状況はしばらく続きそうです。