毎週金曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857)、ディスコ(6146)
アドバンテスト
1.2022年3月期4Q業績は28.9%増収、37.2%営業増益
アドバンテストの2022年3月期4Q(2022年1-3月期、以下前4Q)は、売上高1,168.34億円(前年比28.9%増)、営業利益336.92億円(同37.2%増)となりました。
テスタ売上高が順調に伸びており、SoCテスタ(ロジック・テスタ)売上高は前2Q482億円、前3Q631億円、4Q641億円と伸びました。半導体不足により納期は長期化しましたが、採算の良いハイエンドSoCテスタの売上高が伸びました。メモリ・テスタも、前2Q119億円、前3Q171億円、前4Q172億円と堅調でした。
また、システムレベルテスト(複数の半導体の組み合わせテスト)事業が含まれるサービス他売上高は、前2Q213億円、前3Q210億円、前4Q251億円とこれも堅調に推移しました。
この結果、2022年3月期通期は売上高4,169.01億円(同33.3%増)、営業利益1,147.34億円(同62.2%増)となりました。
表1 アドバンテストの業績
表2 アドバンテストのテスタ売上高
グラフ1 アドバンテスト:「サービス他」の受注高、売上高
2.受注の好調続く
全社受注高は、前2Q2,038億円、前3Q1,363億円、前4Q1,990億円となり、前4Qに大きく回復しました。このうち、SoCテスタは前2Q1,477億円、前3Q857億円、前4Q1,196億円と、前4Qは前2Qの水準には達しませんでしたが、急回復しました。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング。パソコン、サーバーなど)向けが好調でした。
メモリ・テスタは前2Q219億円、前3Q168億円、前4Q296億円と前4Qは2018年3月期4Q309億円以来の受注高となりました。DRAM向け受注が好調でした。
地域別受注高を見ると、台湾向けが前2Q885億円、前3Q383億円、前4Q691億円となり、前4Qは台湾が最大の向け先となりました。その次は、中国向けで前2Q461億円、前3Q480億円、前4Q492億円となりました。
この結果、前4Qの全社受注高は会社予想1,487億円を大幅に上回る1,990億円となりました。受注残高は2021年9月末2,858億円、2021年12月末3,125億円、2022年3月末3,947億円となりました。受注残高が急増している背景には、半導体不足によってテスタの増産が思うように進まないという事情があります。半導体等の部材調達の困難さは3カ月前と変わらない模様です。テスタの納期は9~10カ月とさらに長期化しています(3カ月前は6~7カ月)。
なお、会社側は2023年3月期から受注高、受注残高の開示を中止します。理由としては、製品の受注→売上リードタイムの長期化により直近の受注高が過去と参照することができなくなってきたこと、受注高情報は短期的な変動が大きいため、中長期の事業成長トレンドとは合致せず、企業価値評価での有用性が低下したと会社側が考えていることによります。
グラフ2 アドバンテストの全社受注高
グラフ3 アドバンテストの半導体テスタ受注動向
表3 アドバンテストの受注高
3.2023年3月期も好業績が予想される
大手半導体メーカーの大型設備投資に加え、中堅、中小の半導体メーカーの設備投資も活発です。テスタ需要は半導体生産数量に検査の難しさを掛け合わせたものといえますが、大型半導体設備投資によって各種半導体の生産数量が増え、各種の機能を搭載した半導体が増えることによって、半導体テスタ需要は、SoCテスタ、メモリ・テスタともに、今期も好調と予想されます。また、SoCテスタの主たる需要が2022年はスマートフォン(主にアプリケーションプロセッサ)からHPCにシフトする見込みです。
また、新分野であるシステムレベルテスト(SLT)も好調が予想されます。
会社側は、2023年3月期の各テスタ売上高をSoCテスタ2,860億円(前年比26.8%増)、メモリ・テスタ690億円(同9.0%増)、システムレベルテスト630億円(同26.8%増)と予想しています。このうち、SoCテスタとメモリ・テスタは上乗せがあると思われます。
このように、今期2023年3月期も業績好調が予想されます。会社側は2023年3月期業績予想を、売上高5,100億円(同22.3%増)、営業利益1,500億円(同30.7%増)としていますが、楽天証券では売上高5,200億円(同24.7%増)、営業利益1,550億円(同35.1%増)と上乗せがあると予想しています。また、来期2024年3月期も二ケタ増収増益が予想されます。
表4 アドバンテストの事業別売上高
表5 アドバンテストの半導体テスタ市場予想
4.今後6~12カ月間の目標株価を前回の1万3,000円から1万1,000円に引き下げる
今後6~12カ月間の目標株価を前回の1万3,000円から1万1,000円に引き下げます。
2023年3月期楽天証券予想EPS(1株当たり利益)610.8円に、成長性を評価する一方で、アメリカの金利上昇が半導体関連株などハイテクグロース株に与える影響や、受注高の開示を中止することによってテスタ需要の見え易さ(ビジビリティ)が低下するリスクを考慮して、想定PER(株価収益率)15~20倍を当てはめました。
これまでは受注高、受注残高が開示されたため、テスタ需要の強さと変化する方向を理解することができましたが、今後はアドバンテストが開示する数字よりも、大手IT、大手半導体デバイスメーカーの業績、設備投資と株価にアドバンテストの株価がこれまでより強く左右されるようになることも考えられます。このため、引き続き投資妙味は感じるものの、目標株価は保守的に設定しました。
ディスコ
1.2022年3月期4Qは33.1%増収、72.0%営業増益
ディスコの2022年3月期4Q(2022年1-3月期、以下前4Q)は、売上高735.12億円(前年比33.1%増)、営業利益282.63億円(同72.0%増)と大幅増収増益となりました。前3Qの売上高641.86億円(同44.6%増)、営業利益232.92億円(同75.0%増)に比べても好調な業績になりました。
前4Qの好業績の要因は、受注高が前3Q800.47億円から前4Q785.53億円(前年比8.2%増)と若干減少しましたが高水準を維持したこと、出荷額が前3Q684.10億円、前4Q693.88億円(同23.4%増)と堅調に推移したこと、検収が順調に推移したことによります。また、顧客が納期を優先したため価格低下圧力が弱まったこと、会社想定の1ドル=105円の想定に対して実績は1ドル=115.3円だったこと(1円/ドルの円安で年間約12億円の営業増益効果がある。輸出の約半分がドル建て)なども好調要因です。
前4Qの出荷額の内訳を見ると、出荷額の41%がダイサ(前年比29%増、前3Q比5%増)、19%がグラインダ(前年比34%増、前3Q比4%増)、22%が精密加工ツール(ブレード)(前年比25%増、前3Q比1%減)、18%がその他(前年比3%増、前3Q比6%減)となっています。ダイサ、グラインダ、精密加工ツールがともに堅調です(ダイサは回路が描き込まれたシリコンウェハを四角く切り出す装置。グラインダはシリコンウェハの底面を薄く削る装置、精密加工ツール(ブレード)はダイサ、グラインダに取り付ける刃)。
この結果、2022年3月期通期は、売上高2,537.81億円(前年比38.8%増)、営業利益915.13億円(同72.3%増)と好調な業績となりました。
表6 ディスコの業績
グラフ4 ディスコ:売上高、受注高、出荷額(連結ベース)
グラフ5 ディスコ:受注残高
表7 ディスコ:連結受注高、売上高、出荷額
2.2023年3月期も好業績が予想される
2023年3月期1Q(2022年4-6月期、以下今1Q)の会社予想は、売上高624億円(前年比29.2%増)、営業利益222億円(同43.7%増)です。検収が多かった前4Qに比べて今1Qは売上高が減少し、出荷額もやや減少する見込みですが、ダイサ、グラインダについての会社側の景況感は引き続き良好で、顧客の投資意欲は強い状況が続いています。
また、会社側は今1Qの前提レートを1ドル=115円としていますが、楽天証券では前提レートを1ドル=124円としました。出荷額も会社予想683億円(前年比9.0%増)よりも増加する可能性を考慮しました。このため、楽天証券では今1Qを売上高660億円(同36.7%増)、営業利益255億円(同65.1%増)と予想します。
TSMC、サムスン、インテルだけでなく、数多くのファウンドリ(半導体受託生産メーカー)やロジック半導体メーカーが活発な設備投資を行っており、半導体生産高は急速に増加しています。ディスコのダイサ、グラインダ、精密加工ツールは半導体生産数量に比例して需要が増えるため、今期、来期ともに増収増益が予想されます。楽天証券では、ディスコの2023年3月期を売上高3,000億円(同18.2%増)、営業利益1,170億円(同27.9%増)、2024年3月期を売上高3,300億円(同10.0%増)、営業利益1,350億円(同15.4%増)と予想します(2023年3月期の前回予想は、売上高2,900億円、営業利益1,070億円)。
リスクは部材不足であり、3カ月前から好転していない模様です。ダイサ、グラインダの受注→出荷のリードタイムは3カ月前の6カ月以上からさらに伸びています。
3.今後6~12カ月間の目標株価を4万5,000円から4万円に引き下げる
今期も業績好調が予想されますが、株式市場では半導体関連等のハイテクグロース株に対して、金利上昇による株価下落圧力が続いています。
また、資本財株特有の傾向ですが、大型半導体設備投資の継続による半導体製造装置の好景気が長引くにつれて、将来の半導体設備投資ピークアウトを恐れ、以前よりもPERが低下する傾向がすでに現れ始めていると思われます(実際には半導体設備投資がすぐにピークに達し減少に転じるわけではないと思われます。楽天証券では2024年または2025年まで半導体設備投資は伸び続けるか、高水準で推移すると予想しています)。
加えて、2023年3月期から会社側は受注高、受注残高の開示を中止します。このため、ダイサ、グラインダの需要の強さが十分測れなくなる可能性があります。
これらの考え方から、今後6~12カ月間の目標株価を前回予想の4万5,000円から4万円に引き下げます。2023年3月期楽天証券予想EPS 2,341.3円に想定PER15~20倍を当てはめました。
引き続き中長期投資の妙味があると思われますが、低金利時代ほどのパフォーマンスは期待しにくいと思われます。
本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857)、ディスコ(6146)
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