バリュー投資・グロース投資、どっちが魅力的?

 株式投資の代表的スタイルは、2つあります。1つはグロース(成長株)投資、もう1つはバリュー(割安株)投資です。読者の皆様は、どちらのスタイルに近い方ですか?

 人によって、けっこうはっきり好みが分かれるようです。グロースが好きな人は「バリューなんかつまらなくて買えない」と思っていて、バリューが好きな人は「株価指標で割高に見えるグロースは心配で買えない」と思うようです。

 株式相場では、グロースが優位になるときとバリューが優位になるときが繰り返します。それがグロース指数・バリュー指数の動きからわかります。以下をご覧ください。

東証グロース指数・バリュー指数の月次推移比較:2017年1月~2022年4月(13日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成、2017年1月末の値を100として指数化

 2017~2020年まで4年連続でグロース優位の相場が続きました。グロース好きにはとてもおもしろい相場でした。バリュー好きにはきつい相場でした。2020年になると多くの人が「グロース株買わないと話にならない。バリュー株なんか買ってもダメ」と言うようになってきました。

 ところが、2021~2022年にかけて、した。ここでバリュー株の良さがやっと見直されました。

なぜグロース優位とバリュー優位は入れ替わるのか?

 オールド産業が低迷し、ニューエコノミーが成長する時、グロース相場になります。逆に、オールド産業が復活し、ニューエコノミーが停滞する時は、バリュー相場になります。

 2017~2020年は、グロース優位でした。それは、2017~2020年にかけて、世界的に低インフレ・低金利が広がったからです。金利も物価も下がって当たり前という感覚が広がりました。

 そうした環境下では、私が「3大バリュー株」と呼んでいる金融株・資源関連株・製造業株は、まったく人気がありませんでした。一方、ネット関連やバイオ産業が成長したので、グロース株は大きく上昇しました。2020年に起こったコロナ禍で、リモートワークやリモート会議が急に普及したことで、その傾向が加速しました。

 ところが2021年から、経済環境はがらりと変わりました。資源価格が急騰、世界中でインフレ不安が広がりました。米国の3月のインフレ率(CPI総合指数の前年比上昇率)は8.5%と40年ぶりの高いインフレとなりました。デフレ・低金利が当たり前だった世界は、強烈なインフレと金利上昇ショックに見舞われました。

 そうした中で、バリュー株が上昇しました。金利上昇を受けて金融株が、資源価格の上昇を受けて資源関連株が、物価上昇を受けて製造業の業績が、急速に上向きました。

バリュー優位がまだ続くか、グロース優位に戻るか?

 私がファンドマネージャーの時、考え続けていたのが、「これから先、バリュー優位かグロース優位か」です。

 当てられるならば、ポートフォリオをバリュー中心にしたり、グロース中心にしたりすることで、ベンチマークである東証株価指数を大きく上回るパフォーマンスを得られます。ただし、外れるとベンチマークに負けます。

 先行きを当てるのは、いつでも至難の技なので、実際の運用ではバリューとグロースに分散投資しつつ、バリュー色を強めたり、グロース色を強めたり調整していました。

 これから先、バリュー優位が続くのか、グロース優位に戻るのか当てるのが難しいのは、今も同じです。インフレもバリュー相場も行き過ぎているから、そろそろ大きく下がったグロース株が活躍する相場に戻ると考える人もいます。まだまだインフレがテーマになる相場が続くので、バリュー相場が続くという人もいます。

 1つだけ確かなことは、バリュー優位とグロース優位は循環するということです。いずれグロース優位に戻る日は来るでしょう。ただし、それがすぐなのか、1年後か2年後か、まったくわかりません。世界的にインフレと金利上昇がテーマになる経済が、いつまで続くかによります。

投資初心者はバリュー株から、あるいはインデックスファンドから

 株式投資の初心者は、まず割安株から投資した方が良いと思っています。配当利回りの高い大型株が、最初の候補となります。以下のような銘柄から投資したら良いと思います。

三菱UFJ FG(8306)
株価746.7円、予想配当利回り3.7%、1株当たり予想配当金28円
NTT(9432)
株価3,740円、予想配当利回り3.1%、1株当たり予想配当金115円
三菱商事(8058)
株価4,292円、予想配当利回り3.3%、1株当たり予想配当金142円
INPEX(1605)
株価1,517円、予想配当利回り3.6%、1株当たり予想配当金54円

 あるいは初心者は無理に個別銘柄に投資しないでも、日経平均インデックスファンドや米国S&P500のインデックスファンドなどに投資するのでも良いと思います。

 割安株は、言葉をかえれば「不人気株」です。人気がないから株価があまり上がらず、結果として、配当利回りが高く、PER(株価収益率)が低く、株価指標でみて割安になります。それでも、積極的な買いは入りにくいのです。

 一方、成長株は「人気株」です。成長ストーリーにひかれて多くの投資家が熱狂的に買うので、株価指標で見ると割高な銘柄が多くなります。

小型成長株は値動きが荒い 

 株式投資の醍醐味は、なんと言っても成長株と言う人もいます。株式投資に慣れてきたら、割安株をコアにしつつ、小型成長株投資にもトライしてみて良いと思います。ただし、小型成長株は当たれば大きく上昇しますが、失敗すると大きく下がることに注意が必要です。

 東証マザーズと呼ばれていた市場(4月4日の東証再編で、東証グロース市場に再編された)は、値動きの荒い小型成長株の宝庫でした。当たると、おもしろいように上がるのですが、暴落すると目も当てられない状況になります。

 2021年以降、東証マザーズ指数は暴落しました。今、大きく下がった東証グロース上場株(旧東証マザーズ株)を見直す動きも出ています。私も、旧東証マザーズ株をそろそろ見直していいタイミングに入っていると思っています。

 ただし、思惑が外れた時には暴落することもあるので、株式投資に慣れてから、機動的な損切りもできるようになってから挑戦した方が良いと思います。

東証マザーズ指数の月次推移:2016年1月~2022年4月(13日)

出所:QUICKより作成
注:4月4日で東証マザーズ市場は消滅したが、東証は旧東証マザーズの構成銘柄によるマザーズ指数の計測を続けている。上記グラフは東証マザーズ指数の4月13日までの動きを表している

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