中国国内のガラス増産申請が「長蛇の列」、需給見通しに不透明感

 中国では3月下旬以降、江蘇省をはじめとする11省が太陽光発電用ガラスの設備増強に関するヒアリングを実施したが、この場で明らかになった増産計画は日産計18万8,500トンと、BOCIの予想を大幅に上回った。これらがすべて承認されれば、世界の同ガラス生産能力は2025年末までに、ソーラーパネル換算で約1,200GW規模に膨らむ見込み。BOCIは当局の最終判断を待って、ガラスの需給モデルを見直すとし、現時点では大手2社、信義光能(00968)、福莱特ガラス(06865)の株価の先行きに対して中立見通しを据え置いている。

 BOCIによれば、15カ月タームでは、太陽光ガラスの供給見通しは従来の予想通り。ただ、中長期的には予想を大きく上回る可能性が出てきた。不動産以外の新たな成長エンジンを模索する民間フロートガラスメーカーの相次ぐ参入計画がその理由。増産計画に示されている日産量(18万8,500トン)のうち約47%を、太陽光ガラス生産の経験を持たない民間フロートガラスメーカーが占めるという。

 一方、BOCIは地理的に見た場合、計画中の新規設備の配置は合理的と受け止めている。現在のところ、中国の太陽光ガラス生産量の約55%が安徽省にあり、世界のソーラーモジュールの約半数を生産している江蘇省はわずか5%。江蘇省のヒアリングでは、現地のモジュールメーカーが物流コストの低減につながるとして、省内でのガラス生産能力の増強を歓迎していたという。また、水力発電と珪砂(ガラス原料)が豊富な南西部も計画に含まれている。

 技術面では、計画中のガラス溶融炉の平均日産能力は1,149トンと既存設備の648トンを77%上回るサイズであり、高コスト効率が期待できる日産1,200トンが主流。ただ、同じ大型炉でも計画の内容には違いがあり、例えば信義光能は雲南省の新設備を4ラインの配置とする意向。これにより同業他社の5-8ラインに対するコスト優位を目指す。

 申請数が多数となったため、エネルギークオータ(割当)や環境への影響に関するヒアリングや地元当局の認可審査が、より重要性を増す見通しとなっている。ただ現段階では、どの程度のプロジェクトが実際に建設に漕ぎつけるのかは未知数。仮に半数が2025年末までに稼働した場合、ガラスの総生産能力はモジュール換算で700GWを超える。BOCIがこれまで考えていた以上に、供給過剰リスクが高まることになる。

 BOCIは信義光能と福莱特ガラスの粗利益率がすでに底を打ったとしながらも、他社の相次ぐ新規生産計画により、トンネルの出口が見えにくくなったと指摘。現状では、2022年予想PER(株価収益率)で22-23倍に当たる両社株にはさほど魅力がないとした。むしろ、短期的な採算見通しなどが良好で、かつ低バリュエーションの大全新能源と新特能源(01799)を選好し、両社株価の先行きに対して強気見通しを付与している。