米国の株式市場は世界最大の時価総額を持ち、建国当初から株価は右肩上がりの成長を続けています。その理由の一つとして、常に企業の新陳代謝が起こり、時代ごとに革新的な企業を生み出しています。

 米国株式の代表的な株式指数は、鉄道・公共事業以外の工業株30銘柄で構成される「NYダウ平均株価」、NASDAQ(ナスダック)に上場している全銘柄を対象とした「ナスダック総合株価指数」、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQに上場している大型株500銘柄を対象とした「S&P500種株価指数」があります。

 これらに採用されている企業は長期間にわたり利益を出し続け、株価も上昇し、配当を増配し続けている銘柄も珍しくはありません。

 そこで2022年5月権利落ちの米国株高配当5銘柄について解説します(株価、配当利回りなどのデータは2022年4月11日現在、為替は1ドル=125円で計算)。

 その前に、日本と米国の高配当銘柄への投資で、特に重要な3つの違いについて、お伝えします。

(1)米国株の配当金は、通常米国で10%、日本で20.315%の2段階、約30%の課税がされます。しかし確定申告で還付を受けることにより、日本株と同じように20.315%の税率と同じになります。ただし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で購入した場合は、日本での利益・配当金はもともと非課税のため、還付を受けることはできません。この場合は米国で10%の課税のみとなります。

※米国に上場していても米国籍企業以外の場合、配当金にかかる源泉税率は日本との租税条約によって異なり10%ではありません。

(2)米国株は日本株と異なり、権利落ち日が月末に集中していません。そのため、銘柄ごとに権利落ち日を確認する必要がありますので注意が必要です。

(3)米国株は日本円で買う円貨決済と、米ドルで買う外貨決済を選べます。日本円から外貨に替える為替手数料も積もれば大きな金額になるので、米国株を買い続けるなら売却時にも外貨決済で米ドルにしなければ無駄に手数料を支払うことになります。

米国高配当株1:ユニリーバ(UL)

 イギリスに本社を置く、世界最大級の消費財メーカーです。

 年間売上10億ユーロ以上のブランドを複数有しており、その中には「Knorr(クノール)」、「Dove(ダヴ)」、「Vaseline(ヴァセリン)」などがあります。売上の58%が新興市場で、世界中で事業展開しています。

 時価総額は1,180億ドルで、日本円で約14兆7,500億円となっています(USD=125円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「美容&パーソナルケア事業(Beauty & Personal Care)」で、続いて「食品&軽食事業(Foods & Refreshment)」、「ホームケア事業(Home Care)」となります。

「美容&パーソナルケア事業」では、「Dove」、「LUX(ラックス)」、「Vaseline」などのブランドを展開し、「食品&軽食事業」では、「Knorr」、「Ben & Jerry's(ベン&ジェリーズ)」などのブランドを、「ホームケア事業」では「OMO(オモ)」、「Domesto(ドメスト)」、「Jif(ジフ)」などのブランドで事業展開しています。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値を下回って推移しておりますが、その影響で昨年3%台だった配当利回りが4%台で推移しています。

 コロナ発生以降も堅調に株価が推移していましたが、ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシア事業を継続したことが名指しで批判されるなどしたことで株価が下落していました。

 3月23日に、自社株買いを開始するとの発表がありましたが、これが株価の下支えとなり、今後株価が回復していくことが期待されます。

業績動向

 2022年2月10日開示の四半期決算では1株利益は市場予想通りとなりましたが、売上は市場予想を上回りました。

 重点市場である中国、インド、米国において売上が二桁増となったことで業績が拡大しています。

 今後は、インフレによるコスト増にどのように対応していくかで業績の明暗が分かれそうです。

 次回は2022年5月31日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 2月10日に発表された2022年の見通しは、売上高成長率が4.5%から6.5%の範囲との予想ですが、これはロシアのウクライナ侵攻以前のものであり、今後業績予想の修正が行われる可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:2.00ドル
配当利回り:4.40%
株価:45.36ドル(約5,700円)

 この銘柄、権利落ち日は5月下旬予定(権利実施は6月中旬予定)です。

 配当利回りは4月11日時点で4.40%、株価は45.36ドルでおよそ5,700円から購入できます(1USD=125円計算)。

 2019年からの最高値は64.83ドル、最安値は43.71ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株2:ダウ・インク(DOW)

 世界最大級の素材・化学メーカーです。ダウ・デュポンから、素材化学を専門に扱う「ダウ・インク」として独立しました。分社化後も変わらず、「NYダウ」「S&P100」などの主要指数に採用されています。

 時価総額は455億ドルで、日本円で約5兆7,000億円となっています(USD=125円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「包装&特殊プラスチック事業(Packaging & Specialty Plastics)」で、続いて「工業用中間体&インフラストラクチャー事業(Industrial Intermediates & Infrastructure)」、「パフォーマンス材料&コーティング事業(Performance Materials & Coatings)」となります。

「包装&特殊プラスチック事業」では、ポリオレフィン製品やエチレン、プロピレンなどを製造し、「工業用中間体&インフラストラクチャー事業」では家電製品、エレクトロニクス、洗浄・除菌用界面活性剤、石油・ガスなど多様な市場セグメントに酸化エチレンと酸化プロピレンの誘導体を製造・販売しています。

競合他社

 競合他社として、高度なポリマーソリューションセグメントを通じて運営する、プラスチック、化学薬品および精製会社であるライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)、子会社を通して営業している、工業ガスおよびエンジニアリング会社であるリンデ(LIN)、プラスチックとラテックスバインダーを製造するグローバルな材料ソリューションプロバイダーであるトリンセオ(TSE)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値まで戻っていません。また、配当は分社以降横ばいで推移しています。

 コロナの発生直後は株価が下落したものの、好調な業績を背景に株価は回復し、現在はコロナ発生前の水準を超えて推移しています。

 今後は、原材料価格の上昇にどのように対応していくかで株価の明暗が分かれそうです。

業績動向

 2022年1月27日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を上回りました。

 ダウ・インクの製品に対する旺盛な需要により価格が上昇し、すべての事業セグメント、地域において前年同期から売上が増加しました。

 今後も、電子機器や建設用化学品など、ダウ・インク製品への需要増加が予想されており、さらなる業績拡大が期待されます。

 次回は2022年4月21日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 次回決算において、直近の資源価格上昇による業績の修正などの可能性があり、その点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:2.8ドル
配当利回り:4.51%
株価:61.95ドル(約7,700円)

 この銘柄、権利落ち日は5月下旬予定(権利実施は6月中旬予定)です。

 配当利回りは4月11日時点で4.51%、株価は61.95ドルでおよそ7,700円から購入できます(1USD=125円計算)。2019年3月からの最高値は70.91ドル、最安値は22.00ドルとなっています(終値ベース)。

※ダウ・デュポンから分社化のため、2019年3月20日からの株価で算出。

米国高配当株3:ワンメイン・ホールディングス(OMF)

 銀行やクレジットカード会社、その他金融機関からの信用供与が限られている消費者を対象に、消費者金融業を事業展開しています。

 事業として個人向けローンの組成・サービス、クレジットカード、保険および関連商品の提供を行っています。

 時価総額は59億ドルで、日本円で約7,400億円となっています(USD=125円換算)。

事業の注目ポイント

 事業は「消費者金融&保険事業(Consumer & Insurance)」の単一事業となります。

「消費者金融&保険事業」では個人向け融資、クレジットカード、保険商品を中心にサービス提供をしています。保険については100%子会社である「American Health and Life Insurance Company」、および「Triton Insurance Company」を通してサービス提供を行っています。

競合他社

 競合他社として、主に米国の一戸建て住宅に関連するサービシング業務、オリジネーション業務、トランザクションベースのサービスを提供するミスター・クーパー・グループ(COOP)、子会社のLendingClub Bank、National Associationを通じて運営される銀行持株会社のレンディングクラブ(LC)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値まで回復していませんが、配当は2月に大きく引き上げています。

 コロナ発生以降落ち込んだ業績が、ワンメイン・ホールディングスの取り組みや米国政府の支援プログラムによって回復するとともに、自社株買いや増配などの株主還元を行ったことで、現在はコロナ発生前の水準まで株価が回復しています。

業績動向

 2022年2月2日開示の四半期決算では、1株利益は市場予想を上回ったものの、売上高は市場予想を下回りました。

 経費や貸倒引当金が前年同期に比べて増加したことなどで、売上が市場予想に届きませんでした。

 今後は、ワンメイン・ホールディングスが目標としている非プライム層へのシェアを拡大していくことで、業績拡大が期待されます。

 次回2022年5月4日に開示予定の四半期決算において、市場予想を上回ることができるか注目です。

注意点

 配当を毎年増配し、状況が厳しい中でも引き続き株主還元を行っていく方針ですが、どの程度までそれを行っていくかまでは不透明で、会社の方針転換には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:3.8ドル
配当利回り:8.23%
株価:46.17ドル(約5,800円)

 この銘柄、権利落ち日は5月上旬予定(権利実施は5月中旬予定)です。

 配当利回りは4月11日時点で8.23%、株価は46.17ドルでおよそ5,800円から購入できます(1USD=125円計算)。2019年からの最高値は61.74ドル、最安値は12.57ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株4:リソーシズ・コネクション(RGP)

 財務・会計、事業戦略・事業変革、リスク・コンプライアンス、テクノロジー・デジタルなどの分野におけるプロジェクトコンサルティングや、プロフェッショナル人材派遣サービスを中心とする、グローバルビジネスコンサルティング企業です。

 時価総額は5億8,000万ドルで、日本円で約725億円となっています(USD=125円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は、「リソース・グローバル・プロフェッショナル事業(RGP)」で、続いて「その他事業(Other Segments)」となります。

「リソース・グローバル・プロフェッショナル事業」では、主にRGPブランドの下でプロジェクトコンサルティングやプロフェッショナル人材派遣サービスを中心として事業を展開しており、売上の大半を北米で上げています。

競合他社

 競合他社として、NRCヘルスとして事業を行い、医療提供者、支払人および他の医療機関向けに分析と洞察の提供に従事するナショナル・リサーチ(NRC)、校正および実験機器サービスの提供、並びにプロ級テスト、測定および制御機器の販売を行うトランスキャット(TRNS)、グローバルコンサルティング会社であるCRAインターナショナル(CRAI)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値まで回復していません。また、配当はコロナ発生以降、横ばいで推移しています。

 コロナの影響で一時的に株価は下落したものの、その後徐々に回復し、現在はコロナ発生前の水準まで回復しています。

 今までとの働き方や、ビジネスモデルを変革させる企業が増加しており、それに伴いリソーシズ・コネクションへの需要が増えていることも、株価回復の背景の一つのようです。

業績動向

 2022年1月5日開示の四半期決算では売上高・1株利益共に市場予想を上回りました。

 取引規模の拡大、既存顧客への継続的なアプローチによって、企業向けの売上は前年同期比31%増、前四半期比9%増と好業績となりました。

 多くの企業がかつてのような硬直的な労働環境に戻るとは考えづらく、より柔軟な労働環境を求める方向にシフトしていることが、引き続きリソーシズ・コネクションにとって追い風であると同社も考えております。

注意点

 ロシアのウクライナ侵攻によってマーケットが変動しており、欧州での売上低下などが起きた際に株価下落につながる可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:0.56ドル
配当利回り:3.19%
株価:17.51ドル(約2,200円)

 この銘柄、権利落ち日は5月中旬の予定(権利実施は6月中旬)です。

 配当利回りは4月11日時点で3.19%、株価は17.51ドルでおよそ2,200円から購入できます(1USD=125円計算)。2019年からの最高値は19.72ドル、最安値は9.02ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株5:ニューウェル・ブランズ(NWL)

 世界大手の消費財メーカーです。

 傘下に「Aprica(アップリカ)」、「Coleman(コールマン)」、「GRACO(グレコ)」、「PARKER(パーカー)」、「WATERMAN(ウォーターマン)」、「Food Saver(フードセーバー)」など複数の有力ブランドを有しています。

 時価総額は92億ドルで、日本円で約1兆1,500億円となっています(USD=125円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「ホームソリューション事業(HOME SOLUTIONS)」で、続いて「研修・人材開発事業(LEARNING & DEVELOPMENT)」、「家電事業(HOME APPLIANCES)」、「業務用ソリューション事業(COMMERCIAL SOLUTIONS)」、「アウトドア&レクリエーション事業(OUTDOOR & RECREATION)」となります。

「ホームソリューション事業」では、Calphalon(カルファロン)、Chesapeake Bay Candle(チェサピークベイキャンドル)、Food Saver、Rubbermaid(ラバーメイド)、Sistema(システマ)などのブランドを展開し、「研修・人材開発事業」では、Aprica、Baby Jogger(ベビージョガー)、Paper Mate(ペーパーメイト)、Parker、Watermanなどのブランドを展開しています。

競合他社

 競合他社として、家電製品のメーカーと販売業者であるワールプール(WHR)、消費者直接取引(DTC)プラットフォームを提供するソロ・ブランズ(DTC)、多種なブランドを通じて顧客に多様なソリューションを提供するグローバルな消費者向け製品会社であるヘレン・オブ・トロイ(HELE)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値を下回って推移していますが、配当は横ばいを維持しています。

 間接費の節約や、燃料使用の節約などに取り組んだものの、それでも大幅なインフレに伴い営業利益が下がったことが株価下落の要因の一つとなりました。

 売上の大半が北米であり、ロシアのウクライナ侵攻による直接の影響は少ないため、今後業績が改善することで株価の上昇が期待されます。

業績動向

 2022年2月11日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を上回りました。

「ホームソリューション事業」では不採算のYankee Candle(ヤンキーキャンドル)の店舗を閉鎖した一方で、食品事業が堅調に推移し、「研修・人材開発事業」でもライティングビジネスユニットが堅調に推移しました。

 次回2022年5月6日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 インフレ率が今後も上昇していったときに、業績への悪影響を及ぼす可能性が高く、注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:0.92ドル
配当利回り:4.14%
株価:22.18ドル(約2,800円)

 この銘柄、権利落ち日は5月下旬の予定(権利実施は6月中旬予定)です。

 配当利回りは4月11日時点で4.14%、株価は22.18ドルでおよそ2,800円から購入できます(1USD=125円計算)。2019年からの最高値は29.34ドル、最安値は10.55ドルとなっています(終値ベース)。

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