先週の日本株は6日(水)~7日(木)に急落。再び始まった波乱の展開は今週4月11日(月)~15日(金)も続くのでしょうか?

先週:米国の量的引き締め(QT)で株価が急落。金利が相場の焦点に!

 先週の日経平均株価は6日(水)、7日(木)の2日間で900円近く反落し、週間でも680円安の2万6,985円で終わりました。

 プライム、スタンダード、グロースの新市場はさしたる混乱もなく無難にスタート。1,839社が上場するプライムの売買代金は8日(金)、活況の目安となる3兆円を初めて超えました。

 先週はキーウ(キエフ)近郊ブチャでのロシア軍の民間人虐殺や、日本国内の新型コロナウイルス感染者の再拡大も報じられました。

 しかし、世界的な株価反落の引き金となったのは、米国の金融引き締め策でした。

 5日(火)夜には、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)の高官が0.5%の利上げだけでなく、FRBの資産を圧縮する量的金融引き締め(「QT」という略称で呼ばれています)を早急に始めるべきと発言し、米国株が急落。

 翌6日(水)の日経平均株価も400円超の大幅下落となりました。これは3月11日(金)以来の下げ幅です。

 7日(木)未明には、0.25%の利上げを決めた3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が公表されました。

 5月4日(水)終了の次回FOMCで、FRBの資産約9兆ドル(約1,080兆円・1ドル120円で計算)を、毎月950億ドル(約11.5兆円)ずつ減らすQT開始が決定される可能性が高くなりました。

 QTは米国に出回るお金の絶対量を減らす政策です。

 単にお金の流れを鈍らせる利上げ以上に、株式市場への打撃は大きくなります。

 QTの早期開始を嫌気して、米国の長期金利の指標となる10年国債の金利は2.7%台を突破。これは株価急落が続いた2019年1月以来の水準です。

 ハイテク株が多く、金利上昇に弱いナスダック総合指数は週間で3.9%安となりました。世界の機関投資家が運用指標にしているS&P500種株価指数も1.3%近く下落しました。

 米国の金利上昇で、ドル/円の金利差が広がり、再び1ドル124円台まで円安が進行。

 国内の物価高が顕著になってきた日本経済にとっても、急速な円安は悩ましい問題です。もし為替介入があった場合、株価には悪影響になるでしょう。

 先週の業種別騰落率ランキングでは、海運や輸送用機器が下落率上位に。

 米国や日本などが過去最大の備蓄放出を決定して原油価格が下落したこともあり、日本郵船(9101)が週間で8.6%安、円安が追い風になるはずのトヨタ自動車(7203)が5%安となりました。

 ある意味、これまで上昇してきた株に対する利益確定売りが、先週の株価急落の真犯人に過ぎないのかもしれません。

今週:米国消費者物価指数や米金融株の決算発表に注目!

 今週注目される経済指標は、12日(火)夜発表の3月米国消費者物価指数です。40年ぶりの物価上昇がさらに加速し、前年同月比8.4%、前月比でも1.2%の上昇が予想されています。

 13日(水)には3月の米国卸売物価指数や英国の消費者物価指数も発表。14日(木)には、3月の米国小売売上高が発表されます。

 物価が予想以上に上昇したり、米国の個人消費の動向を示す小売売上高が予想外に落ち込んだりすると、株価急落につながる可能性もあります。

 15日(金)の欧米市場が復活祭の祝日となるため、先週に引き続き、週後半には利益確定の売りが広がる可能性もあります。

 また、中国最大の都市・上海で新型コロナウイルスの感染拡大が続き、ロックダウンが依然として終わらないことも不安材料です。

 13日(水)からは米国企業の2022年1-3月期の決算発表が本格化します。

 13日(水)のJPモルガン・チェース(JPM)、14日(木)のゴールドマン・サックス・グループ(GS)モルガン・スタンレー(MS)など、まずは米国金融機関大手の決算が集中。

 米国のロシアに対する金融封鎖や国債価格の下落(金利は上昇)で予想外の損失をこうむった金融機関が出てくる可能性もあるので、注意が必要です。

 逆に好決算が連発されれば、市場全体の雰囲気が変わり、株価が再び上昇モードに回帰するかもしれません。

 先週7日(木)には、国連人権理事会におけるロシアの理事国資格停止を国連総会が決議。

 賛成は日本も含めた93カ国、反対は24カ国、棄権はインド、ブラジル、タイ、メキシコなど58カ国でした。

 つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の投資対象としても人気の高い全世界株式や新興国株式に連動するインデックスファンドには、1%に満たないもののロシアの株式も組み入れられています。

 長期的に見ると、ウクライナ危機は、全世界がともに協調して、未来に向かって成長していくという株式投資の大前提に水を差す可能性もある点が気がかりです。