楽天FXの「楽天 FX '11 ゴールデンウィーク特集」に、「5月相場はファンドの中間決算に絡むポジションの解消、つまり“手仕舞い”相場となる傾向があります」と書いてある。このファンドの中間決算に向けての手仕舞いが5月に入っていきなり出てきた。

異変はまず商品(コモディティ)市場で起こった。5月2日からファンドの売りが散見されていたようだが、CMEが銀先物の証拠金引き上げを発表すると、商品バブルの象徴であるシルバー(銀)先物が急落した。5月4日には米WSJが「著名投資家のジョージ・ソロス氏のヘッジファンドや、ジョン・バーバンク氏の投資会社を含む主要な市場参加者が銀を売却している」と報じたことから売りに拍車がかかった。

シルバー先物(日足)の急落

上段:14 日ADX(赤)・26 日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21 日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

原油先物(日足)

上段:14 日ADX(赤)・26 日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21 日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

昨年5月6日に短時間でNYダウが1,000ドル安したトラウマから、市場に不安心理が拡がり、「Sell in May and go away(5月に売り抜けろ)」というファンドの手仕舞い合戦となってしまった。

記憶に新しい2010年5月6日のNYダウの急落と豪ドル/円相場


(出所:石原順)

NYダウ(月足)と5月のNYダウの動き(ローソク足=赤) 5月は急落が多い


(出所:石原順)

過剰流動性相場では「株高・商品高・ドル安」という3つのバブルのうち、ひとつでもおかしくなると「全部売り」になる可能性が高い。そういった構造からは現在のドル安も、ドルキャリートレードの巻き戻しによってドル高転換がありうることは注意すべきだ。5月中間決算となっているファンドが多い中で、株式・商品の利食いや手仕舞いやドルキャリートレードの手仕舞いもまだ出てくるはずである。もう一段の「株安・商品安・ドル高」に振れる可能性も小さくはない。

ファンドの中間決算に伴うリスク資産の巻き戻しで、通貨市場は円高・ドル高に振れている。ファンドの手仕舞いという決算事情によって、ドルインデックス・ドル/スイス・ユーロ/ドルの日足ベースのドル安トレンドが消滅している。

ドルインデックス先物(日足)

上段:14 日ADX(赤)・26 日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21 日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/ドル(日足)

上段:14 日ADX(赤)・26 日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21 日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ドル/スイス(日足)

上段:14 日ADX(赤)・26 日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21 日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

問題は円相場である。ドル/円は2番底パターンで80円を割ってしまったが、既に直近上げ幅の61.8%押し水準を割り込んでいる。筆者のアナログモデル(パターン分析)では、現在のドル/円の推移は1995年・2007年・2008年のある時期の相場と似ているが、ドル/円は直近上げ幅の7割程度の押しを入れて底を付けるパターンも多い。

1995年の協調介入後のドル/円相場


(出所:石原順)

ドル/円(日足)2008年11月の相場パターン


(出所:石原順)

ドル/円(日足)2007年9月の相場パターン


(出所:石原順)

ドル/円(日足)の支持線と投機筋のターゲット?


(出所:石原順)

今回の円相場がどのようなパターンとなるか定かではないが、ドル強気・ドル弱気のどちらのパターンとなろうと、6月~8月期はドルの戻り高値となりやすい歴史的な循環がある。特に豪ドル/円などのクロス円相場は、「ボーナス月の円安」という明確な傾向を持っているので、5月中の円高局面は逆張りの好機とみている。

過去10年間のドル/円・豪ドル/円星取表

ドル/円 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
○円安 6 5 4 5 4 7 8 2 6 6 4 5
●円高 4 5 6 5 6 3 2 8 4 4 6 5
豪ドル/円 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
○円安 7 6 3 6 6 8 5 2 6 7 7 8
●円高 3 4 7 4 4 2 5 8 4 3 3 2

豪ドル/円(左)とポンド/円(右)の支持線


(出所:石原順)

カナダ/円(左)とユーロ/円(右)の支持線


(出所:石原順)

「楽天 FX '11 ゴールデンウィーク特集」の「ゴールデンウィーク相場の特徴は、東京市場の流動性低下によって、「相場が一方通行に動くか、乱高下する」傾向があるということです。この期間の売買は「前日の相場の高値・安値」のブレイクに注目しながら、順張りの短期取引を行うのが有効かと思われます」という戦術は、ボラティリティ上昇相場の中で今年もまずまず有効であった。それは「まぐれ」に過ぎないが、相場は確率に賭けるゲームなのである。

豪ドル/円(日足)前日の高値・安値ブレイクパターン

前日の安値を切ったら売り、高値を抜いたら買い


(出所:石原順)

豪ドル/円(1時間足)

上段:14 日ADX(赤)・26 日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21 日ボリンジャーバンド1σ(紫)・13時間移動平均0.8%乖離(金)


(出所:石原順)