6月7日、世界最大の通貨ファンド(運用資産85億ドル)として知られるFXコンセプツのジョン・テイラー氏は「アメリカの減速と金利格差を材料にしたドル売りは数日中に終わる。近くドル買いポジションをとる意向だ」とブルームバーグのインタビューに答えた。FXコンセプツは現在、ユーロ/ドルとユーロ/円でユーロ売りを行っているという。

日本の新聞や雑誌などでは相変わらずドル弱気の論調が多いが、海外の運用者の間では、「QE2終了のドル高」「不景気のドル高」「ドルキャリー取引の巻き戻し」などドル高観測も多い。ドルインデックスをみれば明確にわかるが、目先の相場はジョン・テイラー氏の予測通りのドル高展開となっている。

ドルインデックス(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

今年は3月のドル反転に失敗したので、年央まではドル安となる可能性が高いことをこれまでレポート等で述べてきた。現時点での筆者の相場予測は「ドル弱気パターン」を想定しているが、重要なことはドル強気・弱気のいずれのパターンであっても、6~7月の時間帯はドル高になりやすいというバイアスが存在することだ。

「ドル弱気相場」の基本パターン


(出所:石原順)

ドル安相場の仕手通貨(逃避通貨)としてドル安を先導してきたスイスフランも、6月に入って買いトレンドがピークアウトしている。ユーロは7月のギリシャ国債の償還まではユーロ売り相場を仕掛けようという機運が投機筋の間で盛り上がっており、ユーロ圏の利上げと連動する原油相場が軟調なことから、目先は軟調な相場が続くと思われる。

ドル/スイス(日足)スイス高もピークアウト?

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

原油先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

3月のトリシェ・ショック以降のユーロ/ドル相場は、金利差(利上げ観測)相場とソブリンリスクの混在する相場となっている。不安心理を煽るタイプの相場というのは、投げと踏みの応酬となりやすい。ユーロ/ドルの日足ベースの相場ではボラティリティ(変動率)が上がっているだけで、美しいトレンドは発生していない。ユーロ売り相場に参戦するなら、このところ標準偏差ボラティリティやADXの波形が安定している1時間足のほうがよいだろう。

ユーロ/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/ドル(1時間足)

上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21時間ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ドル反騰機運相場の中で、79円50銭割れを危惧されたドル/円も、81円レベルまでリバウンドを見せている。ドル/円は82円50銭~79円を抜けない限りはレンジ相場である。ドル/円は神経質で緊張感のあるユーロ/ドルの取引と比べると凪相場で、変動幅の20日平均である20日ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)もオプション・ボラティリティも低下傾向にあり、現在は押し目買いがワークしやすい環境にある。筆者は20日ATRが低下中はドル/円の押し目買いを続けるつもりだ。

ドル/円(日足)ボラティリティの低下とレンジ相場

上段:オプション・ボラティリティ(赤)
下段:20日ATR(青)


(出所:石原順)

先週のレポートで取り上げた豪ドル/円は、20日ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)が依然として低下傾向にあり、押し目買いが有効な環境が整っている。(ATRが上昇すると同時に豪ドル/円相場が下がりだしたときは、急落に注意しなければならない)直近の相場は、21日移動平均線から21日ボリンジャーバンド-2σのレンジでの横這いとなっている。ATRの低下傾向が続くうちは、押し目買い戦略を継続したい。

豪ドル/円(日足)

上段:21日ボリンジャーバンド(1σ・2σ・3σ)
下段:20日ATR


(出所:石原順)