先週の日本株は前半下落、後半上昇の展開でした。今週4月18日(月)~22日(金)は米国企業の2022年1-3月期決算が本格化。ウクライナ情勢や物価高・金利上昇から、個別企業の業績に関心が移ることで新たな動きが生まれそうです。

先週:記録的インフレ!円安進行で日本株は小幅高

 先週前半、日本株の下落要因になったのは、米国の長期金利の指標となる10年国債の金利が2.8%台まで上昇したこと。

 中国・上海でロックダウンが続くなど、新型コロナウイルスの感染拡大による中国経済の減速懸念も悪材料でした。

 米国の記録的な物価上昇も相変わらずです。

 12日(火)発表の3月の米国CPI(消費者物価指数)は前年同月比8.5%増と、40年ぶりの物価高がさらに加速しました。

 ただ、価格変動の激しいエネルギーや食品を除いたコアCPIは前月比0.3%の上昇にとどまり、2月より低下。「物価上昇がピークアウトするのではないか」という希望的観測が生まれ始めているのも事実です。

 翌13日(水)の3月PPI(卸売物価指数)は、予想を上回る前年同月比11.2%まで上昇しました。

 先週スタートした米国銀行株の決算発表は予想を上回る企業が多かったものの、前年同期比では減収減益が相次ぎました。

 14日(木)には長期金利が再び2.8%台まで上昇したことで、アップル(AAPL)が3%安になるなど、巨大IT企業の株が売られました。

 週間では、ハイテク株が多く金利上昇に弱いナスダック総合指数が2.6%安に沈むなど、主要3指数がともに下落。

 対する日経平均株価は週間で0.4%プラスの2万7,093円で終わりました。

 米国株の下げ要因となる長期金利の上昇は、ドル/円の金利差が拡大することで、日本株にとって追い風になる円安に直結します。

 15日(金)に1ドル126円台まで20年ぶりの円安に進んだことが、かろうじて先週の日経平均株価がプラスで終わった理由といえます。

 業種別の騰落率を見ると、ロシアからのエネルギー輸入の代替として原子力発電の再稼働が検討され、火力発電用の石炭価格も高騰していることから、電気・ガス業や鉱業セクターの株が大きく上昇。東京電力ホールディングス(9501)が週間で26.4%高、石炭商社の三井松島ホールディングス(1518)が13.3%高となりました。

 一方、下落率が大きかったのは、円安が追い風になるはずの精密機器や電気機器でした。

今週:悪い円安進行と米国企業決算の良しあしに注目!

 今週発表の経済指標では、18日(月)午前に発表された中国の2022年1-3月期のGDP(国内総生産)や22日(金)発表の日本の3月全国消費者物価指数が注目されそうです。

 ロシア・ウクライナ戦争による資源・穀物価格の高騰や円安のせいで、日本でもじわじわ物価が上昇しています。15日(金)には鈴木俊一財務相が、価格転嫁や賃上げが行われない中で進む円安は「悪い円安といえる」と異例の言及をしました。

 円安になって輸入品の価格が高騰すると、消費が落ち込みます。すると、原材料高を価格に転嫁できない内需企業の業績が悪化。従業員の賃金が低下して、さらに消費不振に…という負のスパイラルに陥りかねません。

 もし日本銀行が悪い円安を食い止めるために、利上げなどに走ると、日本株にとって極めてネガティブです。

 米国では、物価上昇に合わせて賃金も上昇。旺盛な個人消費がさらに景気を良くして物価・賃金を押し上げる好サイクルになっています。

 しかし、企業の生産性が低く、賃金も上昇しづらい日本ではそうした好循環が望めません。

 米国では、先週始まった2022年1-3月期の決算発表が本格化します。

 米国企業の好調な決算結果はここ数年、株価上昇の“起爆剤”になってきました。

 19日(火)はネット関連企業の先陣を切るネットフリックス (NFLX)に注目です。20日(水)は、世界最大の日用品メーカーで原油高の悪影響が気になるプロクター・アンド・ギャンブル(PG)や資源・電力高が逆風になるアルミメーカーのアルコア(AA)

 また、創業者イーロン・マスク氏がツイッター(TWTR)の買収を表明した電気自動車のテスラ(TSLA)も四半期決算を発表します。

 22日(金)発表のクレジットカード会社、アメリカン・エキスプレス(AXP)など、ロシアからの撤退を表明している企業も多く、戦争が米国企業の業績にどんな影響を与えるかに市場の関心が集まりそうです。

 来週は26日(火)のマイクロソフト(MSFT)、27日(水)のメタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック:FB)など巨大IT企業の決算発表も控えます。

 これからの2週間は、米国企業の決算発表から目が離せない時期になるでしょう。

 一方、ロシアがウクライナ東部で凄惨(せいさん)な猛攻撃をかけることも危惧されており、戦争激化による株価急落にも注意が必要です。